第22話 引き金 〜ルーキーウィーニー ウェイキーウェイキー 引いたトリガー 灯り出す戦火 逃げ場はねえなこの街のレクイエム〜
13番街の港。
歓声が上がる。
アジトに帰ったウィーニーとロベルトは、フリークスの仲間達に拍手で迎えられた。
シャクールは、帰ってきた二人に駆け寄った。
「ロベルト。便所……いや、ウィーニー。すまなかった」
ロベルトは、シャクールの肩をポンと叩くと、何も言わずに"クラブ"の中に消えて行った。
翌朝、港にフリークスが円を作っていた。
円陣の中心でロベルトが、手を広げる。
「フリークス! 昨日の活躍、ご苦労ぉ! チームで上げた過去最高の成果だぁ!」
「おおおおぉぉぉ!!」
「シャクール!」
呼ばれたシャクールは一歩前に出た。
「お前は、エースヒッターに昇格だぁ! フリークスは、これよりオレが不在の時はシャクールの指示に従え! わかったかぁ!」
「おおおぉぉぉ!」
フリークスの悪魔達は再び歓声を上げた。
「で、ガキィ!」
ウィーニーが、一歩前に出た。
「お前はルーキーに昇格だぁ!」
悪魔達は一瞬ざわついた。
(ルーキー……)
その言葉が、じわりと体に染み込んだ。
「たった一日で、ルーキー昇格て……」
ロベルトは続けた。
「昨日の活躍なら、ランナーに昇格でもいいぐらいだぁ。でもてめえは、最後に下手打った! だからルーキーだぁ。わかったかぁ?」
ウィーニーは、黙って頷いた。
その日を境に──五番街は、死んだ。
夜が来ても灯りは戻らず、代わりに赤い光が街を這う。
機械侵攻軍が、完全に制圧したのだ。
帝国軍は、壱番街に戦力を集め始めていた。
ラプター大佐は、特殊部隊ヴァンガードを招集。
五番街奪還のための準備が、静かに進んでいた。
壱番街への物資供給のため、セラのいる教会が中継地点となった。
敷地内に足場が組まれ、常駐する兵士の数が日に日に増えていく。
「何が始まるの……?」
セラは、続々と増える兵士と装甲車を眺めながら、配給を続けていた。
装甲車が巻き上げる砂煙を避けるように、慌てて鍋の蓋を閉める。
「物資の量は増えてるのに、配給の食材は減ってる……」
配給のスープを受け取ったワイザーがセラに話しかけた。
「ウィーニーは、来ておらんかの?」
「うん……あれから一度も……」
「そうかの……」
「ウィーニーのこと、心配なの?」
ワイザーはニコリと笑った。
「ほほ、大丈夫じゃ。あやつは普通の人間では……しかし──」
ウィーニーの言葉が頭に浮かぶ。
──オレは、デビルズに入りたい。デビルズに近づきたいんだ……
「ウィーニー……まさか、のう……」
「ワイザー?」
セラは首を傾げた。
「ほほ、なんでもない」
そう言うと、ワイザーは五番街の方を振り返った。
「五番街は、完全に機械侵攻軍に占拠されたの……いずれここも戦火に飲まれる」
セラは、小さく頷いた。
「うん。機械はもう……止まらない」
ワイザーは、小さく息を吐いた。
「人間では、勝てん」
セラは小さく下を向いた。
「私達は、どうすれば……。神様……」
ワイザーの眉がピクリと動いた。
「……ほほ。おぬしも特別な子じゃ、セラ」
「え?」
「いずれわかるじゃろう」
そう言うとワイザーは、地下街へ消えて行った。
「ワイザー……あなたは、一体……」
港。
「ああ、言い忘れてたぁ。最後に一つ」
フリークスの視線がロベルトに集まる。
「このガキは、どういうわけかガラクタどもに追われてる。そして人間にも」
(ガラクタ?……メカのことか?)
「このガキは、デビルズだ。デビルズが、何かに追われるなんてこたぁ、あっちゃならねえ。そうだろうがぁ?」
「?」
悪魔達は、顔を見合わせた。
「だからぁ……これよりデビルズは、戦争する。片っ端からぶっ潰すぞぉ」
「え……」
沈黙が落ちた。
悪魔達は、顔を見合わせた。
ざわめきが広がる。
「人間と、メカと……戦争?」
「ガキ一人のために?」
「正気かよ……」
ロベルトは、その声を一切無視した。
「ランナーどもぉ、てめえらはガラクタのアジトを探しとけぇ」
フリークスのランナー達は、静かに頷くとその場から消えた。
「近々、上から指示がある。準備しとけぇ」
そう言うと、ロベルトはクラブの方へ去って行った。
「戦争?」
ウィーニーは、シャクールの顔を見上げた。
「……オレが、追われてるから?」
「そういうことだ」
(返し……?)
シャクールは、ウィーニーを見下ろした。
「デビルズは、お前が背負ってるもんを引き受けたってことか」
(オレが、背負ってるもの……)
「はは、お前が晴れてデビルズの一員になった証拠だな」
「デビルズの一員……」
ウィーニーの口元が自然と緩んだ。
トン。トン。
指が自然とリズムを刻んでいた。




