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墓地ロック 〜異世界の鎮魂歌がクソだったので、底辺墓守の俺は爆音ライブで魂を救う〜  作者: Kururi


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第4話:敗北英雄(ルーザー・ヒーロー)

 無縁仏エリア。

 夜の墓地に、

 冷たい風が吹き荒れていた。

「ガァァァァァァッ!!」

 地鳴りのような咆哮。

 片腕を失った兵士の霊が、

 墓場中へ怨念を撒き散らしている。

 全身に突き刺さった矢。

 砕けた鎧。

 ドス黒い憎悪。

 常連の霊たちは怯え、

 墓石の陰へ逃げ込んでいた。

 その様子を見ながら、

 ヒデは面倒くさそうにギターケースを開く。

「……今日はヘヴィなのが必要か」

 黒いレザージャケット。

 逆立つ赤髪。

 昼間の底辺墓守とは別人だった。

 棺桶の上へアンプを置く。

 ギターを繋ぐ。

 ズンッ――

 軽くコードを鳴らしただけで、

 空気が震えた。

 墓石の陰では、

 セシリアが青ざめていた。

(うそ……強すぎる……)

 あの兵士の霊は危険だ。

 私服のままでは浄化できない。

 応援を――

 だが。

「おい」

 ヒデが兵士の霊を睨む。

「拍手されなきゃ、お前の人生は無駄だったのか?」

 怨霊が止まる。

勲章メダル貰えなきゃ、お前の戦いは意味なかったのか?」

「ガァァァァ……!!」

「違ぇだろ!!」

 ヒデの怒声が墓場を揺らす。

「誰も見てなくても!!」

「最後まで逃げずに戦ったなら!!」

「その生き様だけは絶対に嘘じゃねぇ!!」

 兵士の霊が震えた。

 ヒデはギターを構え、

 口元を歪める。

「だったら今夜は――」

敗北者ルーザーのための葬列パレードだァ!!」

 ――ギュイイイイイイイイン!!

 重低音が爆発した。

『Welcome to the Deadly Parade……!!』

 地を這うようなヘヴィメタル。

 墓場の空気が揺れる。

薔薇ローズを抱いて死んだか!?』

名誉プライドに喉を裂かれたか!?』

 霊兵士たちが顔を上げる。

『王はシャンデリアの下!!』

兵士おまえは腐った雨の中!!』

 ズダダダダダダッ!!

 爆音のドラム。

 墓石がビキビキと割れていく。

 ヒデはマイクを握り潰さんばかりに叫ぶ。

『Cry!! ゴースト!!』

『Die!! ステージ!!』

『shout!! この瞬間ときをォォォ!!』

『その涙ァァァ!!』

『誰が否定できるゥゥゥ!!』

 ギュオオオオン!!

 ギターソロが夜空を切り裂いた。

 青い炎が墓地から噴き上がる。

 兵士の霊たちが、

 ボロボロと涙を流し始めた。

「オオオオオオオ!!」

 錆びた鎧を叩きながら、

 拳を突き上げる。

 ヒデはふっと音を止めた。

 静寂。

 そして。

 マイクへ静かに囁く。

『なあ、英雄ヒーロー

『本当は怖かったんだろ』

『泣きたかったんだろ』

 兵士の霊が、

 ハッと顔を上げる。

 ヒデは笑った。

『だったら今夜くらい――』

『醜く泣いて逝けェェェェ!!』

 ギュオオオオオオオン――!!

『Go home!!』

 ズンッ!!

『Go home!!』

 ギュイイイン!!

『Go homeェェェェェ!!』

 最後の爆音が、

 墓場全体を揺らした。

 その瞬間。

 泥にまみれた兵士の姿が、

 まばゆい光へ変わる。

 錆びた鎧は輝き。

 折れた剣は天を向き。

 兵士は涙を流しながら、

 力強く拳を突き上げた。

「オオオオオオオッ!!」

 歓声。

 ヘドバン。

 爆音。

 そして。

 敗北英雄ルーザー・ヒーローは、

 ようやく故郷へ帰るように、

 静かに天へ昇っていった。

「……サンキュー」

 ヒデはギターを下ろし、

 短く敬礼した。

「最高のおとこだったぜ」

 墓石の陰。

 セシリアは震えていた。

(昨日は初恋……)

(今日は戦士の誇り……!?)

(どうして……)

(魂が一番欲しかった言葉を知っているの……?)

 死者ごとに。

 未練ごとに。

 曲を変えている。

 一人一人の人生へ、

 専用の爆音を叩き込んでいる。

 そんな救済、

 教会には存在しない。

(なんて……)

 セシリアの鼓動が速くなる。

(なんて優しくて、恐ろしい悪魔なの……!!)

 彼女の視線は、

 完全にステージ上の魔王へ奪われていた。

 (どうして……)

 (あなたは救えるの……?)

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