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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第76話 吐いた言葉は本物か 〜腰抜け伝説 Name と Fame 言葉で煽って 始まるGame 金と赤が 拳に宿る 路地裏と伝説が 聖地でぶつかる〜

 ヘルズロッカー達の足が止まった。


────────────────────

Yo オレ達はストリートデビルズ オレはウィーニーだ

お前らがディスったラップ 聞いてからでも遅くねえだろ そうだろロック?

────────────────────


 ジャックは、無言でウィーニーを見下ろした。


────────────────────

Yo 待てよ 伝説のアウトロー

言ったな小悪魔のガキどもって Yo

いいぜ 認めてやるぜ その主張

────────────────────


 不思議なものを見るように、ジャックはウィーニーを見つめていた。


「人間のガキが、悪魔の中に……?」


────────────────────

ところでそのガキを 数で囲って ブロウ

確かに伝説的な やり方だな アウトロー

永遠に語り継がれる 腰抜けの伝説

てめえで汚すその Name と Fame

────────────────────


 ジャックの、眉がピクリと動いた。


────────────────────

太古の悪魔だって? ヘルズロッカー?

空っぽの咆哮耳が痛え ただの迷惑スピーカー

そのダセエやり方確かに悪魔臭え

枠の外気取っても変えられねえ その構造

結局壊せねえ悪魔の衝動 トロ臭え

────────────────────


 ジャックの体が震え出した。

 額の血管が浮き上がる。


「ガキが……」


────────────────────

Yo そうだ オレは悪魔ですらねえ

てめえらが見下す人間のガキ

そのガキにディスられる レジェンド

それがロックンロールの限界か?

聞くに耐えねえ てめえの演説

語るに値しねえ その安い伝説

結局残るのは 腰抜けのStory

────────────────────


 背後のヘルズロッカー達のオーラが赤く燃えた。


「許さねえぞ、クソガキが」


 それをジャックが手を伸ばして制した。


「面白え。で、どうしてえんだ、ガキ」


 ウィーニーは、ニヤリと笑った。


────────────────────

見せろよ 元祖アウトロー

群れじゃねえだろ 魂のShow

一対一で 白黒つけろ

伝説なら 拳で証明してみせろ


ジャック あんたが本物なら

部下にやらせんな 自分で来いよ

トラッシュに死ねって まだ言えねえ

でも背中は見せる それがオレのRole


タイマン張れよ 伝説のアウトロー

群れで潰すか 一人で吠えるか

どっちがロックか どっちが本物か

────────────────────


「──この聖地で 今すぐ決めろ!」


 ウィーニーのラップが終わった瞬間、ジャックが地面を蹴った。


 覚悟は出来てた。

 そのつもりだった。


 ただ──伝説が、速すぎた。


「──え? ちょ、待っ!!」


 ジャックの拳は、すでに目の前にあった。


「ラップが何かは分かった。吐いた言葉が本物かどうか、見てやるわぁ!」


 巨大な拳が、ウィーニーを捉えた。


 ウィーニーの体が、歪む。


ドゴオオォッ!!


 音が、遅れて響いた。


「……っ!!」


 地面に叩きつけられたウィーニー。


 声が出ない。

 痛みが後からやってきた。


「カハァァッ!!」


 たった一撃。


 感じたことがない痛みと衝撃。


 無理だと思った。

 後悔が過った。

 意識よ飛んでくれ──そう思った。


 ウィーニーは、この日、伝説の意味を知った。


「ぐわあああぁぁぁ……」


 転げ回る。

 いや、感覚だけ。


 動けなかった。


 シャクールが口をあんぐり開けて飛んでいったウィーニーを振り返った。


「こ……殺される……ウィーニー」


 その時。


 ウィーニーの中で何かが脈打った。


ドクンッ!


 その瞬間、ウィーニーの目の奥に金色の光が灯った。


 シャクールは、拳を握った。


「あの目……よっしゃ! 間に合ったか?」


 ジャックは目を細めた。


「ほう。死んだと思ったが」


 ゆっくりと立ち上がったウィーニーは、ジャックに向き直った。

 金の目が、ジャックを見据えた。


「まだ……だ」


「フン。ガキ。その目ぇ、オレの嫌いな色だ」


 ウィーニーは、拳を握った。


「まだ……これからだ!!」


 ウィーニーは、地面を蹴った。


 金色に光る拳を振りかぶる。


 だが、ジャックの姿が消えた。


「え」


 ウィーニーは、慌てて振り返った。


「いない!?」


「ガキ」


 頭上から声。


「ようやく、本気で殴れるわぁ」


「っ! ……避けれねえ……」


 天から落ちる巨大な鉄槌は、無情にもウィーニーの頭を捉えた。


「ウィーニーッ!!」


ドグシャアアアァァァ!!


 ウィーニーは再び、叩きつけられた。


 陥没する地面。


 衝撃波が周囲に広がる。


 ロベルトとシャクールは、思わず顔を覆った。


 倒れたウィーニーから、金色の光がゆっくりと消えた。


「う……うう……っ」


 もう、指先すら動かなかった。


 ロベルトは、空を見上げて大きく息を吐いた。


「オスカー。流石にキツいぞ、今回はぁ」


 シャクールは、膝をついた。


「嘘だろ……。金色の力が……通用しねえ……ウィーニー……」


 ジャックは、葉巻に火をつけて、倒れたウィーニーを見下ろした。


「悪いなぁ、ガキ。その光みたら、力が入りすぎちまったぜぇ」


 視界が霞む。

 ようやく意識が、飛んでくれる。

 そう思った時、ウィーニーの視界に三匹のトラッシュが映った。


「あいつら……」


 ウィーニーの目から一筋の涙が溢れた。


「ダサいよなぁ……。オレは、マイクにも、ロベルトにも……なれなかった」


 三匹のトラッシュは、無言でウィーニーを見下ろしていた。


 そして──ウィーニーの意識が、消えた。


 ジャックは、ゆっくりとウィーニーに向かって歩を進めた。


「そこの一本角。今回の喧嘩、そのガキのタマで落とし前にしておいてやる。いいなぁ?」


 ロベルトは、何も言わずに拳を握った。


「ストリートデビルズだったか? お前らは、喧嘩売る相手を間違えた。二度目はねえぞ」


 ロベルトは、小さく呟いた。


「仕方ねえ。死ぬまでやるか」


 シャクールはロベルトを見て頷いた。


「わかった。ここまでだな。やろう」


 意識のないウィーニーを見下ろしたジャックは、拳を高々と振り上げた。


「くせえ血は、根絶させなきゃなぁ」


 ロベルトは、わずかに首を傾げた。


「にしても、この喋り方、どっかで……」


 その時。


ドン。


「あ?」


ドン。


 胸を叩く音。


ドン。ドン。


 シャクールが振り返った。


「何やってんだ、お前ら?」


 三匹のトラッシュが、胸を叩いた。


ドン。


「うぃす……ウィーニーが……」

「うす……ビートを刻めって……」

「……それが指示だから……」


ドン。


「バカか、てめえら。ウィーニーはもう倒れてるだろ! そこにいたらてめえらなんか、衝撃波で死ぬぞ!」


 しかし、三匹のトラッシュは、一歩前に出た。


「これが指示だから」

「ビートを刻めって」

「そう言われたんだ……」


「なっ……」


 その時、ウィーニーの体が再び光り出した。


ドン!


 トラッシュが胸を打つ度──


ドン!


──強くなる光。


ドン!


 そして──


 シャクールは目を見開いた。


「あの色……」


 ウィーニーの金色のオーラに、微かに混じる赤いオーラ。


ドンッ!


 気を失っていたウィーニーが、手をついた。


「……そうだ……ビートを、刻め」


 もう一方の手もつく。


「それがオレの、指示だ……」


 ウィーニーは、膝をついた。


 ジャックがため息を吐いた。


「ふう。本当にしぶといガキだな。──死ね」


「それが……オレ達……」


 再び、振り下ろされた鉄槌。


「ストリートデビルズだああああぁぁぁぁ!!」


 しかし──


 その瞬間、金と赤の光が弾けた。


バキイイイイイィィィィンッ!!


「ぐおっ!!」


 その衝撃は、ジャックを弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた足が、地面を抉る。

 二本の轍を刻みながら、ジャックの体が後退する。


 そして、止まった。


「一体、なんだぁ、こいつぁ!」


 二色のオーラに包まれたウィーニーは、身を屈めて構えた。


 そのオーラが、拳に集まっていく。


「オレはウィーニー。路地裏育ちのストリートデビルズ──」


 ジャックは、カッと目を見開いて構えた。


「ブワハハハハッ! 面白いガキだ! ぶちかましてこいや!!」


 路地裏のウィーニー。

 伝説のアウトロージャック。


 二人が同時に地面を蹴った。


 二つの閃光が、ロックンロールアイランドを割った。


 路地裏と、伝説が──ぶつかった。


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