第53話 月下の急襲 〜街に来るNight 狩るための夜襲 準備はTight 鐘が鳴る前に 矢が飛ぶFight 月下に牙剥くWild Night〜
ブオオオオン!
爆音を轟かせて、丘を駆け上がるジェシーのバイク。
ウィーニーは、たまらずジェシーに話しかけた。
「ねえ、ジェシー。アジトには戻らないの?」
「あん? おお、ガキ! お前そんなところにいたのか?」
「え……忘れてたの?」
ブン!
ジェシーは、バイクを止めて街を見下ろした。
「ハハハ! 死に損ないどもの行き先確かめとかなきゃな!」
「た……確かに……。ジェシーは、ちゃんとしてるのか、狂ってるのか……よくわからない」
「あん? なんか言ったか、ガキ?」
「あ、いえ! 何も!」
カチカチカチ。
ジェシーは爪を噛みながら、ブラックゲートの方を見た。
「ふーん。南下してやがるな。たしか、その先は……9、7、5、6──教会か?」
「教会……」
一瞬、沈黙が落ちた。
「ハハハ! 死に損ないの考える事ぁ、わからんな!」
ジェシーは、ケタケタと笑った。
「よし! 帰るぞ、やろうども!」
「え、いや、ジェシー。誰もいないよ?」
「あん? そうか。たしかオレは、フロイドのバイクをパクって──まあ、いい。ところでお前ラップは上達したのか? オレ様が聞いてやる」
「え、ここで!?」
「ほら、あの死に損ないどもに向けてやってやれ!」
いきなりラップを振られて口籠るウィーニー。
「えっと……Yo……ええっと──」
「バカ。オレ様のを聞いてろ!」
トン。トトン。トン。トン。トトン。
ジェシーは、独特のリズムでバイクを指で叩いた。
ウィーニーは聞こえないように呟いた。
「結局、自分でやるんだ……」
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おおら、行くぜ Yo Yo
死に損ないども 行進ご苦労
骨だけ鳴らして 中身は空洞
王様連れても ビートはねえ
墓場に帰れよ ここはストリートだぜ
骨の軍団? ガラガラ ガラガラ
うるせえだけの迷惑集団
死んだ後まで 群れちまって
腐った王様 担いで威張んな
ストリートじゃ通用しねえ その威嚇
見てるぜ オレらデビルズが
てめえらの行進 すでに迷走
墓場へUターン それが正解
ガウ ガウ ガウ
待ってるぜ うちのヘルエナが
骨まで噛み砕く 残飯ども
吠えて逃げろよ 死に損ないども
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「う……うめえ。超独特だけど……さすがトップ6だ」
「よし、帰るぞガキ!」
「あ、うん。……結局、ジェシーは、何しに来たんだろう……」
「あん? なんか言ったか?」
「い、いえ! 何も言ってません!」
ブオオオオン!
ウィーニーを乗せたバイクは、炎の轍を引きながら、13番街に帰って行った。
──その頃、準備が進む教会では。
「大佐! 一通り装備のメンテナンスは完了しました。全て配給済みです」
「うむ」
「大佐! 装甲車の改造は順調です! あと数時間もあれば終わります!」
「そうか」
頷くラプター大佐に、ファルコン少佐が声をかけた。
「大佐。作戦は?」
「難しい作戦はいらない。装甲車で森を抜ける。歩兵は、なんとしてでも装甲車を守るんだ」
ファルコン少佐は、視線を森にやった。
「ワイルドブラッド。えらく戦闘能力の高いウサギにオオトカゲ……おそらく、他にも」
「ああ、分かっている。装甲車、1台でも森を抜けられれば、あとはなんとかなる。とにかく装甲車を守るんだ」
「は」
「作戦は明朝。日が登る前に出発する」
「わかりました」
ファルコン少佐が去ったあと、ラプター大佐の横に静かに神父が立った。
「ラプター大佐。シスターを見つけたら……」
「分かっておる」
「よろしく頼む」
ラプター大佐は、神父を見下ろした。
「それにしても、神父。随分あのシスターを気にかけておるようだが?」
「当然じゃ。自分の娘のように育ててきたのでな」
「それだけか?」
「他に何がある?」
ラプター大佐は、神父に背を向けた。
「他にも行方がわからなくなったシスターが何人かいたはずだが、森に逃げた娘のことばかり気にしているように思ったのでな」
「……」
「我々は明朝立つ。教会の守りを頼む」
そういうとラプター大佐は、テントの中に消えて行った。
──教会が静まり返った深夜。
ファルコン少佐は、ふと目を覚ました。
「ん?」
ド。ドド。
遠くで微かに聞こえた音。
「なんだ?」
ファルコン少佐は、ランプに火を灯した。
テーブルの上のコップに入った水が、わずかに波打った。
「振動……」
ドド。ドドド。
「まっ、まさか!?」
ファルコン少佐が飛び起きると同時に、教会の鐘が鳴った。
カーン! カーン! カーン!
「てっ、敵襲ー!!」
「なっ、なんだと!?」
見張り台の兵士が、叫んだ。
「敵襲! 敵しゅ──」
声が途切れる。
兵士はそのまま前のめりに倒れた。
ズドン!
ファルコン少佐の前に、兵士が落ちた。
「これは!? 矢!?」
ファルコン少佐は、南の森の方角を見た。
暗闇の中に、赤い髪がフワリと浮かんだ。




