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墓地ロック 〜異世界の鎮魂歌がクソだったので、底辺墓守の俺は爆音ライブで魂を救う〜  作者: Kururi


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第5話 聖女は眠れない

セシリアは眠れなかった。

目を閉じる。


すると。


『Cry!! ゴースト!!』


――ギュイイイイイイイイインッ!!


脳内で、バキバキに歪んだギターの爆音が鳴る。


「ひっ!?」


飛び起きる。

額には汗。心臓は激しく鼓動していた。


おかしい。

実におかしい。


教会のトップである『聖女』の自分が。

神への祈りではなく。

深夜の墓場で鳴り響く、悪魔の歌を思い出している。


ありえない。


セシリアは慌てて聖典を開いた。


神よ。迷える魂を導きたまえ。

何度も読む。

心を鎮めようとする。


だが。


終焉おわりの鐘を鳴らせェ!!』

ズダダダダダダダッ!!(※ツーバスの音)


「きゃあっ!!」


まただ。

また聞こえる。


あのデスボイス。

鼓膜を突き破るようなギターソロ。


棺桶の上で、狂ったように弦をかき鳴らす男。


兵士たちの歓声。

天へ昇る魂。


そして。

泥まみれなのに、極細の鋼の糸(弦)を押さえ続けて硬く変色していた、あの指先のタコ。


なぜ忘れられない。

なぜこんなにも鮮明に、チョーキングの音色まで脳内再生リピートされるのか。


セシリアは青ざめた。

そして思い出す。


昔。

神官長から聞いた話。


『強力な悪魔は、人の魂へ直接干渉する』


言葉で。

音で。

歌で。


「まさか……」


セシリアの顔色が変わる。


「呪い……?」


考えれば考えるほど辻褄が合う。


四六時中あの男の爆音を思い出す。

胸が落ち着かない。

眠れない。

祈りに集中できない。


完全に異常事態である。


「そ、そうよ!」


思わずベッドから立ち上がる。


「私は呪われているのだわ!」


ようやく答えを見つけた。

そうだ。これは悪魔の仕業だ。


あの男は危険だ。

極めて危険だ。


だから、確認しなければならない。


教会のために。

世界のために。


決して。

決して。

「昨日のライブの続き(新曲)が気になるから」ではない。


その時。

姿見(鏡)が目に入った。


純白の法衣。

神の象徴。絶対の清らかさ。


そして脳裏に浮かぶ。

黒いレザー。

無数のスタッズ(鋲)。

銀のアクセサリー。


「……」


セシリアはしばらく鏡を見つめた。


「もし……」


「もし私が、あんな服を着たら……」


数秒後。


セシリアは無意識に、右手を大きく振りかぶり――


ジャーン! と。


鏡の前で、見えないギターを思い切りかき鳴らすポーズ(エアギター)をとっていた。


「……ッ!!」


我に返る。

顔から火が出るほど熱くなる。


「何を考えているの私はぁぁぁ!!」


ベッドの枕へ顔面ダイブ。

足をバタバタさせる。


完全に重症(沼)だった。


そしてその夜。


聖女セシリアは、こっそり純白の法衣の上に真っ黒なローブをすっぽりと被り、再び墓場へ向かった。


悪魔の呪いを調査(※最前列でライブ参戦)するために。


もちろん。

本人は本気で、そう信じていた。



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