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第38話 決定点 〜変わる生存ライン 迷いは切り捨て 踏み込むデッドライン〜

ズン!


 13番街の端が、揺れた。


 クラブ666の最深部。


 黄金の玉座。

 キング・デヴィンは、腕を組み、目を閉じて座っていた。


 フロイドが呟いた。


「フリークス。そろそろアジトに着いたかな」


 マイクが、静かにグラスを傾ける。


「ああ。そうだな」


 ジェシーがケタケタと笑っている。


「今から応援に行ってやろうか、ハハハ!」


 マニーは、テーブルを指で叩きリズムを刻む。


「フリークス、オスカーいる、やれるっす。てか」


 その時、デヴィンがゆっくりと目を開けた。


「そろそろか」


 そう言うと玉座から立ち上がり、マイク達を見下ろした。


 テレンスが、見上げて言った。


「デヴィン?」


 デヴィンは、肩をゆっくり回した。


「ガラクタども。来るぞ」


 フロイドの眉がピクリと動いた。


「来るって……?」


 デヴィンは、ニタリと笑った。


「これは戦争だぞ? なあ、マイキー」


 マイクは何も言わずに立ち上がった。


 マニーの指が止まる。


「もしかして……?」


 ジェシーが笑った。


「ハハハハ! そういうこと?」


 デヴィンは、クラブの扉に向かって歩き出した。


「集めろ。全員だ」


 クラブの外で、かすかな地響きが始まっていた。


ズン。


 デヴィンは、扉に手をかけた。


 テーブルが、微かに揺れた。


 デヴィン達が外に出た時、すでにクラブの前には赤い人集りが出来ていた。


 遠くで砂煙が上がる。

 地響きが大きくなる。


ズン! ズン!


 港の空に、赤い光が無数に瞬いていた。

 メカの群れ。

 その数、見渡す限り。


 デヴィンが叫ぶ。


「おい! 椅子を持ってこい!」


 港に不自然に椅子が置かれる。


ドスン。


 デヴィンは、その椅子に座ると肘をついた。


「さあ、オレを動かしてみろ。ガラクタども」


 前方にいたトラッシュ達が一斉に一歩後ずさった。


「おい……あれ……とんでもねえ数だぞ!」


「ま、街が、襲いかかってくる……」


 フロイドが、拳を握った。


「なるほど。それで……フリークスだけ行かせたのか」


 テレンスが続けた。


「デビルズが全員出たら、ここが空になる」


 マニーの指のリズムが早くなる。


「……フリークスの突撃。無謀なんかじゃねえ……」


 ジェシーが笑った。


「ハハハハハ! 最初からキング・デヴィンの盤上にいたってことかぁ!」


 マイクは、拳を握りしめ迫るメカの大群を見つめた。


「しかし、これは……」


 デヴィンがニヤリと笑って言った。


「ああ。終わらねえぜ、この戦争」


 マイクは拳を握りしめた。


「デヴィン……」


 デヴィンは、指で自分の頭をトントン叩いた。


「ガラクタどもは先手を打ったつもりでいる。それがあいつらの唯一の"誤算"だ」


 テレンスが振り向いた。


「帝国軍が動けば、ガラクタも動く。それを待っていたってか」


 フロイドが続けた。


「合図。帝国軍とデビルズを同時に叩く。ってか」


 マニーの指が静かにリズムを刻む。


「オレ達に邪魔されるぐらいなら、最初からまとめて叩く」


 ジェシーはケタケタと笑った。


「ガラクタの分際で悪知恵が働くじゃねーか、ハハハ!」


 マイクは歯を噛み締めた。


「デヴィン。全部読んでたのか?」


「オレ達より悪い奴は許さねえ。それがデビルズ。フリークスがしくじったら、デビルズも終わりだ」


 マイクの瞳が僅かに揺れた。

 手の上で漆黒のダイスを転がしながらデヴィンは言った。


「全ては、可能性。そうだろ、マイキー」


 マイクは答えなかった。

 ただ、前を向いた。


コロッ……。


 漆黒のダイスが、デヴィンの手の中で止まった。


 六番街。


 フリークスの上に大きな影が落ちる。


「メカのカラス? いや、デカすぎる!」


《爆撃ユニット:メガレイヴン》

《爆撃位置:確定》


 オスカーが叫ぶ。


「ロベルト!」


「おうよぉ!」


 ロベルトは、ヘルエナを駆ってビルを駆け上がった。


《爆弾投下まで:3秒》


 シャクールが見上げる。


「ロベルト、何を!?」


 メガレイヴンの下部が開く。


《2秒》


 ロベルトはヘルエナの頭の上に乗る。


「さあ、飛べ! ヘルエナ!」


 ヘルエナは助走をつけ、屋上の縁から飛び上がった。


《1秒》


「よっしゃ!」


 今度はロベルトが飛び上がる。


「おおおらあああぁぁ!!」


ガシッ!!


「させねえわぁ」


 ロベルトは爆弾を抱えた。


《投下》


 ロベルトはニヤリと笑った。


「落ちるのは、てめえだぁ」


 外れた爆弾を抱えたまま、ロベルトは落下の勢いを殺さず──そのままメガレイヴンの背に飛び乗った。


《被害状況確認》


「てめえのことかぁ!」


 ロベルトは、さらに飛び上がると、抱えた爆弾をメガレイヴンに投げつけた。


ドゴォォォォォン!!


 メガレイヴンは真ん中から、粉々に弾け飛んだ。


 バラバラと落ちる破片を眺めながら、シャクールが呟いた。


「ロベルト……バケモンかよ」


 オスカーは、フリークスを見渡した。


「……ヒッター三人、戦闘不能。トラッシュ半数、離脱」


 沈黙が落ちる。


 ロベルトが、ヘルエナを撫でながら言った。


「随分削られたなぁ」


 オスカーは、腕を組んだ。


 ウィーニーは、動けないヒッター達を見渡した。


(オレが来なければ……)


「……オレのせいだ」


 シャクールが振り返る。


「うるせえ」


 シャクールは短く言った。


「今それを言う場面じゃねえ」


 路地の奥から、杖を突く音がした。


「ほほ」


 全員が振り返る。


 汚れた白い髭。

 日に焼けた顔。

 歯が一本だけ覗いている。


「ワイザー!?」


 ウィーニーは思わず駆け寄った。


「無事だったのか!?」


 ワイザーは、ウィーニーを遮った。


「今は話しておれん。二人とも南の森へ行こう。あそこなら安全じゃ」


 そういうとワイザーは背を向けた。

 セラも続く。

 思わずウィーニーも一歩踏み出す。


 だが、足を止めた。


 フリークス達の視線がウィーニーの背中に刺さる。

 セラは振り返った。


「何してるのウィーニー! 早く!」


 ウィーニーは、フリークス達を振り返った。


 無表情でウィーニーを見つめるフリークス達。


 ウィーニーは、セラに向き直り首を振った。


「オレは、行けない」


「え……どうして!?」


 ワイザーは何も言わずにセラの手を引いた。


「大丈夫じゃ。行こう」


「ウィーニー!」


 ウィーニーはセラに背を向けた。


「オレはデビルズ。やるべきことがあるんだ」


「な……何言ってるの?」


 ヘルエナに乗ったシャクールが、ウィーニーに手を伸ばした。


 ウィーニーは、ワイザーを振り返った。


「ワイザー。靴……ありがとう」


 フリークス達は、西の遺跡群を目指して再び走り出した。


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