第76話 吐いた言葉は本物か 〜腰抜け伝説 Name と Fame 言葉で煽って 始まるGame 金と赤が 拳に宿る 路地裏と伝説が 聖地でぶつかる〜
ヘルズロッカー達の足が止まった。
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Yo オレ達はストリートデビルズ オレはウィーニーだ
お前らがディスったラップ 聞いてからでも遅くねえだろ そうだろロック?
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ジャックは、無言でウィーニーを見下ろした。
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Yo 待てよ 伝説のアウトロー
言ったな小悪魔のガキどもって Yo
いいぜ 認めてやるぜ その主張
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不思議なものを見るように、ジャックはウィーニーを見つめていた。
「人間のガキが、悪魔の中に……?」
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ところでそのガキを 数で囲って ブロウ
確かに伝説的な やり方だな アウトロー
永遠に語り継がれる 腰抜けの伝説
てめえで汚すその Name と Fame
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ジャックの、眉がピクリと動いた。
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太古の悪魔だって? ヘルズロッカー?
空っぽの咆哮耳が痛え ただの迷惑スピーカー
そのダセエやり方確かに悪魔臭え
枠の外気取っても変えられねえ その構造
結局壊せねえ悪魔の衝動 トロ臭え
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ジャックの体が震え出した。
額の血管が浮き上がる。
「ガキが……」
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Yo そうだ オレは悪魔ですらねえ
てめえらが見下す人間のガキ
そのガキにディスられる レジェンド
それがロックンロールの限界か?
聞くに耐えねえ てめえの演説
語るに値しねえ その安い伝説
結局残るのは 腰抜けのStory
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背後のヘルズロッカー達のオーラが赤く燃えた。
「許さねえぞ、クソガキが」
それをジャックが手を伸ばして制した。
「面白え。で、どうしてえんだ、ガキ」
ウィーニーは、ニヤリと笑った。
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見せろよ 元祖アウトロー
群れじゃねえだろ 魂のShow
一対一で 白黒つけろ
伝説なら 拳で証明してみせろ
ジャック あんたが本物なら
部下にやらせんな 自分で来いよ
トラッシュに死ねって まだ言えねえ
でも背中は見せる それがオレのRole
タイマン張れよ 伝説のアウトロー
群れで潰すか 一人で吠えるか
どっちがロックか どっちが本物か
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「──この聖地で 今すぐ決めろ!」
ウィーニーのラップが終わった瞬間、ジャックが地面を蹴った。
覚悟は出来てた。
そのつもりだった。
ただ──伝説が、速すぎた。
「──え? ちょ、待っ!!」
ジャックの拳は、すでに目の前にあった。
「ラップが何かは分かった。吐いた言葉が本物かどうか、見てやるわぁ!」
巨大な拳が、ウィーニーを捉えた。
ウィーニーの体が、歪む。
ドゴオオォッ!!
音が、遅れて響いた。
「……っ!!」
地面に叩きつけられたウィーニー。
声が出ない。
痛みが後からやってきた。
「カハァァッ!!」
たった一撃。
感じたことがない痛みと衝撃。
無理だと思った。
後悔が過った。
意識よ飛んでくれ──そう思った。
ウィーニーは、この日、伝説の意味を知った。
「ぐわあああぁぁぁ……」
転げ回る。
いや、感覚だけ。
動けなかった。
シャクールが口をあんぐり開けて飛んでいったウィーニーを振り返った。
「こ……殺される……ウィーニー」
その時。
ウィーニーの中で何かが脈打った。
ドクンッ!
その瞬間、ウィーニーの目の奥に金色の光が灯った。
シャクールは、拳を握った。
「あの目……よっしゃ! 間に合ったか?」
ジャックは目を細めた。
「ほう。死んだと思ったが」
ゆっくりと立ち上がったウィーニーは、ジャックに向き直った。
金の目が、ジャックを見据えた。
「まだ……だ」
「フン。ガキ。その目ぇ、オレの嫌いな色だ」
ウィーニーは、拳を握った。
「まだ……これからだ!!」
ウィーニーは、地面を蹴った。
金色に光る拳を振りかぶる。
だが、ジャックの姿が消えた。
「え」
ウィーニーは、慌てて振り返った。
「いない!?」
「ガキ」
頭上から声。
「ようやく、本気で殴れるわぁ」
「っ! ……避けれねえ……」
天から落ちる巨大な鉄槌は、無情にもウィーニーの頭を捉えた。
「ウィーニーッ!!」
ドグシャアアアァァァ!!
ウィーニーは再び、叩きつけられた。
陥没する地面。
衝撃波が周囲に広がる。
ロベルトとシャクールは、思わず顔を覆った。
倒れたウィーニーから、金色の光がゆっくりと消えた。
「う……うう……っ」
もう、指先すら動かなかった。
ロベルトは、空を見上げて大きく息を吐いた。
「オスカー。流石にキツいぞ、今回はぁ」
シャクールは、膝をついた。
「嘘だろ……。金色の力が……通用しねえ……ウィーニー……」
ジャックは、葉巻に火をつけて、倒れたウィーニーを見下ろした。
「悪いなぁ、ガキ。その光みたら、力が入りすぎちまったぜぇ」
視界が霞む。
ようやく意識が、飛んでくれる。
そう思った時、ウィーニーの視界に三匹のトラッシュが映った。
「あいつら……」
ウィーニーの目から一筋の涙が溢れた。
「ダサいよなぁ……。オレは、マイクにも、ロベルトにも……なれなかった」
三匹のトラッシュは、無言でウィーニーを見下ろしていた。
そして──ウィーニーの意識が、消えた。
ジャックは、ゆっくりとウィーニーに向かって歩を進めた。
「そこの一本角。今回の喧嘩、そのガキのタマで落とし前にしておいてやる。いいなぁ?」
ロベルトは、何も言わずに拳を握った。
「ストリートデビルズだったか? お前らは、喧嘩売る相手を間違えた。二度目はねえぞ」
ロベルトは、小さく呟いた。
「仕方ねえ。死ぬまでやるか」
シャクールはロベルトを見て頷いた。
「わかった。ここまでだな。やろう」
意識のないウィーニーを見下ろしたジャックは、拳を高々と振り上げた。
「くせえ血は、根絶させなきゃなぁ」
ロベルトは、わずかに首を傾げた。
「にしても、この喋り方、どっかで……」
その時。
ドン。
「あ?」
ドン。
胸を叩く音。
ドン。ドン。
シャクールが振り返った。
「何やってんだ、お前ら?」
三匹のトラッシュが、胸を叩いた。
ドン。
「うぃす……ウィーニーが……」
「うす……ビートを刻めって……」
「……それが指示だから……」
ドン。
「バカか、てめえら。ウィーニーはもう倒れてるだろ! そこにいたらてめえらなんか、衝撃波で死ぬぞ!」
しかし、三匹のトラッシュは、一歩前に出た。
「これが指示だから」
「ビートを刻めって」
「そう言われたんだ……」
「なっ……」
その時、ウィーニーの体が再び光り出した。
ドン!
トラッシュが胸を打つ度──
ドン!
──強くなる光。
ドン!
そして──
シャクールは目を見開いた。
「あの色……」
ウィーニーの金色のオーラに、微かに混じる赤いオーラ。
ドンッ!
気を失っていたウィーニーが、手をついた。
「……そうだ……ビートを、刻め」
もう一方の手もつく。
「それがオレの、指示だ……」
ウィーニーは、膝をついた。
ジャックがため息を吐いた。
「ふう。本当にしぶといガキだな。──死ね」
「それが……オレ達……」
再び、振り下ろされた鉄槌。
「ストリートデビルズだああああぁぁぁぁ!!」
しかし──
その瞬間、金と赤の光が弾けた。
バキイイイイイィィィィンッ!!
「ぐおっ!!」
その衝撃は、ジャックを弾き飛ばした。
弾き飛ばされた足が、地面を抉る。
二本の轍を刻みながら、ジャックの体が後退する。
そして、止まった。
「一体、なんだぁ、こいつぁ!」
二色のオーラに包まれたウィーニーは、身を屈めて構えた。
そのオーラが、拳に集まっていく。
「オレはウィーニー。路地裏育ちのストリートデビルズ──」
ジャックは、カッと目を見開いて構えた。
「ブワハハハハッ! 面白いガキだ! ぶちかましてこいや!!」
路地裏のウィーニー。
伝説のアウトロージャック。
二人が同時に地面を蹴った。
二つの閃光が、ロックンロールアイランドを割った。
路地裏と、伝説が──ぶつかった。




