第51話 消えた特殊部隊ゴースト 〜森を焼いた火 まだ消えねえPast 命令ひとつで壊れたTrust Ghostは消えたが罪は残る 同じ森へ軍靴が迫る〜
「ふわぁ……」
セラはまだフラつく頭を抑えながら、テントを出た。
静かな森。
近くで小川が流れる音、遠くで鳥の鳴き声が聞こえた。
「なんて……気持ちいいんだ」
「目が覚めたか?」
焚き火の燃えカスを拾うファントムが声をかけた。
「あ、はい。ごめんなさい、私……」
ファントムは、手を止め、横にあったテントの中に手を突っ込み、何かを取り出した。
「忘れ物だ」
「これは……」
「シルヴァーナにもらったんだろ?」
シルヴァーナにもらった牙剣、ファングソードだった。
「はい……」
セラはそれを受け取ると、慣れない手つきで腰に括り付けた。
「無茶はするな。戦場では、常にオレの後ろにいろ」
「戦場?」
ファントムはそれに答えず、森の奥へ消えて行った。
周囲にいた数人の解放軍の兵士達も、無言でファントムの後に続いた。
「あの人達は……」
「ほほ。元帝国軍人。ファントムの部下じゃな」
「ワイザー!」
「ほほ。元気そうじゃな」
「うん!」
「気をつけるのじゃ、セラ。始まるぞよ」
「始まる?」
その時、セラは背中に気配を感じ、ふと崖の上を見上げた。
キャンプの北側を守るように聳える崖の上。
見上げると、赤い髪が風に靡いていた。
セラを見下ろすシルヴァーナ。
シルヴァーナは、セラと目が合うと崖の向こうに姿を消した。
「シルヴァーナさん……」
一方、6番街の教会では──
「装備のメンテナンスを急げ!」
「小隊を組み直す! 早急にリストを出せ!」
壱番街から集結した本隊と教会を守る小隊は急ピッチで準備を進めていた。
「ダメだ! 銃火器の燃料が足りない!」
「仕方ない。メカの残骸からブレードを集めろ!」
兵士達は、ざわついた。
「おいおい。獣ども相手に、刀で対応しろってか……」
南の森からオルダムへの補給ルート確保。
それは、ワイルドブラッドとの戦争を意味する。
森を見つめながら、ラプター大佐は小さく息を吐いた。
「ファントム将軍……。森の連中などと組んで……復讐のつもりか」
「ラプター大佐。一体過去に何があったんですか?」
後ろに立つファルコン少佐が問いかけた。
ラプター大佐は、拳を握りしめた。
「仕方なかったんだ……あの時は──」
25年前──
「ファントム将軍! 本部上層部より、6番街南方の森林地帯を切り開き、兵舎を拡大せよとの命令です!」
「なんだと!? あの森は、ワイルドブラッドのテリトリーだ! 戦争を始めろとでも!?」
「本部によると兵舎が足りないと。兵士達の家族の住居も増やせとのことです……」
「くっ、現場を知らぬ本部のバカどもめ。そんなことをすれば、セントラの均衡が崩れる……」
「どうされますか?」
「来月、本部に出向いて掛け合ってくる。それまで、絶対に森に手をつけるな」
「はっ!」
その翌月──
当時少佐だったラプター大佐に一通の電報が届いた。
「ラプター少佐。上層部から、少佐宛にこれが」
「オレ宛?」
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ファントム将軍は重大な命令違反により
本部にて拘束した。
セントラの指揮権は少佐に移った。
早急に森の伐採を開始せよ。
厳命である。
帝国軍本部
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「な……将軍を、拘束!?……そんな、バカな……」
数日後──
バキバキバキバキッ。
南の森の大木が、1本。
また一本と切り倒されていた。
その様子を司令塔の最上階から見つめるラプター少佐は、拳を握りしめた。
「これで……よかったのか……」
その時、工事区画と兵舎にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
「うわあああぁぁぁぁ!」
「ワ、ワイルドブラッドだあぁぁぁ!」
獣達の突然の急襲に圧倒される帝国軍。
兵舎と拡張区画は、一瞬で戦火に包まれた。
「少佐! とっ止められません!」
「くっ! 本部へ、支援を要請せよ!」
「はっ!」
その時──
「ラプター! 貴様、これは一体、どういうことだ!?」
「ファ、ファントム将軍!? こ、拘束されたんじゃ……」
ファントムの後ろには特殊部隊ゴーストが並んでいた。
「そうか……。ゴーストが、助けたのか……」
「貴様! どういうつもりだ!」
「い、いや、違う……本部から……命令が……」
「馬鹿野郎!!」
ボゴッ!
ファントム将軍は、ラプターを殴り飛ばすとゴーストと共に炎の中に飛び込んだ。
──家族を、救い出すために。
その後、まだ空軍を有していた帝国軍の爆撃機により、現在の6番街は、焼け野原になった。
ワイルドブラッド達は南の森へ退避し、その跡地には、教会が建てられた。




