第21話 ワンホーン降臨 〜強さってのは感情から生まれる結実 命令じゃねえ 衝動から来る発火点 それがデビルズ それがオレ それが本質〜
「……"返し"だ。くそったれ」
──その瞬間。
ズン。
地面が、揺れた。
直後。
テントの外で爆発音が響いた。
ラプター大佐が叫ぶ。
「なっ、なんだ!?」
「大佐!! メ、メカです! た、大量に──」
ドゴォォォォン!!
目の前が白く弾けた。
ウィーニーとラプター大佐は、テントごと爆風で吹き飛ばされた。
「う……ぐっ」
ウィーニーの目に、テントから這いずり出るラプター大佐が映った。
「くっ……」
ウィーニーは痺れる足を押さえ、立ち上がった。
(手錠が……)
「外れてる……」
「待て……君……!」
ラプター大佐は、倒れたまま手を伸ばした。
ウィーニーは、足を引き摺りながら背を向けた。
一瞬で周囲は火の海と化した。
焼けた帝国軍の旗が、火の粉になって舞い落ちる。
パン! パンッ!
パララッ!
乾いた銃声の中、ウィーニーはバリケードの外へ向かった。
「壱番街へ! ヴァンガードはどこだ!? 応援を要請する!」
「ドレッドウォーカー多数確認! 退避──」
ドォォン!
すぐ横にドレッドウォーカーのミサイルが落ちる。
ウィーニーの前に焼けこげた兵士が転がる。
「くっ……」
それでもウィーニーは歩みを止めない。
(アジトに……デビルズに帰らなきゃ……)
トラックの残骸、足場の影に身を隠しながら、ウィーニーは出口を探した。
ドレッドウォーカーのサーチライトに照らされたゲートの赤い旗が見えた。
「あ、あそこから……出られる」
辺りを見渡すと、ウィーニーはゲートに向かって飛び出した。
「走れ、ウィーニー……動け」
自分に言い聞かせながら、ウィーニーは走った。
ドォォン!
目の前に落ちる砲弾。
「っく……!」
爆風で押し戻される。
もう一度、立ち上がる。
その時、ウィーニーの顔に赤い光が当たる。
「ウェブクロウラー……」
《研究対象:確認》
その瞬間、一斉にメカ達が動きを止めた。
「え」
《最優先行動:変更》
《侵攻作戦:中断》
《捕縛活動:開始》
ドレッドウォーカーが一斉にウィーニーを振り返った。
「……なんでだよ」
ウェブクロウラーがウィーニーに飛びかかる。
「っわ!」
ウィーニーは、地面を転がりギリギリかわした。
ゲートを抜け、街灯のない五番街を走った。
背後から飛びかかるウェブクロウラー。
「うわあああぁぁぁ!」
咄嗟に出した拳。
その拳が、じわりと金色に光る。
(また……光)
滲み出た光は、閃光に変わる。
「熱いっ」
その閃光が、ウェブクロウラーに突き刺さる。
ジュ。
ウェブクロウラーは、光の中で消滅した。
「なんだよ、これ。オレは、一体……」
ズン。
迫るドレッドウォーカーの足音。
「くそっ……」
ウィーニーは、慌てて立ち上がる。
再びドレッドウォーカーに背を向けた。
その時──
ギィ……
ギギッ……
暗闇に無数の赤い光。
「何体、いるんだよ……」
ウェブクロウラーに完全に囲まれたウィーニー。
「なんで、てめえらまでが、オレを狙うんだ……」
折れそうになる膝。
それでも足を押さえ、踏みとどまった。
「オレは……帰るんだよぉ!」
その時──
ヒュン。
上空で風切り音。
「!?」
空から落ちる赤い閃光。
ズドォォン!
爆発音。
そして衝撃波。
地面が揺れる。
ウェブクロウラーが粉々になって吹き飛んだ。
砂埃の中──暗闇に浮かぶ一本角。
(ワンホーン……)
「ロベルト!」
ロベルトは、ウィーニーを見下ろしてニヤリと笑った。
「立ってるねえ」
そう言うと、ロベルトは、ウィーニーの肩に手を乗せ、顔を覗き込んだ。
「良い目だぁ。それでいい。折れねえハート、デビルズの最低条件だぁ、なぁ」
ウィーニーは、静かに頷いた。
ドン!
ウィーニーは、背後の音に振り返った。
「ドレッドウォーカーだ!」
ロベルトは、ポンポンとウィーニーの肩を叩くと、その前に立った。
「お前の活躍、今日はもう十分だ」
「逃げなきゃ!」
ロベルトは笑った。
「はは。でもお前はちょっと──悪魔を舐めすぎだ」
「え?」
ロベルトはステップを踏んだ。
トン。トン。
「ウォーキー、ウォーキー、ウォーキー」
「いや、ロベルト。こんな時に……」
《敵性存在:確認》
《種族:悪魔》
《排除行動:開始》
トン。トン。トン。
「え、ドレッドウォーカー オレ、ワンホーンデビル」
ギギギッ。
ドレッドウォーカーは、その砲身の腕をロベルトに向けた。
「ロベルト! 来る!」
ロベルトは笑った。
「そりゃちげえ。オレが行くんだ。いくぜ、Yo!」
その瞬間、ワンホーンが──消えた。
ドレッドウォーカーの背後で、ロベルトの足音が響く。
「いつの間に!?」
トン。トン。
反転したドレッドウォーカーがロベルトに迫る。
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でけえ図体で突っ込んでくるかぁ
シンプルだねえ
でもな シンプルってのは
読めるんだぁ
お前の次の一手 全部見える景色
強えのに つまらねえ それが致命的欠如
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トン。
ロベルトは、ドレッドウォーカーの腕をすり抜けた。
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なんでかわかるか 教えてやる理由
予測できる奴は 怖くねえ杞憂
感情ねえ奴は 読めるんだよ不自由
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ズドォォン!!
砲撃が連続で来る。
爆風の中でロベルトのステップは止まらない。
(すげえ……)
ウィーニーは瓦礫の影から目を離せなかった。
(戦いながら……ラップしてる……)
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YO
強えだけじゃ 勝てねえ領域
速えだけじゃ 届かねえ高域
完璧なだけじゃ 超えられねえウォール
頑丈なだけじゃ 守れねえ中身はホール
正確なだけじゃ 刻めねえビート コール
デビルズに勝てねえ理由 今わかった不自由?
その差が 全てだぁ これが決定的理由
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ドレッドウォーカーの動きが一瞬止まった。
(ロベルトのビートが……止まらねえ)
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さあ 終わりにしようかぁ
強え奴との戦闘 それがオレの本懐
でもな 感情ねえ奴とじゃ 物足りねえ感慨
怒りもねえ 笑いもねえ ただ動くだけの機械
それじゃあ足りねえんだよ オレのビートの世界
YO
最後に教えてやる 一つだけの真実
強さってのは 感情から生まれる結実
命令じゃねえ 衝動から来る発火点
それがデビルズ それがオレ それが本質
じゃあな 鉄の巨人
それが 今日のお前へのレッスンだぁ
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ロベルトが、踏み込む。
ズドォォン!!
拳が、ドレッドウォーカーの単眼に突き刺さる。
ギ……ギィ……
ドシャァ!……
ドレッドウォーカーは、金属を軋ませながら崩壊した。
「帰るぞぉ」
何事もなかったかのように歩き出すロベルト。
「……うん」
ウィーニーは、痺れる足を引き摺りロベルトに続いた。
(なんでオレは倉庫で意識を……)
心を読んだかのように、ロベルトがウィーニーを振り返る。
「シュガーだなぁ。その頬の傷」
「え」
「シュガー"スウィートヴェノム"気をつけろよぉ」
「ヴェノム……あいつが?」
(だとしたら……同じデビルズなのに……なんで)
ロベルトは、一本角にかかった埃を手で払いながら言った。
「自由。デビルズ。最高だろうがぁ」
意味はあんまりわからなかった。
「気張れやぁ、ガキィ。マイクが待ってるぞぉ」
「マイク?」
ロベルトは、正面に浮かぶ月を見上げた。
「ああ。見えるところ。そこまで上がる、お前をなぁ」
13番街へ足を向けたロベルトとウィーニー。
瓦礫の影から、赤い目が見ていた。
《捕縛対象:悪魔との共闘確認》
《捕縛対象:移動開始》
《追跡プロトコル起動》




