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第35話 開戦の咆哮 〜満場一致はDead 異論こそがAsset 偶然に見せた必然 それがKingの采配〜

「いくぞ!」


 石畳を砕く勢いで、ヴァンガード特殊部隊が大通りへ雪崩れ込んだ。


 同時にメカが反応する。


《敵襲》

《種族:人間》

《組織:帝国軍》


 ウェブクロウラー、ハウンドトラッカーが襲いかかる。


「蹴散らせ!」


 ヴァンガード達は走りながら、銃口をメカに向ける。


 パルスライフルの銃口が青白く脈打ち、次の瞬間、光の弾が一直線に走った。


キュン! バシュッ!


 閃光がウェブクロウラーの胸部装甲を貫く。

 赤い一つ目が激しく明滅し、脚がもつれたまま石畳に叩きつけられた。


 ファルコン少佐が叫ぶ。


「次! シグナルブレイカーだ! 等間隔!」


 ヴァンガード達は、安全ピンを抜いた。


キンッ!


「投げろ!」


ドン!


 鈍い音と共に、石畳に電流が走る。


《敵襲》

《マザー……コア……電磁》

《連携……不可……各個撃……》


 メカのシグナルが乱れる。


 ファルコン少佐がニヤリと笑った。


「よし! 効いてる!」


 その時。


ズドン!


 路地から、巨体が歩み出る。


「ドレッドウォーカー! 来るぞ!」


 ドレッドウォーカーの腕部砲筒が赤熱する。


ギュオオオ……。


 ゆっくりとヴァンガード達に照準を合わせる。


「まずい!」


 ファルコン少佐は、ドレッドウォーカーの足元に向かって滑り込む。


 ファルコン少佐の右腕アタッチメントが展開し、大きな拳を形作る。


「うおおおぉぉぉ!!」


ズゴンッ!


 足が大きく抉れ、ドレッドウォーカーはバランスを崩した。


 次の瞬間。


ドゴォンッ!!


 バランスを崩したまま砲筒が火を噴いた。


 爆音と同時に、赤黒い閃光が一直線に走る。


 空気が裂け、遅れて衝撃波が石畳を跳ね上げた。


 着弾した壁が、一瞬で内側から吹き飛ぶ。


 ファルコン少佐は大通りの先を指差す。


「ドレッドウォーカーは後回しだ! 止まるな、突き当たりまで駆け抜けろ!」


 連携が取れないメカ達は、ヴァンガードの前に次々と倒れていく。


「後半分だ! ドレッドウォーカーは!?」


「追ってきています! 4、5、6体!」


「いいぞ! 全部誘い出せ!」


 その時、ファルコン少佐の顔に影が通りすぎた。


 上空。


 黒い金属の翼。

 嘴のように尖った機首。

 中央に赤い単眼。

 翼の下に砲門。


《空域制圧ユニット:ストームレイヴン》

《地上部隊との同期:完了》


「クソ! 上だ! 気をつけろ! カラスだ!」


ダダダダダダダッ!!


 雨のように降り注ぐ弾丸。


キキキキンッ!


 ヴァンガードのアーマーが弾を弾くも、圧力で地面に押し付けられる。


「カラスを狙え! 上空にシグナルブレイカーは届かん!」


「クソッ!」


 地上と上空に撃ち分けながら体勢を立て直すヴァンガード。


「ドレッドウォーカーは!?」


「14体! 確認!」


 ファルコン少佐は、振り返った。


「ここでいい! アークキャノン用意!」


 ヴァンガード達は一斉に振り返ると、背負っていたアークキャノンを構えた。


「チャージ!」


 アークキャノンの砲身についたリングが一つずつ点灯する。


「引きつけろ……」


ドスンッ!


 ドレッドウォーカー達が迫る。


「チャージ完了しました!」


「まだだ!……あと少し……まだだ……」


ドスン!


 ドレッドウォーカーは歩きながら、その砲身を向けた。


「少佐?」


「まだだ……」


 ドレッドウォーカーの砲身が赤く光る。


ギュイイイイイン……


「少佐!」


「撃てええええぇぇぇぇ!!」


 次の瞬間。


 アークキャノンの砲身に並んだリングが、一斉に白熱した。


ギュオオオオオオオッ!!


 空気が震えた。


 石畳が、ガタガタと跳ねる。


 そして──


ドォォォンッ!!


 極太の蒼白い閃光が、大通りを一直線に貫く。


 先頭のドレッドウォーカーの胸部装甲が弾け飛んだ。


 赤い単眼が砕け、巨体が大きくのけぞる。


 続く機体もまとめて光に呑まれた。


ドゴォォンッ!!


 腕部砲筒が吹き飛び、脚部が捻じ切れ、巨体が次々と傾く。


ズシィンッ!!


 一体が石畳に倒れ込み、後続も巻き込んで崩れた。


《装甲……崩壊》

《行動……不能》


 煙の中、赤い単眼が次々と消えていく。


 ファルコン少佐が息を切らして言った。


「はあ、はあ……やったか?」


 ヴァンガードの一人が叫んだ。


「ドレッドウォーカー殲滅! やりました!」


 ファルコン少佐の顔に笑みが溢れる。


 その時。


「少佐!」


 ヴァンガードが指差した方向。


「なっ!?」


 六番街の空が赤く染まる。

 同時に、壱番街の方角で警報が炸裂した。


「バカな……二ヶ所同時だと?」


 次の瞬間──


ゴゴゴゴゴゴ……


 地面が大きく揺れた。


「なんだ!?」


 大通りの石畳が、ボコンッ!と大きく膨らむ。


「散れ!!」


 次の瞬間──


ドガァァァンッ!!


 石畳が爆ぜ、土砂と瓦礫を撒き上げながら、超巨大な影が地中から突き上がった。


 黒鉄の節が連なった、ミミズのような巨体。


 節の隙間から赤い光が脈打ち、先端には何重もの回転刃が並ぶ円形の口。

 その中心で、赤い単眼がギラリと光る。


ギュルルルルルッ!!


 巨体が身をよじるたび、地面が波打つ。


《地中殲滅ユニット:ドレッドワーム》


 ヴァンガード達の顔が凍った。


「……まだ、こんなのがいやがったのかよ」


 13番街の港。


 フリークス達は、コンテナの上から街を眺めるオスカーとロベルトを見上げていた。


 オスカーが、小さく息を吐いた。


「ふう。Time to War(戦争の時間)だ」


 ロベルトが、いたずらっぽく笑った。


「へへ、今回の戦争、唯一の反対者。大丈夫かぁ?」


 オスカーが静かに笑った。


「フッ。計算外とでも?」


 ロベルトはニヤリと笑ってコンテナを飛び降りた。


 オスカーがゆっくりとフリークス達を振り返った。


「時間だ」


 フリークス達が背筋を伸ばす。


「デビルズ。2000年ぶりの戦争だ」


 フリークス達は胸を叩いた。


ドン!


「その先陣を、フリークスが務める」


ドン!


「聞いての通り、オレが唯一この開戦に反対したトップ6だ」


ドン!


「勘違いするな。オレは"可能性"を示したまで。満場一致なら可能性は消滅していた」


ドン!


「そして、ダイスが選んだのが、このオスカー」


ドン! ドン!


「この戦争──」


 オスカーは静かに目を閉じた。


 沈黙が落ちる。


「勝った!!」


ドン! ドン! ドン!


────────────────────

YO

オレはオスカー MCナンバー2 デビルズオラクル

全局面 既読 詰み筋も活路も全部スキャン済み

このDevilsEyeに 隠せる盲点はない

過去も現在も未来も 全部 視野内

反対した? ああ それが最善手

満場一致はDead 異論こそがAsset

可能性という変数 計算の外側にある誤差

その誤差すら オレの式には織り込み済みだ


聞け フリークス

デヴィンがダイスを弾いた瞬間

オレには見えていた 出目が2になる軌道

偶然に見せた必然 それがKingの采配

確率論を超えた領域 それがDevilsの格

満場一致は死 異論が命 それが原則

オレが反対したのは 否定じゃない

可能性を 盤面に残すための 一手

2000年ぶりの戦争

その先陣を "出来損ない"が務める

笑えよ 笑えるうちに

歴史はな 観客席じゃなく

フィールドに立った奴が 書き換える

人間が来る メカが来る

神が来る 魔王が来る

DevilsEye 全部スキャン済み

詰み筋 既に確定

お前らは走るだけだ

フリークス 盤面は整った 行くぞ!

────────────────────


 オスカーの開戦を告げるラップ。

 ウィーニーは身震いした。


 その瞬間──ロベルトが叫んだ。


「ヘルエナァァァ!! 来いやぁ!!」


(ヘル……エナ?)


ゴゴゴゴゴゴ……ドゴォォォン!


「なっ、なんだ!?」


 地面が裂け、巨大な影が飛び出す。


(1、2、3……なっ、なんだコイツら!? デ、デカい!!)


 ウィーニーは思わず後ずさる。


「い、犬!?……いや、これって……ハイエナ!?」


 肩の高さは、コンテナよりはるかに高い。

 全身を覆う灰色の毛並みは、焦げて捻れている。

 首元に、ドクロの首輪。

 皮膚の裂け目から、炎が立ち上がる。

 一歩踏み出すたびに、足の下で石畳が割れた。


 シャクールが小さく言った。


「ヘルエナ。デビルズのペットだ」


「ぺ、ペット!?」


 3頭のヘルエナは、フリークス達を見渡すと、低く唸った。


グルルルルル……。


 炎が、裂け目から大きく噴き上がる。


 オスカーとロベルトが、ヘルエナの背に飛び乗った。


「乗れ、フリークス」


 悪魔達が次々とヘルエナの背に乗る。


 シャクールは、ウィーニーを振り返って手を伸ばした。


「お前もだ、ウィーニー」


 ウィーニーは、駆け上がるように登る。

 シャクールの後ろに座った。


「行くぞ」


 オスカーの声。


 呼応するようにヘルエナが、咆哮した。


ガオォォォォォォォォ!!


 炎が、夜明けの空に舞い上がった。


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