第27話 挑戦のビート 〜強くなれ 弱者じゃ世界は変えれねえ〜
テレンスが、声をかけた。
「行けるか、シャクール?」
シャクールは、下を向いたまま静かに親指を立てた。
「よっしゃ! ヒッターのシャクールが、果敢にキャプテンへ反撃だ! Spin Da Shit!」
シャクールは小さく首を振った。
「Yo、いくぜ」
────────────────────
Yo 長えんだよ 終わったか
女の話は中身がねえ 一つも刺さらねえから
寝そうだったぜ
ロベルトいねえから強気だな お前
相手にされてねえ女は惨めだぜ その目
────────────────────
シュガーは、笑みを浮かべて手を広げた。
────────────────────
お前は上なんて語れねえ なんでか教えてやるから 聞いとけ 甘党
人の成果 かすめとって 笑う盗人
便所掃除 いじめて 笑う 超小物
それでチャンピオン挑戦? 見えてる天井
────────────────────
「おっほ! シャクールもやるじゃねえか!」
「意地を見せろ、シャクール!」
────────────────────
ドールズ? そうだな 人形がお似合いだ
実力じゃねえ 毒仕込んで 死ぬのを待つだけ
呪いの人形 それ本当にデビルズ? 笑わせるな
ところで 女の悪魔の力見せるって?
お前のヒッター、全員男だろ どこ行った女?
ドールズ? お前がいなきゃ 誰がここに立てる?
フリークス ロベルトいなくても オレが立つ
────────────────────
シュガーが一瞬、眉を動かした。
────────────────────
よかったな、ロベルトいなくて いたら惨敗
紅一点? いやお前はただの勘違い
ウィーニーがゴミ? ゴミすら背負えねえビッチ、何言ってんだ?
ロベルトは背負った デビルズの意思
フリークスが継いだ デビルズの正統
キャンディ舐めすぎて デビルズまで舐めちゃってんじゃねーか
チャンピオン 相応しいのは ワンホーン
小狡いてめえを上げたら デビルズ下がる
分かってるから てめえはキャプテン止まりなんだよ クソッタレ!
──それでも立ってる オレがフリークスの証明だ
────────────────────
「うおおおぉぉ! シャクール! 返しやがったぁ!!」
「フリークスもやるじゃねえかぁ!!」
トップ6達は顔を見合わせた。
しかし、シュガーは身を翻し、テレンスのコールを待たずに追い討ちをかけた。
────────────────────
AHA……ええやん
やっと"自分"で喋りよったなぁ
せやけどな──遅いねん
"証明"? 笑わせんな
ここはな 結果だけが全てのステージや
背負うた? 継いだ? 吠えた?
全部ええ言葉や でもな──
それで"上がれたか?"って話やろ
ロベルトの影 抜けたつもりでおるんやろ?
でもなぁシャクール
あんたまだ"影の形"しとんねん
光当たって初めて"形"になる雑魚が
一人で立ってるつもりになるなや
ウィーニー? フリークス? デビルズ?
背負う覚悟は認めたるわ
せやけどな──
"背負って潰れる奴"は ただの荷物や
AHA
証明したなぁ
お前は上がれへん側の悪魔やってな
ほな、終わりや
ここはアタシのステージ
次は来んなや "証明くん"
────────────────────
「トドメェェ!! シュガー、ムキになってるぞぉ!」
「シャクール! もう一回返せ!! やったれぇ!!」
クラブ666の大歓声は、一晩中地面を揺らした。
一方──
「そいつは命懸けでフリークスが奪ったもんだなぁ。返答によっちゃ、お前を殺さなきゃいけねえぇ。答えろ、ガキ」
ウィーニーの瞳が揺れた。
「オレは……教会に助けられた。この物資は教会に届くはずだった。オレは、この物資を……教会に届けたい……」
「そうか」
ロベルトは、一言だけ言うと、物資の中からパンを取り出し、ウィーニーに差し出した。
「食え」
ウィーニーは、ロベルトを見上げた。
「え?」
「食え。悪魔はこんなもの食わねえからなぁ。これはデビルズがお前のために奪ったもんだ。食え」
ウィーニーは、下を向いた。
「いや……それは……」
ロベルトはウィーニーの髪を掴んだ。
「っ痛……何を……」
「聞こえなかったかぁ? これはお前の食料だ。食え」
そう言うと、ロベルトはウィーニーの口にパンを無理矢理突っ込んだ。
「がっ……うぐっ、ぐっぐ」
「食え。ほら食え、ガキ」
「ぐっ、や……やめ……うぐぐ」
ゲホォ!!
たまらず、ウィーニーは吐き出した。
「吐くな。それが"現実"だ。拾って食え。貴重なんだろうがぁ」
「ゲホッ、ゲホッ……な、何すんだ……!?」
ロベルトは、ウィーニーを見下ろした。
赤い視線が、ウィーニーに突き刺さる。
「これを運んで、何が変わる?」
「何がって……」
ロベルトは、再びウィーニーの髪を掴んで顔を寄せた。
「これを教会の人間どもにやって、何が変わるのかと言ってるんだ」
そう言うと、ロベルトはウィーニーを瓦礫の山に叩きつけた。
「っぐはっ!」
「教えてやる──お前が、この食料を人間に渡しても何も変わらねえ。一日は食にありつけるだろう。だからなんだ?」
「……だから、なんだって……?」
「オレ達が奪わなくても、いずれこの供給は止まる。そうなったらどうする? その次の日は。そしてその次は」
「……それは……」
「変わらないんだよ、お前がこの物資を返そうが、何をしようが、なぁ」
「……」
「だったらお前が食え。奪ってでも食って、お前が強くなれやぁ」
「ロベルト……」
「ガキ。貴様はデビルズだ。もう後戻りは出来ん。それとも、あの惨めで、ゴミのように扱われる便所掃除に戻りたいか? バカめ、貴様のような弱者が中途半端に優しさに逃げるんじゃねえ」
「……」
「デビルズは、悪魔より悪いやつを許さない。貴様がこの世界を許せないのなら、強くなれ。強くなって、悪魔より悪い奴らを叩きのめせ」
「……悪魔より悪いやつら……」
「弱者じゃ世界は変えれねえ。気に入らねえなら、強者になれ。強くなって伝えろ。この世界は、クソだってなぁ」
ウィーニーの目が赤く染まる。
「忘れんな。お前は未完成、だから可能性。そう言ったマイクの言葉を。分かったら、部屋に戻れ」
ウィーニーは、唇を噛んだ。
フラフラと去っていくウィーニーの背中を眺めながら、ロベルトは大きく息を吐いた。
「ふう。マイクよぉ。あのガキはぁ、未熟過ぎるぜ……」
ロベルトは、もう一度、小さく息を吐いた。
部屋に戻ったウィーニーは、壁にもたれて座った。
わずかにクラブ666の重低音が聞こえる。
ウィーニーは、拳を握る。
「……強くなれ」
呟いた言葉は、誰にも聞こえなかった。




