第77話 名前を置きに来た 〜爆ぜた聖地に沈むLow light 勝敗さえも揺らすOne fight 立ったまま眠る路地裏のFlame 伝説の島に刻むそのName〜
路地裏と伝説が──ぶつかった。
光が弾け飛ぶ。
衝撃──いや、爆発。
その場にいた全員が、宙を舞った。
中心の二人を除いて。
ゆっくりと光が闇に溶けていく。
音が消えていた。
二つの拳が、触れ合ったまま、止まっている。
巨体が、フラリと揺れた。
ドスンッ!
ジャックは、尻もちをついた。
ウィーニーは、拳を突き出したまま、微動だにしない。
シャクールの震える口から、言葉が漏れた。
「か……勝った……のか?」
ロベルトは、膝をついたままウィーニーを見上げて言った。
「……いや」
尻もちをついたジャックは、座り込んだまま笑った。
「ハハッ。全く……とんでもねえガキじゃねえか」
シャクールは、慌ててジャックを振り返った。
「ふ、不死身かよ……」
ロベルトは、ウィーニーに近づくと、その顔を覗き込んだ。
「ガキィ。立ったまま気絶してやがるぜぇ」
ジャックはゆっくりと立ち上がると、自分の拳を見つめて呟いた。
「このガキ、神の力だけじゃねえ。魔族の力も感じた」
ジャックは、ロベルトの方を見て言った。
「このガキ、何者だ?」
ロベルトは、手を広げて肩をすくめた。
「わからねえんだぁ。オレ達にも」
静まり返ったロックンロールアイランド。
再び、ジャックの豪快な笑いが響いた。
「ブワハハハハッ!! 面白え奴らだ、ストリートデビルズ! 覚えておいてやるぜ」
シャクールは、その場にへたり込んだ。
「これで……終わりってこと、か?」
ロベルトは、ジャックを見上げて言った。
「どうなんだ?」
ジャックはニタリと笑って背を向けた。
「タイマンだ。そのガキが動けねえなら、終わりだ」
「……つまり、オレ達の負──」
言いかけたシャクールを遮るようにジャックが言った。
「今回は、引き分けにしておいてやる」
「へ?」
ジャックは、ヘルズロッカー達に向かって言った。
「帰るぞ、野郎共!」
一斉にバイクのエンジンがかかる。
ジャックはバイクに跨がると、フリークス達を振り返った。
「久々に楽しい喧嘩だったぜ! ありがとよ!」
ロベルトは静かに返した。
「ああ」
「ところでよぉ、お前ら、この島に何しに来たんだ?」
ロベルトは、頭をかきながら答えた。
「上から、喧嘩してこいって言われてよぉ。それ以上は、オレも知らねえ」
ジャックは、フリークス達をゆっくり見回して言った。
「ストリートデビルズ。お前らのボスは誰だ?」
「オレ達のボスは、デヴィン。──キングデヴィンだ」
ジャックの目が、一瞬揺れた。
「デヴィン……だとぉ?」
「ああ。知ってるのか?」
ジャックは、目を閉じ鼻で笑った。
「知らねえなぁ、そんなやつ」
「そうか」
ジャックは、立ち尽くしたままのウィーニーを見て言った。
「そんなことより、そのガキ、目ぇ覚ましたら言っとけ。てめえの言葉は本物だったってなぁ!」
「ジャック……」
「ロックンロール、ベイビー!! じゃあなぁ!!」
そう叫ぶと、ヘルズロッカー達は爆音を轟かせながら、暗闇へ消えていった。
ロベルトは、大きく息を吐いた。
「ふう。帰るぞぉ」
シャクールは、三匹のトラッシュを指差した。
「おい、お前ら! ウィーニーを担いで運べ! お前らの──ボスだろ」
三匹のトラッシュが顔を見合わせた。
「うぃす」
「うす」
「……おす」
フリークス達は、伝説が眠るロックンロールアイランドを後にした。
ヘルカ・オルカの背に揺られながら、シャクールは、ロベルトに話しかけた。
「なあ、ロベルト。オレ達は、マジでこの島に何しに来たんだ? 本当にオスカーは、喧嘩してこいって?」
ロベルトは、前を見据えたまま答えた。
「知らねえなぁ。インテリの考えることはよぉ」
シャクールは、小さくなっていく島を振り返って言った。
「伝説のアウトロー、ジャックか……。たしかに、とんでもねえ伝説だったなぁ」
そして、横で眠るウィーニーに視線を落として言った。
「お前もな……ウィーニー」
一方、アジトに戻ったジャックは、ジョッキを傾けながら言った。
「キング・デヴィン……。ふん、お前がキングとはなぁ」
ヘルズロッカーの一人が、空になったジャックのジョッキにビールを注いだ。
「ジャック。あのガキ共、ここに何しに来たんだ?」
ジャックは天井を見上げ少し間を開けて言った。
「──名前だ」
「名前?」
「ああ。あいつらは、この島に名前を置きに来た。ストリートデビルズ──そのボスの名をなぁ」




