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第62話 世界を繋ぐ子 〜白い旗揺れる 5番街 神の矢雨が 残した問題  揺れる正体 金の目が見送る 世界の境界〜

 5番街。

 ウィーニーは、帝国軍が築いた中継基地を見上げていた。


「完成、したのか……。もう、街とは呼べねえな。城だ……」


 帝国軍の旗の横に並ぶ純白の旗。

 神の旗印が、風に靡いていた。


「神の軍隊。やっぱり帝国軍の味方なのかな?」


 その時。

 ウィーニーの背後で、聞いたことのある笑い声がした。


「ほほ。無事じゃったか」


 ウィーニーは、ビクッと身を屈めて振り返った。


「ワイザー!!」


「声が大きい。こっちへ来なさい」


 ウィーニーは、路地に消えていくワイザーの背中を追った。


「ほほ、ここならよかろう」


 ワイザーは、薄暗い空き地の隅に腰を下ろした。


「ワイザー! なんでここにいるんだ!? 南の森に行ったはずじゃ?」


「ほほ。久しぶりにお主の顔が見たくなってなぁ」


 そう言って、ワイザーはウィーニーの顔を下から覗き込んだ。

 相変わらず、妙に澄んだワイザーの瞳に、ウィーニーは顔を傾げた。


「何?」


「なるほど。少しは強くなったようじゃの」


「そうか?」


 そういうとウィーニーは力こぶを作ってみせた。


「ほほ、ハートが、じゃよ」


「ハート? なんだよそれ。変なの」


 ワイザーは、視線を外さず言った。


「お主、死にかけたそうじゃな?」


「あ、ああ。セラから聞いたのか?」


 ワイザーはそれに答えず、視線を外し、その長い髭を撫でて笑った。


「ほほ」


 ウィーニーは、アンデッドの矢が突き刺さった胸をさすりながら言った。


「不思議なんだ。確かに胸と足に矢が刺さったのは覚えてるんだけど……目を覚ましたら、セラがいて……矢も傷も消えてた」


 ワイザーは、目を細めウィーニーを見た。


「ほほ。そうかの」


 ウィーニーは、自分の手を見つめながら言った。


「オレは一体、何者なんだ。金色の光を放ったり……突然力がみなぎったり……。なあ、ワイザー、オレは──」


 ワイザーは、ウィーニーの言葉を遮った。


「お主やセラは特別な子じゃ。ワシからはそれしか言えん」


「セラも……同じなのか?」


 ワイザーは答えなかった。


 その代わりにワイザーは、ボソッと呟いた。


「世界を繋ぐ……かの」


「え?」


「ほほ」


「今、なんて言ったの?」


「ほほ、なんでもない。それよりも、お主、神の軍隊を見たか?」


「う、うん」


 ウィーニーは拳を握った。


「見た。目を開けたら、戦場にいた。……アンデッドの大群を、一瞬で消しちまった。大量の矢……金色の──」


 ウィーニーは拳を強く握り込んだ。


「──その矢は、オレ達、デビルズのことも狙ってた……」


 ワイザーは、再びウィーニーの顔を覗き込んだ。


「"オレ達、デビルズ"……か」


「な、なんだよ……」


 ワイザーは、ため息を吐くと立ち上がった。


「ふう。これでまた、世界はわからなくなった。モルドレクも消えてはおらん」


「モルドレク。あのアンデッドか?」


「森の怒りも人間の欲も。神が降りても、混沌は消えん……」


「ワイザー?」


「神が地に降りるということ。つまり、地の底も黙っておらんじゃろう」


「何を言ってるの、ワイザー?」


 ワイザーは、キョトンとするウィーニーを見下ろした。


「ウィーニー。──神に近づき過ぎるでないぞ」


 その瞬間、ワイザーの瞳が金色に光った気がした。


「ワイザー……。あんたは……一体何者なんだ?」


 ワイザーは、ウィーニーに背を向けて笑った。


「ほほほ、お主の知っている通り。ホームレスじゃ」


 そういうとワイザーは、夜の闇に向かって歩き始めた。


 ウィーニーは、去っていくワイザーの背を見て、ポンと手を叩いた。


「あ! そうだ! ワイザー! ──ウィゼリウスって誰だ?」


 ワイザーは、足を止めた。


「その名を……どこで?」


「戦場で倒れた時……夢の中で」


 ワイザーは、夜空を見上げた。


「ウィゼリウス……はて? どこかで聞いたことあるような……誰じゃったかのぉ」


 そう言い残すと、ワイザーは夜の闇に消えて行った。


 ウィーニーは首を傾げた。


「物知りのワイザーなら知ってると思ったんだけどなぁ……」


 その時、ウィーニーの背中に冷たい風が吹きつけた。


「うっ、寒っ!」


 ウィーニーは振り返って空を見上げた。

 闇に浮かぶ帝国軍の基地と白い旗がウィーニーを見下ろしていた。


「ま、いっか。……帰ろう」


 ウィーニーは、再び5番街を駆け出した。


 その背に、金色の視線を受けながら。


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