第31話 戦の香り 〜オスカーが握る命運 反対者の指揮 叩き潰す気運 いまだ上がらず〜
クラブ666の前には、悪魔達が集まっていた。
トップ6の六人は、デビルズ達と向かい合うように立ち、デヴィンを待っていた。
テレンスが小さく呟く。
「フリークスを行かせるのは意図があるとして……その指揮官をダイスで選ぶってのは、どうにも理解できねえ」
フロイドが反応する。
「確かになぁ。意図があるなら、指揮官も選べばいい……。マイク、どう思う?」
マイクは、漆黒の夜空を見上げて言った。
「わからねえ。わからねえが、デヴィンは何かを信じてる。適当じゃねえってことは、お前らも知ってるはずだ」
マイクは視線を落とし、目の前の悪魔達を見渡した。
「誰が行っても勝てる。それがデビルズだ」
ジェシーが笑った。
「ハハ、オレにならねえかなぁ! ガラクタぶっ壊すのは、快感だぜえ!」
その時、クラブ666の扉が開いた。
「集まったか」
悪魔達は一斉に黙った。
デヴィンが、トップ6の中央に立った。
群衆の中のウィーニーが呟く。
(キング……デヴィンとトップ6……)
マイクが一歩歩み出る。
「ストリートデビルズはこれより"ガラクタ"と戦争する。聞いてるな?」
デビルズ達の視線が一斉にマイクに向いた。
「オレ達は、ストリートデビルズだ──」
マイクの視線が、一瞬ウィーニーに落ちる。
「何かに狙われるなんてことは、あっちゃいけねえ。それが開戦の理由だ」
ウィーニーは、唇を噛んだ。
「ガラクタのアジトは西の遺跡群。そこを叩き潰す。徹底的に、な」
シュガーが一歩歩み出た。
「総力戦やね」
マイクが首を振った。
「攻め込むのはフリークス。それ以外は、待機だ」
周囲がざわつく。
視線が、ロベルトに移る。
「フリークスだけで、ガラクタどものアジトって……」
「自殺行為じゃねえか。デヴィンは、やっぱりあのガキが気にいらないのか?……」
「ロベルトへのとばっちりがすごいな……」
ロベルトは、何も言わず一本角を撫でていた。
マイクは周囲の反応に構わず続けた。
「今回の指揮官は、ダイスで決める」
さらに周囲がざわつく。
「おいおい、なのに指揮官はダイスで決めるって……適当過ぎじゃねえか?」
「まるで嫌々戦争するみてえじゃねーか」
マイクはダイスを差し出し、デヴィンを振り返った。
デヴィンは何も言わず前に出た。
再び沈黙が落ちる。
ウィーニーは息を飲んだ。
(このダイスで、オレ達の指揮官が決まる……)
全員の視線が、デヴィンの持つダイスに注がれた。
デヴィンはゆっくりと手を伸ばし、その親指を弾いた。
その瞬間、デヴィンは──ニヤリと笑った。
キンッ!
ダイスは、高々と夜空に舞い上がった。
ダイスの行方を目で追うデビルズ達。
ズサッ。
ダイスは、転がることなく地面に落ちた。
マイクの瞳が一瞬揺れた。
「今回の作戦の指揮官は──MCナンバー」
静まりかえる港。
「……2。オスカー、だ」
全員の視線が、今度はオスカーに向いた。
オスカーは、ゆっくり目を閉じて言った。
「なるほど」
テレンスが、わずかに眉をひそめた。
「……マジかよ」
だが、それ以上は言わなかった。
フロイドが、口元を歪めた。
「……ああ、そういうことかよ」
ジェシーは、ケタケタと笑った。
「ハハ! オレじゃねえのかよ!」
マニーが、小さく呟いた。
「……偶然、か?」
オスカーは、ゆっくりと目を開いた。
その視線が、一瞬だけデヴィンに向く。
「……そうか」
小さく息を吐いた。
「それなら、それでいい。やるか」
デヴィンは、静かに笑った。
「"可能性"。面白えなぁ」
ウィーニーの胸がざわついた。
(……マイクじゃ、ないのか)
ほんの少しだけ、胸の奥が沈む。
その感覚を、うまく言葉にできなかった。
その頃、五番街では──
寝床の半壊ビルに戻ったワイザーは、空を見上げていた。
「やけに空が騒がしいのう」
夜空を行き交う無数のドローン。
「まるで巣を突つかれた蜂みたいじゃの」
ダダダダダッ!
その時、大通りを無数の影が駆け抜けていった。
4本足に赤い一つ目。
索敵、追跡特化の犬型のメカ。
「ハウンドトラッカーか。探しておるのぉ」
そのうちの一体が、ワイザーに気付いて立ち止まる。
カツッ。
「ほほ」
暗闇のビルの中へ。
カツ、カツ。
ハウンドトラッカーが、ゆっくりとワイザーに近づく。
ギィ……。
目の前。
首を傾げ、ワイザーの顔を赤い光が照らす。
《生命反応:感知》
ワイザーはニヤリと笑った。
「ほほ、なんじゃね?」
《種族……解析……》
「ホームレスなどにかまっておる場合かね?」
《種族……不明……再解析……》
「ほほほ、ホームレスは、人間ですらないと?」
《種族:人間》
《脅威:少》
《優先度:低》
「ほほ」
《目標座標:13番街》
《最短経路:算出中……》
ハウンドトラッカーは、そのまま街の闇に消えて行った。
「戦の香り。じゃが、メカどもは帝国軍の基地は把握しておろう……。一体何を探しておる?」




