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第37話 臨界点 〜No Skill, No God, Still in the Zone〜

 六番街。

 煙が、空を塗り潰していた。


 ウィーニーは教会の敷地に飛び込んだ。


「セラ!!」


 返事がない。

 レッドホークの砲座が燃え、帝国軍の兵士が倒れている。


「セラ! どこだ!!」


ドゴォォン!!


 砲撃が、教会の壁を抉った。

 石と土煙が降り注ぐ。

 腕で顔を覆いながら、ウィーニーは走った。


「シスターの宿舎は……あっちか!」


 扉に手をかける。


「セラ!!」


「……ウィーニー?」


「セラ!! どこだ!?」


「ここ……!」


 扉が歪んで開かない。

 肩から体当たりする。


ガンッ!

ガンッ!

ガンッ!


 扉が吹き飛んだ。

 煙の中、セラが壁に背をつけて座っていた。


「ウィーニー……どうして?」


「立てるか!?」


 セラが視線を上げた。

 天井が、軋んでいた。


ミシッ。

ミシミシッ。

ドゴォォン!!


 衝撃で、天井が落ちた。

 ウィーニーはセラを抱えて飛び込んだ。

 瓦礫が降り注ぐ。

 粉塵が晴れる。


 二人は、無事だった。


 セラが、ウィーニーを見た。


「……ウィーニー」


「走れ! 行こう!」


 ウィーニーはセラの手を引いて走った。


カツ。カツ。カツ。


「クソ! ハウンドトラッカー!」


 赤い単眼が、路地の奥に光る。

 一体、二体、三体。


「こっちだ!」


 細い路地に飛び込む。

 ハウンドトラッカーが壁を走りながら追ってくる。

 角を曲がった瞬間。


ズドン。


 路地の先。

 巨大な影が、ゆっくりと振り返った。


「ドレッドウォーカー……」


 逃げ場がない。

 その瞬間。


ピピッ。


 足元で、小さな電子音。


《捕縛システム:起動》


 地面から青白いレーザーが走った。

 ウィーニーの足首、腰、両腕に巻き付く電磁拘束帯。


「くっ……動けない!」


「ウィーニー!」


 セラが駆け寄ろうとした。

 その瞬間。


ピピッ。


 セラの周囲にも、青白いホログラムの檻が展開した。


「きゃっ!」


 壁のように立ち上がる光の格子。

 セラは、その中に閉じ込められた。


「セラ!!」


《優先捕縛個体:確認》

《種族……再解析》

《人間……否》

《神族……否》

《判定……不能》

《優先度:最大》


《付随捕縛対象:確認》

《種族……再解析》

《判定……不能》

《同時確保:実行》


 その時。


ガオォォォォォ!!


 咆哮が、路地を震わせた。


 ヘルエナが、上空から飛び込んできた。


 巨大な顎が、ホログラムの檻を噛み砕く。


ガリッ!!


 光の格子が、砕け散った。

 拘束帯が、外れた。

 ヘルエナの背から、影が飛び降りる。


「ロベルト!!」


 ロベルトはウィーニーを一瞥した。


「……邪魔だ。どけ」


 セラがウィーニーの腕を掴んだ。


「ウィーニー……あ、悪魔っ!?」


 それだけ言うと、ドレッドウォーカーに向かって踏み込んだ。


 フリークスの悪魔達が路地に降りる。


 シャクールがウィーニーの前に立った。


「この、バカ野郎!」


「シャクール……ごめん……」


「後で説教だ。今は死ぬな」


 シャクールは炎を両手に灯してハウンドトラッカーに向かった。


 その時。


ズン。ズン。ズン。


 地面が波打つように揺れ始めた。

 煙の向こう。

 赤い光が、無数に瞬いていた。

 その群れの中に、見たことのない影があった。


 二足歩行。


 ドレッドウォーカーより細く、速い。

 両腕に無数の細い刃。

 白銀の装甲。

 流線型のフォルムに、赤い光のラインが走る。

 三つの赤い眼がフリークス達を捉えた。


《強襲ユニット:ブレードレイダー》

《高速戦闘特化》

《目標:殲滅》


 ブレードレイダーが、地面を滑るように一瞬で間合いを詰めた。


「速っ!!」


ザシュッ!


ズシャッ!


 フリークスのトラッシュ達が切り付けられる。


「散れ! 固まるな!!」


「グハァ!……」

「ウグッ……」


 悪魔達が次々と傷を負っていく。


 ウィーニーは拳を握った。


 セラは、ウィーニーの腕を離した。


「ウィーニー……なんで……悪魔と……」


「オレ……何も出来ねえ……!」


ザッ。


 その時、ウィーニーの前に、影が立った。

 黒いジャージ。

 3本のゴールドラインが光る。


「オスカー……」


「お前ら、全員下がってろ」


 その声に、フリークス達は、後退した。


 オスカーは身を低く構えた。


「オスカー……何を?」


「ガキ、速いと言ったか?」


「え」


 オスカーはニヤリと笑った。


「速さ、など存在しない」


「え?」


 オスカーが踏み込む。


 ブレードレイダーが、刃を振り下ろす。


「当たる!」


 その瞬間、オスカーは身を翻しブレードレイダーの後ろへ回り込んだ。


 同時に、ブレードレイダーが真っ二つに割れた。


「え!?」


 手刀──


 次々とオスカーに襲いかかるブレードレイダーは、近づくと同時に真っ二つに切断される。


 最後のブレードレイダーがオスカーに向かって飛んだ。


 振り上げた刃。


ピッ。


 その瞬間、ブレードレイダーの体に線が走る。


 その刃が届く前に、空中で割れた。


 シャクールが、呟いた。


「デビルズ・アイ……」


 オスカーが、振り返った。


「速さなど存在しない。未来が読めればな」


「未来……」


 ロベルトが叫んだ。


「まだだ! まだくるぞ!!」


 上空に轟音が響いた。


 シャクールの口が震えた。


「どんだけ来んだよ、こいつら!?」


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