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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第65話 角無しの拳 〜白い救済 街を包む 角無しの傷が 赤く疼く〜

 純白の鎧。

 黄金の装飾。

 兜が、その白い顔の半分を隠していた。

 空気が一段冷え、厳格な雰囲気が壱番街を包み込んでいた。


 帝国軍の兵士もわずかに残った住民も、その圧倒的な空気に言葉を失っていた。


 神父は膝をつき手を合わせ、ラプター大佐とファルコン少佐は、静かに頭を下げた。


ガシャッ。


 隊列が割れ、その一人が前に歩み出た。


 黄金の仮面。

 青い紋章が浮かぶ純白のマントが、風に翻った。


 その者は、仮面をゆっくりと外した。

 同時に、ふわりと金色の長髪が流れる。


 白い目の中心に琥珀色の瞳孔。

 その奥がわずかに金色に光った。


 そこにいた全員が息を呑んだ。


「地上に立つのは──」


 透き通るような声が、耳の奥に響く。


「久しい。ゆえ──言葉がおぼつかぬこと、許されたい」


 神父は、顔を上げた。


「荒廃したこのセントラで、信仰を忘れず生き抜いた皆に──感謝、申し上げる」


 神父は震える声で言った。


「し、主よ……。あ、貴方は……?」


「アンセムボーンエターナル、第1師団の長。ソルセリオンと申します」


「ソルセリオン……」


 今度は、ラプター大佐が口を開いた。


「恐れながら……神々は、帝国軍の味方をしてくださるということですか?」


 ソルセリオンは、わずかに首を傾げた。


「我らは、この世界に住む全ての人類の味方です」


 ファルコン少佐が、一歩前に出た。


「人類には、反乱軍も含まれるということですか? 獣と手を取り合い、我々に弓を引くやつらです。それは──」


「まずは、これを」


 ソルセリオンは、遮るように静かに手を上げた。


 司令塔の上に浮かぶ大きな影。


「飛空艇だ!」


 誰かが叫んだ。


 その飛空艇は、音もなくゆっくりと壱番街に降り立った。


「主よ……これは」


 水。食料。衣料。包帯や薬草。


 大きな飛空艇から、次々と物資が降ろされる。


 ソルセリオンは、静かに微笑んだ。


「生きるために必要なものは、我々が供給します。しばし、穏やかな日々を、一緒に過ごしませんか?」


 住民の歓声が、壱番街を満たしていく。

 久しく失われていた活気が、壱番街に戻っていった。


 ラプター大佐は、降り注ぐ物資を見上げた。


 水も。食料も。薬も、何もかも揃っている。


 ラプター大佐は、手に取った水を見つめていた。


 その完璧さが、なぜかラプター大佐の胸をざわつかせた。


 ソルセリオンは、穏やかに微笑んでいた。


「お気に召しませんか?」


 ラプター大佐は顔を上げた。


「あ、いえ……」


 ソルセリオンは、水を見つめるラプター大佐から視線を外さなかった。


 ラプター大佐は、少し慌てたように水に口をつけた。


 その頃、13番街の港。


 シャクールは、慌てていた。


「おい、ウィーニー! やべえぞ! ついに、地獄から魔族の幹部がやってきやがった!」


「魔族の幹部?」


「ああ、そうだ! ジャロン……魔王ダマトの親衛隊の一人。最高位の悪魔だぞ! クラブの扉を破壊して、ジェシーを吹っ飛ばしたらしい! まさか……あんな大物が直接警告にくるなんて……」


 ウィーニーは、ポカンと口を開けて慌てるシャクールを見上げた。


「ウィーニー! なんだそのとぼけた顔は!? 一大事だぞ!」


「そうなんだ……。でも、オレ達は、最強のアウトロー、ストリートデビルズだし。大丈夫でしょ?」


ガツンッ!


 シャクールは、ウィーニーの頭にゲンコツを落とした。


「痛っ!」


「馬鹿野郎! お前は、まだ弱えくせに余裕こいてんじゃねえ!!」


「そ、そんなつもりじゃあ……あっ」


「なんだ?」


「あれ……」


 ウィーニーの視界の端に影が一つ。


 堤防の端。


「あれ、ロベルトか?……」


「シャドー……してる?……」


 ウィーニーとシャクールは、息を呑んだ。


シュッ! スパァンッ!

ブンッ! ブンッ!


 ロベルトのパンチが、赤い糸を引き、波の音を切り裂いた。


シュッ!

ズオォッ!

ズオンッ!


「シャクール。ロベルトのパンチ……すごい音だね……」


「ロベルトのシャドー……。てか、トレーニングしてる姿、初めて見たぜ……」


 シャクールがそう言うと同時に、ロベルトはピタリと動きを止めた。


 ロベルトは、月を見上げると、大きく息を吐いた。


「フウ……」


 港に沈黙が落ちた。


 ウィーニーは、ロベルトを見つめたままシャクールに問いかけた。


「シャクール。さっき言ってたジャロンってのは……」


 ウィーニーが言いかけた時、ロベルトの体から赤いオーラが滲み出た。


 拳に、オーラが集まる。


 ロベルトは、大きく振りかぶると、ボソッと呟いた。


「──クソがぁ」


ブゥンッ!!


 ロベルトは、拳を地面に叩きつけた。


 ウィーニーとシャクールの口から、声にならない息が漏れた。


「っ!?」


ドオオオォォォンッ!!


 赤い光が弾け、港が一気に赤く染まる。


 ウィーニーは思わず目を瞑った。


 ──再び、港に沈黙が戻った。


 目を開けたウィーニー。


 ロベルトの姿は、消えていた。


「え……」


 ──堤防ごと。


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