第32話 心中 〜お前と心中する作戦 正面突破のワンホーン 一点突破の開戦〜
港に立つ、二つの影。
MCナンバー2、オスカー。
次期チャンピオン昇格が囁かれるロベルト。
「オスカー。あんたとゆっくり話すのは久々だぁ」
「そうだな。ロベルト」
ロベルトは、オスカーの顔を覗き込んだ。
「MCナンバー2、デビルズ・オラクル。先読みの支配者と言われるあんたの作戦、聞かせてもらおうかぁ?」
オスカーは、静かに笑った。
「フッ、お前と心中する作戦か?」
「冗談キツいぜぇ、オスカー。あんたとだけはごめんだなぁ」
「フッ、そう言うなよ。過去のことは水に流したはずだろ?」
「ああ、そうだなぁ。で、どう攻めるんだぁ、ガラクタどものアジトを。あんたのことだ、何も考えてないはずはねえ」
オスカーは、小さく息を吐いた。
「正面突破」
ロベルトは目を見開いた。
「へえ、あんた、らしくねえなぁ」
「こっちは圧倒的少数。それしか方法がない」
ロベルトは首を傾げた。
「逆じゃねえか、普通? 数で潰されるぜ」
オスカーは、ロベルトの肩を軽く叩いた。
「突破するのはお前だけだ、ロベルト」
ロベルトは、思わず笑った。
「ハハ、オスカー。お前まだオレのこと嫌いなんかぁ? オレに死んでこいってかぁ」
オスカーは、ロベルトの顔を真っ直ぐ見た。
「フリークス。ガラクタの軍隊を相手に戦力になるやつは、お前だけだ」
「どうすりゃいいんだ?」
「西の遺跡群。昔、帝国軍どもが建てた鉄塔がある。その直下がガラクタどものアジトへの入り口だ」
「それで」
「鉄塔を壊す。後はオレ達が引きつける。お前はその間に最深部へ突入してAIを叩け」
ロベルトは大きく息を吐いた。
「ふう。あんたにしちゃ随分荒っぽい作戦だぁ」
「それしかない。それが出来るのも、お前しかいない」
ロベルトは、一瞬黙った。
「そうかい。わかったよ」
「で、いつやる?」
オスカーは、ニヤリと笑った。
「街が騒がしくなる。それが合図だ。準備しておけよ」
「おうよぉ」
陽が落ちた頃。
六番街の教会に、兵士の怒鳴り声が響いていた。
「おい! 2階には、インペリアルガトリングを設置しろと言ったはずだ! 急げ!」
「馬鹿野郎! レッドホークは全方位に設置だ!」
兵士達を修道院の居室から見つめるセラは、ため息を吐いた。
「教会にガトリングガン、機関砲……。もうここは祈りの場所じゃない……」
セラが窓から兵士達を見つめていた時、居室のドアが静かに開いた。
「セラ」
「神父様……」
神父は、静かに部屋に入ると窓の外を一瞥した。
「気持ちは分かるが、今はこれが必要なことだ」
セラは、唇を噛んだ。
「必要? 祈りの場所に機関砲を置くことが?」
「街を守るためだ」
「誰の街を? 誰のための守りですか?」
神父は、セラの言葉を受け流すように続けた。
「心配しなくていい。我々の後ろには神がいる。何も恐れることはない」
セラは、窓の外に目を向けたまま言った。
「その神様は、今夜もここを見ていてくれるんでしょうか」
神父は答えなかった。
静かにドアを閉めた。
セラは、しばらく動けなかった。
「神が……ついている」
その言葉が、空虚に響いた。
窓の外。
レッドホークの砲身が、夜空に向いていた。
その先の闇に、小さな赤い光が瞬いた。
セラは気づかなかった。
同じ頃──五番街。
ウィーニーの住んでいたボロアパートの前を、メカ達が休みなく行き交うようになっていた。
トン。トン。トン。
ウィーニーの部屋には、まだネズミのロッキーのリズムが響いていた。
窓の桟に腰掛け、街をぼーっと眺める太った猫は、ため息を吐いた。
「ウィーニーの野郎。今頃、どこかで野垂れ死んでやがるかな……」
──そこにいるのもスタイル
──でもオレは違う道を選んだだけ
ウィーニーの最後の言葉が、猫の頭に浮かぶ。
「ふん。生意気言いやがって、便所掃除の癖に!」
トン。トン。
ロッキーが、尻尾でリズムを刻む。
「なんだよ、ネズミ! ここで待ってても、ウィーニーは帰ってこねえぞ! もう死んでんだからなぁ!」
トン。
「オレも森へ帰るかなぁ……いや、今更帰ってもなぁ……」
トン。トン。
「お前も、ここを離れた方がいいぜ、ネズミ。戦火に焼かれちまう前によぉ……」
トン。
「ラップ……かぁ」
トン。トン。トン。
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Hey Yo
ウィーニー てめえどこ行った 死んだか?
オレが言った通りか ざまあねえ
ラップで世界を変える? 悪魔と一体 何する
勘違い 便所掃除 てめえに何が出来る
世界は変わらねえ 変わるはずねえ
共存 共栄 不可能の 虚栄 くだらねえ
戻ってこいよ ネズミがお前を待ってるぜ
ボロアパート ここで ネズミとビート
それが お前に お似合いだ
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猫は舌打ちした。
「ちっ、つまんねえ」
その時、遠くで、銃声が聞こえた。




