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第60話 神軍、降臨 〜セラが呼んだName  神の軍勢 空からAim〜

 暖かい。

 柔らかい。


 抱かれてる。

 誰かに。


「……運命じゃ」


 誰かの声?

 男の……。


「人の身で、神の子を産んだ。……もう、長くはもたん」


 誰?


「そう。……受け入れるわ」


 今度は女の人の声。


「この子に会えただけで……十分よ」


 誰だよ……。


「この子の名は、どうする?」


 名?


「名前かぁ……。この子の名前は……世界に託すわ」


「世界に託す?」


「うん。この子は私だけの子じゃない。神だけの子でもない。この子は……いつか世界を繋ぐ」


 なんの話をしてるんだ?

 てか、誰だ?


「世界を繋ぐ……か。よかろう」


 この声……どこかで。


「この子をお願い……ウィゼリウス……」


 ウィゼ……誰?


 てか、オレ死んだのか?

 そういえば、矢が刺さって……倒れて……


 セラがいて……セラ?


 セラは……どうなったんだ?


「セラ!!」


 自分の声が、夢を引き裂いた。


 目を開けたウィーニー。


 霞んだ視界の中で、金色の髪が風に靡いた。


 セラだ。


 セラは、大きく目を見開いた。


「ウィーニー!!」


 刺さったアンデッドの矢が、ゆっくりと光に溶けていく。


「セラ。オレ……死んだんじゃ……」


 セラは、涙でくしゃくしゃな顔を横に振った。


「生きてる!! 生きてるよ!!」


「……戦いは? ……デビルズは?」


 セラは答えず、ゆっくりと戦場の方へ目を向けた。


 ウィーニーは体を起こし、息を呑んだ。


 アンデッド。


 ワイルドブラッド。


 帝国軍。


 デビルズ。


 誰も、動けなかった。


 全員が同じ方向を見ていた。


 東の空の下。


 無数の影が、整然と並んでいた。


 白い甲冑。


 黄金の装飾。


 槍からたなびく紋様の描かれた旗。


 地平線を埋め尽くす光の軍勢。


「な……なんだあれ?」


 その時。

 軍勢の中の一人がゆっくりと歩み出た。


 兜の奥に、顔は見えない。


 その影が、戦場をゆっくりと見渡す。


 その視線が、ウィーニーとセラに止まった。


 ウィーニーはセラと顔を見合わせる。


「え」


「今……こっち見た?」


 純白のマントが、風に揺れる。


 ゆっくりと上がる手。


 前衛の槍隊が左右に割れた。

 後列の弓兵が、音もなく前へ出る。


 一斉に、矢が番えられた。


 空に向かって、弦が引かれた。


 その手が──振り下ろされた。


ビュオオォォン!!


 一瞬で空が、矢で埋まる。


 朝日を弾く白銀の矢が、戦場に降り注いだ。


 倒しても甦ったアンデッドは、その矢に触れると、音もなく、塵も残さず消えていく。


「ギギ……」


 王を庇うように、ネクロマンサーは紫のオーラでモルドレクを包み込み、二つの影は一瞬で戦場から消えた。


 シルヴァーナ率いる森の群勢は、降り注ぐ矢を掻い潜りながら、森へ駆けた。


 戦場の絶望が浄化されるように、アンデッド達は跡形もなく消えた。


 だが──


 ウィーニーは気付いた。


 その矢は、アンデッドだけに向けられたものではないことに。


 マニーが、舌打ちした。


「チッ! 気取ったクソ野郎どもが」


 その時。


ブオオオオォォォン!


 丘の上から轟音と共に、大きな砂煙が迫ってきた。


「オラァァァァ!! マニー! やっぱりてめえだけじゃ無理だったろうがぁぁぁ!!」


「ジェシー!!」


「てめえ、ジェシー! それはオレのバイクだろうがぁ!!」


「フロイド!!」


「マニー! ロベルト! シュガー! 乗れ!!」


「テレンス!」


 マニー、ロベルト、シュガーが、横を走り抜けるバイクに飛び乗った。


「マイク! ガキとシャクールはあっちだ!」


「ああ」


「オスカー! マイク!」


 バイクに乗ったトップ6の面々が戦場を切り裂くように横切る。


 ウィーニーとシャクールの前に、マイクとオスカーのバイクが止まった。


 シャクールはオスカーのバイクに飛び乗ると、ウィーニーを振り返った。


「ウィーニー! いくぞ!」


「うん!」


 セラの元を離れるウィーニー。


「ウィーニー!」


 セラが呼び止めた。


 ウィーニーの足が止まった。


 シャクールが叫んだ。


「何してる! 早くマイクの後ろに乗れ!」


 マイクは何も言わず、ウィーニーを見ていた。


「セラ……」


「ウィーニー……」


 一瞬の沈黙。


 そして──


「ありがとう」

「ありがとう」


 二人の言葉が重なった。


 ウィーニーは、マイクのバイクに飛び乗った。


「マイク……」


「帰るぞ」


 マイクは小さく言うとアクセルを回した。


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