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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第68話 開かれぬ道 〜笑顔で嘘をカット ルートをシャット 悪魔と共に 見つかるキッド〜 

 壱番街の、司令基地。

 入口には純白の鎧を身に纏った神の軍兵。

 その横に帝国兵が並んで立っていた。


 ラプター大佐は、長机の、末席に、座っていた。

 その横にファルコン少佐。


 上座には、ソルセリオン。

 兜を外したその顔は、相変わらず、人のものとは、思えない。

 琥珀色の瞳が、宙を見ている。

 その後ろに、神の軍兵が二人立っていた。


 その隣には、頭を垂れて神父が座っていた。


「さあ。始めましょうか」


 透き通ったソルセリオンの声が、司令室に静かに響いた。


「ソルセリオン殿! ブラックゲートのアンデッドの掃討にお力をお貸しください! 早急に供給ルートを確保し、本営との連絡を──」


 慌てたように訴えるラプター大佐を、ソルセリオンは笑顔で制した。


「大佐。まずは、お鎮まりください」


「我々帝国軍は、いつまでも神々のお力に頼っているわけにはいきません! 早急に──」


 ソルセリオンは、わずかに語気を強めてもう一度ラプター大佐を遮った。


「その通りです」


「え」


 ソルセリオンは、ゆっくりと立ち上がって言った。


「我々は、いつまでもこの地にはいられません。人はいつか自分で立たねばなりません」


 ラプター大佐は、身を乗り出した。


「さすれば! 森がいつまた動くとも知れません! アンデッドも……。早急にブラックゲートの開通をせねば!」


 ソルセリオンは目を閉じた。


「ソルセリオン殿! あの飛空艇をお貸し頂くことは可能か? まずは本営との連絡を──」


 今度は神父が、ラプター大佐を遮った。


「大佐! 座りなされ! 主の前で、無礼であるぞ!」


 ラプター大佐は、語気を荒げた。


「なんだと!」


 その時、ソルセリオンの背後の神兵二人が一歩前に出た。


 ソルセリオンは、片手を伸ばして二人を制した。


「大佐。まずは、お座りください」


 ラプター大佐は座らなかった。


 ソルセリオンは、それに構わず笑顔で話し始めた。


「まず南の森。監視のため6番街にエターナルの兵を置いています。こちらから森を侵さなければ、彼らから攻撃してくることはないでしょう」


 ラプター大佐は、机を叩いた。


「ソルセリオン殿! それは甘いぞ! ワイルドブラッドどもは、我々に先制攻撃を仕掛けて来たんだ! なんの前触れもなく……6番街は、一瞬で落とされたんだ! 油断してはいけない!」


 ソルセリオンの目がわずかに光った。


「大佐。嘘はいけませんね」


「嘘、だと!?」


「ワイルドブラッドが前触れもなく先制攻撃と?」


「そうだ!」


「数刻後に森へ侵入しようとしていたのは、大佐。帝国軍の方ではありませんか?」


「な……。た、確かに、そうだが、実際は──」


 ソルセリオンは、窓際に置いてあった花瓶の花を指差した。


「ワイルドブラッドは、気を察知します。草木、虫、鳥、獣──ありとあらゆる生物が人の動きを感じています──心の動きすらも」


「なんだって……?」


 ソルセリオンは、ファルコン少佐に視線を移した。


「貴方方はまだ、ワイルドブラッドの──自然の本当の怖さを知らない」


「……」


 司令室に沈黙が落ちた。


 ソルセリオンは、神父を見た。


「それに、かの森には我々を呼んだシスターがいますね?」


「セラ……はい」


「彼女は我々にとっても大切な子です。彼女を危険に晒すような事はなりません」


「セラが……。はい」


 ソルセリオンは、ニコリと笑って続けた。


「飛空艇はいずれ用意しましょう。それよりも、大佐の仰る通り、まずはブラックゲートです」


 今度はファルコン少佐が口を開いた。


「兵を、お貸し頂けますか?」


 ソルセリオンは、頷いた。


「ええ。もちろんです」


 ラプター大佐は、ゆっくりと座り直した。


「それでは、早速準備を」


 ソルセリオンは続けた。


「ええ。周囲に群がるアンデッドを一掃し、ブラックゲートを封鎖。我々が結界を張ります」


 今度は、ファルコン少佐が立ち上がった。


「ふ、封鎖っ!? そ、それでは供給ルートの確保になりません!!」


「封鎖しなければ、アンデッドはゲートから湧き続けます。物資は、我々が引き続きお届けします」


「し、しかし、それでは──」


 ソルセリオンは、ラプター大佐に向き直り言った。


「それとも、物資の供給以外にルートを確保したい理由があるのですか──大佐」


 再び沈黙が落ちる。


 ラプター大佐は、静かに目を閉じて言った。


「……いや。……まずは、ソルセリオン殿の言う通りにしよう」


「安心してください。時がこれば、本営へのルートは開かれるでしょう」


 皆が席を立った時、ファルコン少佐がラプター大佐に耳打ちをした。


「今朝、7番街で悪魔の襲撃が」


「何?」


「我々の兵は全滅。住民によると……」


「なんだ?」


「はい。……赤と金色の光が落ち、神の像を破壊。一瞬のうち殲滅されたと」


 ソルセリオンの足が止まった。


 ラプター大佐の目が鋭くなった。


「それで?」


「一本角、ジャージ姿の悪魔と人間のガキが立っていた、と」


「まさか……あのガキか?」


 ソルセリオンが歩み寄った。


「少佐。あのガキ、とは?」


「はい。以前にも度々現れたガキです。いつも悪魔と行動を共にし、追い込まれると……金色に光る……」


 ソルセリオンの口元にわずかに笑みが浮かんだ。


「なるほど。もう一人いるということか」


「ソルセリオン殿?……あのガキは一体……?」


 ソルセリオンはそれに答えず、背を向けた。


「それにしても、悪魔と行動を共にとは──」


 そう言うと、司令室を去っていった。


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