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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第88話 別々の答え 〜力で叫ぶStreetのSoul 守って祈るForest Road  同じ未来を見てるのに 響かないAnswer 交わらないCode〜

 戦場に、静けさが戻っていた。


 倒れたエターナルの兵は、その鎧だけを残し光の粒子となって消えた。

森の獣達も、傷を負いながら森の際へと退いていく。


 セラは、その光景をぼんやりと眺めていた。


「セラ」


 声に振り返ると、ウィーニーが立っていた。


「ウィーニー……ありがとう。助けてくれて」


「当たり前だろ。大丈夫か?」


 セラの表情が、わずかに曇った。


「……うん」


バキッ! ボコッ! ガコンッ!


「てめえが、ボスか? あ、てめえか、コラ!」


 ジェシーはまだ、倒れた帝国兵、エターナルの兵を殴り続けていた。


 シャクールが、ジェシーを止めた。


「あの、ジェシー。終わったみたいだぜ」


「あん?」


「喧嘩。ゴキブリどもは、もういねえ。そいつも……もう死んでる」


 ジェシーは、振り上げていた拳を止めた。


「そうか? もう終わりか」


 その光景を、セラはじっと見ていた。


「ねえ、ウィーニー」


「ん?」


「どうして、悪魔なんかと一緒にいるの?」


 その問いに、ウィーニーは、自分のジャージを指差した。


「どうしてって……オレは、ストリートデビルズに入ったんだ。何者でもない孤児の、便所掃除だったオレを救ってくれたデビルズに」


「……」


「ラップには力がある。確かに、デビルズは危ないとこもあるけど……でも、ちゃんと信念がある。デビルズは、悪魔より悪い奴は許さないって信念が」


 ウィーニーは、拳を握った。


「デビルズはただの悪魔じゃない。一緒にいるから分かるんだ。デビルズより悪い奴らがいなくなれば、この世界はきっと良くなる。オレには、分かるんだ」


 セラは、歩き去って行くジェシーの背中を見つめて言った。


「でも、暴力はまた暴力を呼ぶ……」


「違う! デビルズの力は暴力じゃねえ! 力がなきゃ誰もオレ達の声なんて聞いてくれない! 路地裏にいたオレの声も、便所掃除していたオレの声も、誰一人……この世界はオレの声なんか聞いてくれなかった!」


 ウィーニーの拳は震えていた。


「セラ。力がなきゃ、この世界は変えられないんだ。オレは強くなって、ラップで世界を変える。オレがデビルズに、ラップに出会って変われたように……」


 セラは、静かに首を振った。


「違う。彼らと共に力を使い続ける限り、負の連鎖は止まらない。争いは無くならない」


 セラの瞳が、真っ直ぐにウィーニーを見た。


「本当の平和は……調和は、自然の中にしかない」


「セラ……」


「あなた達が、振るう暴力で、また新しい憎しみが生まれる。拳だけじゃない。ラップ……その言葉は、人の心まで抉る。体だけじゃないの! 悪魔は心も傷付けるの!」


「そんなことねえ! セラは、まだデビルズを知らない! アイツらは、悪いやつじゃねえ! アイツらのラップは……アイツらの言葉は、弱っちいオレに勇気をくれるんだ!」


「ウィーニー、もういいよ……。私と一緒に森へ来て。もう、戦わなくていい場所へ」


 ウィーニーは、ゆっくりと首を振った。


「それは出来ない」


「どうして……」


「主張しなきゃ、声をあげなきゃ……何も変わらねえよ。今日みたいに、いずれまた攻められるだけだ」


「……だったらまた守ればいい。何度攻められても、何度でも、守って、守って、守り抜く。自ら暴力を振るう必要なんて、どこにもない!」


「だから暴力じゃねえって言ってるだろ!! 力と言葉で世界を変えなきゃいけねえんだ! そうしなきゃ、誰も救われねえんだ!」


「ラップと暴力なんかで、一体何が変えられるのよ!」


「黙って森に籠って、どうしたら世界が良くなるっていうんだ!」


 セラの拳が、震えた。


「どうしてわからないの!」


「どうしてわからねえんだ!」


 二つの声が、同時に戦場に響いた。


 風が、二人の間を吹き抜けた。


 セラは、先に目を逸らした。


「……さようなら、ウィーニー」


 ウィーニーは、何か言おうとして、言えなかった。


 セラは、森へ向かって歩き出した。


 ウィーニーの拳が、ゆっくりと握られた。


「……じゃあな、セラ」


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