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第55話 運命のトリプルダイス 〜 割れる教会 動くDead 歪む境界 神はFade 三つの火種が街をSlice 運命転がすTriple Dice〜

「アンデッドだああああぁぁ!!」


 その声に、教会の全員が振り返った。


 シルヴァーナの曲刀が、止まる。


 帝国軍も。

 ワイルドブラッドも。

 ファントムも、セラも。


 誰も、動かなかった。


 地平線が黒い霧で揺れる。

 夜よりも黒いオーラ。


 地を這う影が動く。

 無数の足が、地面を擦る音。


ズ……ズ……ズ……


 妙に規則正しい。


 骸骨の剣士。

 巨体を揺らすトロール。

 端まで見えない大群。


「……嘘、だろ」


 誰かが、呟いた。


 群れの中心。

 無数の髑髏がぶら下がった御輿。

 赤いローブを風に靡かせ、ネクロマンサーがゆっくり杖を振っている。


 その背後。

 大きな黒いオーラ。

 反り返った大剣を引き摺る王。


ズンッ。


 一歩進むごとに、地面の草が枯れた。


 ラプター大佐は思わず一歩下がった。


「もう、ここまで……」


「モルドレク」


 背後から聞こえた声に、ラプター大佐が振り返った。


「神父」


「まだやつは、完全な体を手にしておらん。それでも──我々には、倒せん」


ズンッ!


 アンデッド達が一斉に動きを止めた。


 沈黙に包まれる教会。


 誰かが小さく言った。


「何が始まるんだ……?」


ギィィ……。


 モルドレクが、その大剣を高々と掲げた。


 シルヴァーナは、身を屈めた。


ブンッ!!


 振り下ろされた大剣。


 放たれた漆黒の衝撃波。


 音もなく、教会に向かって地を這う。


「避けろ!」


 ファントムはセラを抱え、ラプター大佐は神父を掴んで飛んだ。


ズドオオォォォンッ!!


 凄まじい衝撃音。


「教会が……」


 ──真っ二つに割れた。


 ガラガラと音を立て、無惨に崩れ落ちる神のシンボル、6番街の教会。


 神父は声を震わせた。


「か、神よ……」


 ラプター大佐は、顔を上げた。


「これが、まだ……完全ではない力だと……」


 神父はフラフラと立ち上がった。


「人は……神への信仰を失った……」


「神父?」


「……神の存在が薄れ、死霊の王が目覚めた。そして──」


 神父は、ライオンに跨るシルヴァーナを見た。


「自然が人間に牙を剥く……」


ドサッ。


 神父は再び膝をついた。


「もう、終わりだ……」


ザッ!!


 アンデッド達が、一斉に腰を落とした。


「後ろにいろ」


 ファントムは、セラを促した。


 シルヴァーナは、曲刀を構えた。


「来るっ!!」



 だが、その戦場へ向かっていたのは、死者だけではなかった。


 その数刻前。


 ──クラブ666の最深部。


 円卓を囲う6人の悪魔。

 その後ろ、玉座に座る悪魔の王。


 ジェシーがケタケタと笑いながら言った。


「ハハハ! 今度は、死に損ないどもが調子こいてやがるぜぇ、デヴィン」


 デヴィンの眉がわずかに動いた。


 オスカーは、腕を組んで天井を見上げた。


「フッ。ガラクタの次は、骨か」


 フロイドは、ジェシーを指差した。


「おい、ジェシー。そんなことよりオレのバイクを勝手に使いやがったな。くせえ匂いが取れねーじゃねえか」


「あん? バイク? そうだったか?」


 フロイドは頭を抱えた。


「ダメだ、こりゃ」


トントントントン。


 マニーは、指で机を叩きながら言った。


「Hey Yo とりあえず……あのくせえ匂いを放っちゃおけねえ。酒が不味くなるぜ」


 テレンスは頭にかけていたサングラスを机に置くとマイクの方を見た。


「そりゃ言えてる。やっちまうか?」


 マイクは、組んでいた腕を解き、机の上に置くと、後ろに座るデヴィンを振り返った。


 デヴィンは、ニヤリと笑った。

 ゆっくりと立ち上がると、マイクの肩に手を置いた。


「マイキー。マイキー。お前が連れて来た"可能性"ってやつは──」


 デヴィンは、もう一方の手をポケットに突っ込んだ。


「──いい喧嘩、持って来るじゃねーか」


 デヴィンはポケットから黒いダイスを取り出した。


「人間」


 ダイスを一つ、テーブルに置いた。


「アンデッド」


 もう一つ。


「ワイルドブラッド」


 3つ目。


「──大喧嘩、ってやつだ。あとは選ばれたお前らに任せるぜえ」


 ジェシーがケタケタと笑った。


「ハハ! いいねえ、デヴィン! 今回は、3人も参加出来るってことかぁ! 最高だ!!」


 デヴィンはそれに答えず、三つのダイスを手に持った。


「いくぜ」


 デヴィンは、ダイスを三つ弾いた。


キン。

キン。

キン。


 沈黙の中、三つのダイスがフロアを転がる。


カラン。カラン。

コロッ。


 ダイスが、止まる。


 フロイドが、目を見開いて呟いた。


「……嘘だろ?」


 漆黒の三つのダイス。


バン!


 ジェシーは机を叩いた。


「ふざけんな!」


 オスカーは、静かに天井を見上げ、テレンスとマイクは顔を見合わせた。


 ダイスが示した数字は──


「全部……"5"って……」


 全員の視線が、マニーに落ちた。


トン……。


 マニーの指が止まった。


「悪いな、ジェシー。この喧嘩──」


 マニーは、ニヤリと笑みを浮かべた。


「──全部オレが持ってくぜえ!!」


 マイクが口を開いた。


「決まりだな。マニー、フリークスとドールズを連れていけよ」


「お、優しいねえ、マイク。わかったぜ!」


「クソッタレが!」


ガンッ!


 ジェシーは、椅子を蹴り上げ出て行った。


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