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第39話 変異点 〜雑魚じゃ終われねえ ここが転機点 測れねえ存在 壊すぜ限界線〜

 西の遺跡群へ向かって、全速力でヘルエナを駆るフリークス達。


 その先頭で、オスカーが静かに後方を振り返る。


「少ない。疲弊」


 ロベルトが自分のヘルエナをオスカーに寄せる。


「作戦に変更は無しかぁ?」


「ああ。選択肢は他にない」


「へーい。キツいのは、あんたら陽動組だぜぇ」


 オスカーは静かに頷いた。


「もとより、楽な仕事じゃない」


 ロベルトは、ウィーニーを振り返ってニヤリと笑った。


「そりゃそうだぁ」


 西の遺跡群。


 鉄塔が、夕暮れの空に黒く伸びていた。


 シャクールが息を吐いた。


「ようやく、スタート地点か」


「……」


 ウィーニーは何も言わず下を向いた。


 オスカーが、ゆっくり手を上げた。


「休んでる暇はない。行くぞ」


 ヘルエナが地面を蹴った。


 3頭が鉄塔に向かって一斉に駆け出す。


ガオォォォォ!!


 シャクールが叫んだ。


「ぶっ壊せ!!」


 ヘルエナの顎が、鉄塔の根元に噛み付いた。


ガギィィィン!!


 金属が軋む。

 もう一頭が反対側に噛み付く。


ガギィィィン!!


 鉄塔が、傾いた。


ズズズズズ……。


ドォォォォン!!


 地面が揺れ、砂埃が舞い上がる。

 その瞬間。


ズン。ズン。ズン。


 地下から、無数の赤い光が湧き出た。


《侵入者確認》

《殲滅開始》


「来るぞ!!」


 メカの群れが、フリークスに向かって押し寄せる。

 ヘルエナが迎え撃つ。

 背に乗っていたフリークス達は、次々と飛び降りた。


 ウィーニーはヘルエナの背の上で、拳を握った。


(戦う!……でも、オレに何が……)


 シャクールが振り返った。


「ウィーニー、お前はしっかり掴まってろ!」


 ヘルエナが激しく動く。

 ウィーニーは振り落とされないようにしがみつくのが精一杯だった。


(これじゃ……足手まといだ)


「嫌だ! オレも、戦う!」


 ウィーニーはヘルエナから飛び降りた。


「バッ、バカ!」


 ウィーニーの目の前にブレードレイダー。


「こいつ!?」


 ブレードレイダーが踏み込む。


 迫る刃。


 ウィーニーは顔を逸らす。


チッ。


 刃が、ウィーニーの頬を掠める。


(でも……避けれた)


 ブレードレイダーは間髪入れず、ウィーニーに飛び込む。


 その時。


ズドン!


 ヘルエナが、ブレードレイダーを踏みつけた。


 シャクールが叫ぶ。


「馬鹿野郎! どっかに隠れてろ、ウィーニー!」


 ウィーニーの瞳が揺れた。


「嫌だ!」


(オレだって……オレだって……!)


 その時、ウィーニーの背後で声がした。


「ガキィ、お前はこっちだぁ。ついてこいやぁ」


「ロベルト!」


 そのまま駆け抜けていくロベルト。


 ウィーニーは、その背中を追った。


 前方。

 地面にぽっかりと開いた穴。


 ロベルトは躊躇うことなく飛び込んだ。


 ウィーニーも、続く。


ドスン。


 案外低い。


 暗かった。


 でも。


 足元に、赤いライトが灯っていた。

 一定間隔で、奥へと続いている。

 まるで滑走路のように。


「……一本道か」


 ロベルトは迷わず走り出した。


「ついてこいやぁ」


 ウィーニーも走る。


ズン。ズン。ズン。


 奥から、規則正しい振動が伝わってくる。


「ロベルト、この振動は」


「コアだぁ。近い」


 天井も壁も見えない。

 声だけが、反響する。

 赤いライトだけを頼りに、二人は走り続けた。


 ──同じ頃、13番街。


 港に押し寄せたメカの大群とデビルズ達は乱戦。

 未だ椅子に座ったままのデヴィンは、肘をついたまま戦況を見つめていた。


 マイクの剛腕。

 テレンスの流れるようなステップ。

 マニーの高速連打。

 フロイドのヒットアンドアウェイ。

 そしてクレイジージェシーの野生動物のような暴力を前に、動かなくなったメカの山が出来る。


 しかし、それでも最後尾が全く見えないほどの大群が次から次へと押し寄せる。


 徐々に戦線とデヴィンの距離が縮まっていく。


 たまらずテレンスが呟く。


「これでも押されてんなぁ」


 フロイドが返す。


「意地でもデヴィンまで到達させねえぞ!」


ガツン!


 マイクの剛腕パンチに吹っ飛ぶメカ。


 一瞬、マイクとデヴィンの目が合った。


 デヴィンはニヤリと笑った。


「可能性。マイキーよぉ。面白えもん連れてきたなぁ」


 ──五番街。


 ファルコン少佐は、地面の亀裂を見た。

 ドレッドワームが、また這い出てくる。


「くっ……持ちこたえろ」


 後ろからヴァンガードの声。


「少佐! ヴァンガード、4名負傷!」


「クソ! デカすぎる! アークキャノンでも壊せない!」


 ファルコン少佐は、天を仰いだ。


「ここまで……か」


 地上が燃えていた。


 地下は、静かだった。


 やがて。


 ウィーニーとロベルトが行く道の先に、光が見えた。


 広い空間に出た。


 中央に、浮かぶ巨大な赤い球体。

 脈打っているかのように振動に合わせて光が点滅を繰り返している。


ズン。ズン。ズン。


「あれが……マザーコアか」


 その瞬間。


ズズズ……。


 地面が震え、球体の周囲の床が、割れた。

 そこから石と金属が混ざったような巨体。

 太い腕。

 頭部に、五つの赤い眼。


 動くたびに、地面にひびが入る。


《守護ユニット:コアゴーレム》

《侵入者確認》

《排除開始》


 ロベルトは、小さく息を吐いた。


「へえ。でっかいなぁ、おい」


 ゴーレムの目がロベルトを捉える。


《敵性存在:悪魔》

《脅威評価……高》


「光栄だねぇ」


 その目がウィーニーに移る。


《種族……不明》

《脅威評価……算出不能》


 ロベルトの眉が、わずかに動いた。


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