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第54話 The Rage of Nature 〜月下に浮かぶ 赤髪のSign 狩りの時刻は 森が決めるTime 黒獅子吠えて 矢が降るNight Nature’s Rageが教会をBite〜

 暗闇の中に、赤い髪がフワリと浮かんだ。


 巡回兵の一人が目を凝らした。


 月明かりの下。


 黒いライオンの背に、赤い髪の女が跨っていた。


「ライオン!?……赤い髪……女──」


 言いかけた時、女の姿が消えた。


「……え? 消え──」


ザンッ。


 巡回兵の声が途切れた。


「おい! どうし──」


ドサッ。


 倒れた二人に、駆け寄る兵士。


「ひっ……」


 顔をあげる。


 眼前に、緑の瞳が光った。


「お前は──」


ズサッ。


「敵だ! 中にいるぞ!」


「ど、どこだ!?」


「今、赤い何かが──」


ドサッ。ドサッ。ドサッ。


 声を上げた兵士達が、次々と倒れる。


「ば、バケモンだ!?」


「落ち着け! 照明をつけ──」


グシャッ!


 言いかけた兵の胸を、巨大な黒い前脚が踏み潰した。


「ガオォォォ!!」


 咆哮を上げる漆黒のライオン。


「ひいぃぃぃ、ラ、ライオン!……」


「ひっ、怯むな! 囲め!」


 いつのまにかライオンの背に戻っていたシルヴァーナ。


「明朝、か」


 シルヴァーナは、兵士達を見下ろした。


「狩りの時を、獲物が決めるな」


ブンッ。


 曲刀についた血が、地面に散った。


「──浅はかだ。人間」


「囲めぇ! ブレードを持て! 一斉に──」


 その時。


ヒュンッ。タンッ。


 兵士の言葉が止まった。

 額には、矢が突き立っていた。


ヒュンッ。ヒュンッ。ヒュンッ。


 雨のように降り注ぐ矢。


タンッ。タンッ。タンッ。


 囲んでいた兵士達が、一斉に倒れる。


「上だ! 上から──矢が」


 兵士は、森の方を見た。


「今度は、なんだ……?」


 森が、動いていた。


 いや──押し寄せていた。


 まるで、森が侵食してくるかのように。


「オ、オオトカゲ!?」


 巨大なオオトカゲ。その背に組まれた矢倉から、長槍を構えたウサギ達が身を乗り出し、緑の目を光らせる。


 その前を、二足歩行のバシリスクの群れが突っ込んでくる。

 その背に、弓を構えるウサギ。


 さらにその後ろから、剣を握ったウサギ達が地響きを上げて突っ込んでくる。


「隊列を組め! 迎え撃つ!」


 後方からファルコン少佐の声が響いた。


パン! パン! パン!


ダダダダダダッ!


 ようやく銃声が響いた。


パァン!


 教会の二階窓。

 ラプター大佐の拳銃から放たれた弾丸が、矢倉の上のウサギを捉えた。


「ワイルドブラッドめ!」


 シルヴァーナは、ラプター大佐を睨みつけた。


ドドドドッ!


 その時、教会に蹄の音が迫った。


 帝国兵達は、さらに狼狽えた。


「まだ、くるのか!?」


 ラプター大佐は、目を見開いた。


「あ、あれは!? ファントム将軍……ゴースト……。本当に、生きていたのか……」


 ファントム将軍とその部下達は、馬をかって駆けつけた。


「シルヴァーナ、よせ! もう十分だ!」


 馬を止めたファントム。

 ファントム将軍の背にしがみついていたセラも叫んだ。


「シルヴァーナさん! やめて! これ以上、命を奪うのは!」


 ファルコン少佐は、構わずシルヴァーナに銃を向けた。


「死ね、ワイルドブラッド!」


 引き金を引こうとした瞬間、景色が反転する。


「なっ!?」


 いつのまにか背後に回り込んでいたファントムの部下がファルコン少佐を取り押さえた。


「ぐっ! 特殊部隊……ゴースト、か」


 シルヴァーナは、ファントムを無視してファルコン少佐に向かって歩き出した。


ズルズルズル……


 シルヴァーナは、曲刀を引きずりながらゆっくりと歩を進める。


「十分とは──」


 ファントムが叫んだ。


「シルヴァーナ、よせ! 争いでは、調和は生まれん! 森へ帰るんだ!」


 シルヴァーナの歩みは止まらない。


パァン!


チッ。


 ラプター大佐が放った弾丸がシルヴァーナの頬を掠める。


ズルズルズル……。


 構わず歩を進めるシルヴァーナ。


「調和とは──」


 セラが叫ぶ。


「やめて! お願い! これ以上恨みを買ってはいけない!」


 シルヴァーナは、ファルコン少佐の前に立った。


「恨み、とは──」


 ゆっくり曲刀を掲げたシルヴァーナ。

 ファルコン少佐の瞳が揺れた。


「よせ……」


 ファルコン少佐を見下ろすシルヴァーナの目が、緑に光った。


「貴様ら人間が、使っていい言葉ではない」


「シルヴァーナさん……ダメ……」


「──死ね」


 シルヴァーナが、曲刀を強く握った。


 その時──


ズゥンッ!


 教会が、揺れた。


 背後の兵士が叫んだ。


「アンデッドだああああぁぁ!!」


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