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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第71話 神の毒 〜救いの言葉で差し出すチェイン 解放の条件 セラへのペイン 毒を見抜いた緑のフレイム 自然が示した世界のフレーム〜

「大佐、お気をつけください。どこかにゴーストが潜んでいるやもしれません」


 ファルコン少佐は警戒するように辺りを見渡すと、ラプター大佐に言った。


「わかっている……」


「怖いか、ラプター?」


 ファントムは、ラプターに歩み寄った。


「……怖いに決まってる。あなたは、伝説だ。いまだに私の上官であり……師。それが今、敵側にいる──」


「敵側、か」


 ファルコン少佐が銃を握りしめた。


「大佐、油断してはいけません!」


「安心しろ。私は戦いに来てはいない。シルヴァーナを……止めに来た」


「将軍……なぜ。なぜワイルドブラッドと……。かつては、帝国軍の繁栄を、人間の繁栄を目指していたはず」


「今でも変わらんさ」


「では、なぜ!? 私は……私は軍人として、将軍の後ろを歩んでいたにすぎない! 私は──」


「お前は悪くない。私はもう、帝国軍を恨んでなどいない」


「……」


「軍人としてではなく、武力ではなく、他の方法で平和の道を探しているだけだ」


「私の背中を見て来たお前なら、いずれわかる日が来るさ」


 そう言うと、ファントムは、光に拘束されたシルヴァーナを見た。


 その視線の先で、ソルセリオンが、ゆっくりと、シルヴァーナに、歩み寄っていた。


「さて──ワイルドブラッド」


 拘束されたシルヴァーナは、ソルセリオンを、睨みつけた。


「どう収めましょうか?」


 セラはソルセリオンに歩み寄った。


「もうやめて! シルヴァーナさんを、離してください!」


 その時、ファントムが叫んだ。


「セラ! そいつに寄るな!」


 セラに向かって駆け出した瞬間、エターナルの兵がファントムを取り押さえた。


「ぐっ! 離せ!」


「ファントムさん! もう、みんな、やめて! どうして……どうしてこんなこと……」


 ソルセリオンは、セラを見つめて言った。


「その通りだ。そして、セラ。これは君が終わらせられる」


「え」


「ワイルドブラッド、反乱軍、あなた達を解放しよう。今日のことは無かったことに。時間はかかるかもしれませんが、共に平和と調和の道を探しましょう」


 セラは、平伏した。


「主よ……ありがとうございます! 帰ろう、シルヴァーナさん、ファントムさん!」


 ソルセリオンは、セラに手を伸ばした。


「君はここに残りなさい。それが、解放の条件です」


「なっ……私が……残る?」


「セラ。主の言う通りだ」


 聞き慣れた声に、セラは振り返った。


「神父……」


「お前はシスターだ。神に仕え、神のお声を聞いて人々を救済する。それがお前の務めだ。この街で、今まで通りにな」


 沈黙が落ちる。


 セラは、静かに頷いた。


「分かりました……」


「さあ、私の手を。二人を解放しよう」


 そう言うと、ソルセリオンは、静かに手を差し出した。


 セラはソルセリオンの前に立つと、ゆっくりと手を伸ばした。


 その手が触れる寸前──


「フッフッフッ……。争いはなくならぬ。貴様らのような狡猾な神と愚かな人間がいる限り」


「シルヴァーナさん……」


「小娘、まだ気付かぬか。神の毒に」


「神の……毒?」


「それに、私は拘束などされていない」


 シルヴァーナの足元で、細い草が芽吹いた。


「え」


「自然は、貴様ら神如きに拘束などされない」


 シルヴァーナの目が緑に光り出した。


「解放だと? 笑わせるな、毒め」


 ソルセリオンは、首を傾げた。


「ワイルドブラッド。何をするつもりだ」


 シルヴァーナの体の中から、緑の光が漏れ出した。


 ソルセリオンの顔が歪んだ。


「くっ……」


バチンッ!!


 その瞬間、シルヴァーナを拘束していた金色の光が弾け飛んだ。


「何だと!?」


「私が正してやろう。貴様らのその歪んだ思想を──」


 シルヴァーナは、両手をゆっくりと掲げた。


「貴様らの世界の中に自然があるのではない──」


ズンッ!


 その手を地面に突き刺した。


「貴様らが、自然の中にいるのだあああぁぁぁ!!」


 その瞬間、緑の光が──弾けた。


 ソルセリオンは、セラを庇い光の壁を展開した。


 木々が地面を割り、天に向かって伸びる。

 蔦が刃となってエターナル兵に突き刺さる。

 司令塔は一瞬で苔むし、蔦が無機質なコンクリートを覆った。


 全員が、目を開けた時、そこにシルヴァーナの姿はなかった。


 残されたのは、苔むした司令塔と、濃い森の匂いだけだった。

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