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墓地ロック 〜異世界の鎮魂歌がクソだったので、底辺墓守の俺は爆音ライブで魂を救う〜  作者: Kururi


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第7話 籠の中の王子(マリオネット)は、自由を知らない

昼の王都。


色とりどりの紙吹雪が舞う中、王族のパレードが行われていた。

白馬の馬車に乗り、民衆へ向かって優雅に手を振る青年。


第一王子・レオン。


太陽の光を反射して輝く、サラサラの金髪。

まだ二十代前半の、どこか少年のような可愛らしさが残る整った顔立ち。


「レオン殿下ー!!」

「我らの希望!!」

「なんて美しいんだ!」


歓声が街を揺らす。

レオンは完璧な笑顔で応える。


誰もが羨む存在。

未来の国王。

神に愛された、絵本から抜け出したような王子様。


だが。


その瞳だけは。

まるで死んでいた。



パレード終了後。

王城。


レオンは休む間もなく執務室へ連行された。

机の上には山積みの書類。

その横には教育係の老人。


「本日の笑顔ですが、少々柔らかすぎました」

「は?」


思わず本音が漏れそうになる。

しかしレオンは飲み込んだ。


「申し訳ありません」

「民衆との距離感を誤ってはいけません。親しみやすさと高貴さの両立が必要です」

「……はい」

「あと手の振り方も改善の余地があります」

「……はい」

「姿勢も若干崩れておりました」

「……はい」

「それから──」


まだ続くのか。


レオンは窓の外へ目を向けた。

城下町が見える。

子どもたちが走り回っている。

泥だらけになりながら笑っている。


その光景を見ていると。

遠い記憶が蘇った。



「レオン! こっちこっち!」


幼いセシリアが手を振る。

まだ聖女になる前。

ただの元気な少女だった頃。


「待てー!」


近衛騎士が木の剣を持って追いかけてくる。


レオンは逃げる。

転ぶ。

泥だらけになる。


三人で笑う。

ただそれだけで楽しかった。



「殿下?」


教育係の声で現実へ引き戻される。

レオンは瞬きをした。


「聞いておられますか?」

「……はい」

「明日は晩餐会です」

「はい」

「諸侯への対応を再確認いたします」


レオンは静かに頷いた。

死んだ魚のような目で。



夜。

自室。


巨大な鏡の前。

レオンは一人で立っていた。


王族用の正装。

完璧に撫でつけられた金髪。

まだ少年っぽさの残る顔に張り付けた、完璧な笑顔。


……のはずだった。


「違う」


レオンは呟く。

笑顔を作り直す。


「違う」


もう一度。


「違う」


さらにもう一度。


鏡の中の自分が気持ち悪い。

笑っているのに。

何も楽しくない。

何も感じない。


レオンはふと鏡へ手を伸ばした。

「……僕は」

かすれた声。

「いつから笑えなくなったんだっけ」

返事はない。

鏡の中には。

知らない誰かが立っているだけだった。

鏡の中の自分へ問う。

「国のため?」

「みんなのため?」

「……本当に?」

レオンは目を伏せた。

「楽しくもないのに」

そして。


「俺が笑いたかったのって、なんだったっけ」



コンコン。


扉が叩かれる。


「殿下」


侍従の声だった。


「なんだ」

「最近、王都で奇妙な噂が広まっております」

「噂?」

「深夜の墓地で、正体不明の音楽家が演奏しているとか」


レオンは興味なさそうに聞き流した。


「そうか」

「ですが、その演奏を聞いた者が次々と──」


侍従が困惑した顔で続ける。


「人生が変わった、と」

「……」

「職人街では仕事を辞めた者までいるそうです」

「変な話だな」

「ええ」


侍従は苦笑した。


「悪魔の音楽だ、と言う者もおります」


扉が閉まる。

部屋に静寂が戻る。


レオンは再び鏡を見る。


完璧な笑顔。

完璧な王子。

完璧な人形。


そして。

誰もいなくなった部屋で。

ぽつりと呟いた。


「……悪魔、か」


その夜。

王城の裏門から、一人の少年が姿を消した。


黒いフードを深く被り。

誰にも見つからないように。

まるで籠から逃げ出す鳥のように。



深夜。

王家専用の特別霊廟。


人気のない墓地。

だが、そこにはすでに先客がいた。


最前列。

ど真ん中。

完璧なポジション。


真っ黒なローブを羽織った少女が、体育座りで場所取りをしている。


「……」


レオンは目を疑った。

少女は振り返る。

そして不機嫌そうに舌打ちした。


「チッ……新規ね」

「……は?」

「そこ、私の後ろ」

「いや待て」


少女はフードを少し上げる。

月明かりに照らされた顔。


レオンの思考が停止した。


「……せ、聖女様?」


聖女セシリアは冷たい目で言い放った。


「ライブの邪魔しないでくれる?」


レオンは生まれて初めて、本気で混乱した。


(なにやってるんだ、この人……?)


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