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第59話 Anthem Born Eternal 〜讃美歌から生まれる永遠〜

「倒したハナから、復活してやがる!」


 ロベルトの声に、デビルズが一瞬動きを止める。


 砕いたはずの骨が、組み上がる。

 潰したはずの頭が、ゆらりと持ち上がる。


「止まるな!」


 マニーが叫んだ。


 赤い閃光を引いて、マニーのパンチがアンデッドを貫く。


 ヘルパニッシャーのハンマーが、倒れたアンデッドを粉砕する。


 だが、倒した数だけ起き上がる。


「おいおい……キリがねえぞ」


 マニーの息が僅かに上がった。


 ネクロマンサーの杖からは、紫のオーラが立ち昇り続ける。


 それがモルドレクに巻き付くように吸い込まれていく。


 モルドレクは、ゆっくりと首を回した。


ズンッ!


 踏み出した足が、地面を砕いた。


 その瞬間、周囲にいたアンデッドが黒い霧を纏った。


「いやあ……参ったな。力が広がり続けてる」


 ロベルトの額に、汗が伝った。


「グハァッ!!」


 教会の前。

 最後の雑兵が、アンデッドの一撃に倒れた。


 ファルコン少佐とラプター大佐は軍刀を抜いた。


「大佐! 神父を連れてお逃げください! 壱番街にはまだ、兵士も武器も──」


 ラプター大佐は、首を振った。


「無駄だ。ここで止めねば、いずれ壱番街も堕ちる!」


 その後ろで、神父が地面に突っ伏した。


「神よ……主よ……」


 ラプター大佐は振り返ると、神父を見下ろした。


「ここまできても、まだ神に祈るか?」


 神父は僅かに顔を上げた。


「神への祈りを忘れてはならぬ……。神への信仰を……」


 ラプター大佐が叫んだ。


「無駄だ!! この世界に神などおらぬ! この死体の山が見えぬか! 何人が死んだと思ってるんだ! セントラは……人間は、もう終わりだ!! 我々もここで死ぬ! 男なら、覚悟を決めよ!!」


「主よ……神……よ……」


 神父は再び、地面に突っ伏してぶつぶつと独り言を呟いた。


「ぐわぁっ!」


 ファントムは、アンデッドの体当たりで倒れた。


「くっ……」


 立ち上がろうとした瞬間──


ザクッ。


 足に突き立てられた錆びた剣。


「ぐあああぁぁ!……クソォ!」


ブン!


 ファントムは、残る力でアックスを振った。


 吹っ飛んだアンデッドは、空中で体を再生させた。


「再生スピードが……上がってる」


 その時。


トンッ。


 セラが、馬から降りた。


「セラ! 降りるな! 馬に乗って森にかけろ!!」


 カタカタと震えるファングソード。

 セラの瞳から涙が流れる。


「嫌……。私も、戦う……。私も……守る」


 周囲を囲んだアンデッド達が、セラに剣を向けた。


 力を増し続けるアンデッドの大群に押されるワイルドブラッド。


 オオトカゲの背に組まれた矢倉が大きく傾いた。

 重さに耐えきれず、ひっくり返ったオオトカゲに群がるアンデッド。


 アンデッドに長槍を突き立てたウサギは、シルヴァーナを振り返った。


「シルヴァーナ。アレ、使わないのか?」


 シルヴァーナは息を切らせて、首を振った。


「はあ、はあ。ダメだ。死臭が強過ぎる……」


 ウサギは長槍を下ろし、モルドレクを遠い目で見つめた。


「そうか。森が……飲まれる、か」


 ──デビルズの陣営では。


 マニーが叫んだ。


「ロベルト! 早くやれ! ネクロマンサーだ!」


「あいよぉ。とは、いえ……悪ぃ──」


 マニーが、ロベルトを振り返った。


「なっ!?」


「──捕まっちまってよぉ」


 ロベルトは、ネクロマンサーの杖から放たれる紫のオーラに拘束されていた。


「あああ、もうなんやねん!! 離せやぁ!」


「クソ! シュガーまで」


 マニーは、自らネクロマンサーに向かって駆け出した。


 その前にアンデッド達が立ちはだかる。


「クソが! 邪魔くせえ!!」


 ──その頃。


「よせ! セラ!」


ザッ!


 アンデッド剣士が剣を振り上げ飛んだ。


「きゃあ!」


ガキンッ!


カラン、カランッ!


 ファングソードが転がる。


「セラー!!」


 倒れたセラを見下ろすアンデッド。

 剣を逆さに持ち替え、切先をセラに向けた。


「ギギギ」


 その時──


ズドンッ!


 金色の閃光が、アンデッドを撃ち抜いた。


 セラの横に、ゆっくりと倒れるアンデッド。


「ひっ」


 セラはゆっくりと顔を上げた。


 目の前に立っていた小さな影。


「ウィ……ウィーニー!!」


 セラの瞳から一気に涙が溢れた。


「セラ!! 大丈夫か!?」


「ウィーニー! どうして……」


「セラ! それより──」


 ウィーニーが駆け寄ろうとした瞬間。


タンッ!


「うっ!」


 矢が、ウィーニーの胸に突き刺さった。


「いやあぁ!!」


タンッ!


 二本目の矢は足に。


 ゆっくりと膝をついたウィーニー。


「セ……ラ……」


 セラは駆け寄りウィーニーを抱きしめた。


「いやああ!!」


 ファントムの部下達も突然降ってきた矢に膝をつく。


「奴ら……アーチャーまで……」


「……これでも、一部ということか……」


 セラの涙が、ウィーニーの頬を伝う。


「もういや……。もう……やめて……お願い……」


 セラは、震える唇で何かを口ずさんだ。


「主よ……光よ……」


────────────────────

我らを導きたまえ

────────────────────


 ファントムは、目を細めた。


「……讃美歌?」


────────────────────

永遠の旗のもと

────────────────────


 モルドレクの視線がゆっくりとセラを捉えた。


 セラの体が黄金に光りはじめた。

 その光は、ウィーニーを包み込む。


 アンデッドが、後ずさった。


 シルヴァーナが振り返る。

 マニーが眉を顰めた。


 戦場の視線が、ゆっくりとセラに集まる。


────────────────────

あなたと共に……

────────────────────


 セラはゆっくりと目を開けた。

 金色に光る瞳。


────────────────────

──Anthem Born(讃美歌より生まれる)……

────────────────────


 セラは、目を見開いた。


「Eternal!!」


 東の地平線に、光が浮かぶ。


 讃美歌が、永遠を呼んだ。


 ファントムは、目を細めた。


 光の中、無数の影が整然と並んでいた。


 神父の瞳が大きく揺れた。


「おお……主よ……」


 マニーは、顔を顰めて言った。


「ちっ……一番めんどくせえ……」


 アンセムボーンエターナル。


 夜明けとともに、セントラに神の軍隊が降り立った。


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