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第20話 ゴミからの“返し” 〜オレが何者かって? 教えてやるよクソ野郎〜

 ピー。ピー。ピー。


 13番街。

 デビルズのアジトに運び込まれる11台のコンテナ。

 キャプテンロベルト不在で奪った大量の物資を前に、悪魔達は呆然としていた。


「フリークスが、とんでもねえ仕事しやがった……」


 シャクールが、トラックを飛び降りた瞬間、大歓声が湧き上がる。


「フリークス! フリークス! フリークス!」


 その輪の中心で拳を上げるシャクール。


「これで、ロベルトのチャンピオン昇格は確定だろ!」


 その時、歓喜の輪を割って、目を擦りながらロベルトが現れた。

 シャクールが、手を広げる。


「ロベルト。やったぜ、オレ達!」


 ロベルトは、シャクールの肩を叩いた。


「あ……おう」


「朝一番にシュガーに手柄を横取りされたが、そんなもん屁でもねえ! 見てくれよ、この量」


「そうか。それで、あのガキは?」


「え?……ああ、実はこれはアイツのアイデアなんだ! アイツを褒めてやってくれ!」


 ロベルトは、小さく息を吐いた。


「わかった、わかった。それで、あのガキは?」


 シャクールは、トラッシュ達に声をかけた。


「おい、お前ら、便所掃除はどこだ?」


「知らねえよ」


「おい、お前。あのガキ見なかったか?」


「いいや。オレ達もズラかるのに必死で」


 ロベルトの目が一瞬鋭くなる。


 シャクールは慌てた。


「おい! 誰か、便所掃除のガキみてねえか!?」


 すると、トラッシュの一人が歩み出た。


「ああ、オレは倉庫の前で声かけたぜ。逃げもしねえで、ボーッと突っ立ってたからよ」


 ロベルトは、シャクールの顔を覗き込んだ。


「シュガー"スウィートヴェノム"……てかぁ」


 ──ま、このガキのおかげでアタシは上に行ける。


 シュガーの言葉が、蘇る。


 シャクールは唇を震わせた。


「ま、まさか……あの時」


 シャクールは、叫んだ。


「お前ら! 便所掃除を探しに行くぞ!」


 ロベルトは大きなため息を吐いて、シャクールの肩を叩いた。


「はぁ。やめろ、シャクール」


「え」


 ロベルトは頭を掻きながら背を向け、フラフラと歩き出した。


「お前らはよくやったぁ。今日は、酒でも飲んで祝っとけやぁ」


 シャクールは、唇を噛んだ。


「す……すまねぇ……ロベルト」


「……ガキ一人で崩れるなら、チームごと終わりだぁ。デビルズは──そんなもんじゃねえ」


 シャクールは、去っていくロベルトの背中を見ながら、拳を強く握った。


「クソ……オレとしたことが……」


 その横に立った大きな影。


「心配すんな、シャクール」


 シャクールは、その影を見上げた。


「マ、マイク!」


 マイクは、シャクールの頭に大きな手を乗せた。


「いつもすっとぼけてやがるが、アイツはリーダーだ」


「マイク……」


 大きな背中を向けたマイク。


「お前も学べ。シャクール」


 ──五番街。

 帝国軍の中継基地。


 ウィーニーは、忙しなく動く人の影に目を覚ました。

 霞む視界。

 手足はまだ痺れていた。


ガチャ。


「手錠……?」


(捕まったのか……オレ)


 その時、目の前に二人の兵士が立った。


「おい、靴磨きのガキ。聴取だ。立て」


「ラプター大佐がお呼びだ!」


(ラプター大佐……)


 足元がフラつくウィーニーは、強引に抱えられテントに連行された。


「座れ!」


ドサッ。


「くっ……」


 兵士は、ウィーニーを投げ捨てるように座らせた。


 ラプター大佐は椅子に座ったままウィーニーを見下ろした。


「ようやく会えたな」


「……」


 ラプター大佐は、ウィーニーに顔を近づけた。


「少年。君は、何者だ?」


「何者でも……ねえよ……」


(まだ、な……)


「壱番街の悪魔の襲撃。君が関わっておるのか?」


「知らねえよ」


「そうか……。襲撃してきた悪魔は"返し"と言ったそうだ。君は、あの日、トイレで何をしていた?」


 ウィーニーは、ラプター大佐の顔を睨みつけた。


「掃除だ! それ以外にあるか!」


 ラプター大佐は、頭を掻きながら続けた。


「今日、倉庫で物資の盗難があった。その場にも君がいた。疑わないわけにはいかないのでな」


「知らねえって言ってんだろ! 手錠を外せ!」


 ウィーニーの声を聞いて、兵士がテントに駆け込む。


 ラプター大佐は、兵士を手で制した。


「ファルコン少佐がやられた時といい、悪魔が現れる時、必ず君がいる。何も知らないと言い張る限りは──君を解放するわけにはいかないんだ」


 ラプター大佐は立ち上がった。


「言うべきこと。思い出したら、また聞かせてくれ」


「……」


「連れて行け」


「はっ」


 兵士がウィーニーの肩を掴む。


 立ち上がったウィーニーは、ニヤリと笑った。


「何がおかしいのかね?」


「思い出した……言わなきゃいけねえこと」


 ラプター大佐は、兵士を再び手で制した。


 兵士はウィーニーを離した。


「聞こう。なんだね?」


 ウィーニーは答える代わりに、フラつく足で床を叩いた。


トン。トン。


「Yo、言いてえこと、山ほどあったわ」


トン。トン。トン。


「よく聞いとけよ、おっさん」


 ラプター大佐の目が細くなる。


「君、何をしてる?」


トン。トン。トン。


「いくぜ」


────────────────────

Yo

産まれた瞬間から名前もねえ

誰がつけたかも知らねえ オレの名はウィーニー

親の顔も知らねえ この街の片隅で

誰にも見られず生きてきたガキだ


孤児院の隅で 残飯みてえな飯かき込んで

吐きそうな臭いの便所 毎日素手で擦ってきた


腹減っても黙ってた 殴られても歯食いしばった

チンピラに蹴られても ただビート刻んで立ってた


食いもんもねえ 居場所もねえ それでも言わなかった文句

この街も このクソみてえな世界も 受け入れて生きてきた


Yo

なのに何だ てめえら

牢屋にぶち込んで 自由奪って 罪人扱いか?

壊した街に旗立てて 守ってるつもりか?

その平和ってやつ 誰の上に乗ってるか分かるか?

壊したのは誰だ この街 この人生

踏み潰した声の上で 正義気取ってんじゃねえ


何もしてねえガキ一人 怖えのかよ帝国軍

笑わせんな その制服 ただの鎧だろ 中身空っぽの

鉄の檻で語る正義 それただの都合

秩序気取りの兵隊 中身はただの暴徒


ID? 階級? くだらねえその称号

名前で呼べねえ時点で てめえらもう敗北


掃除してただけだ 便所も街も同じだろ

汚したのはどっちだ 鏡見てからモノ言えよ


Yo

悪魔が来る? そりゃそうだ 呼んでんのはお前ら

踏み潰した声が 形変えて牙剥いただけだ


"返し"って言葉に震えたんだろ

原因オレじゃねえ 因果てめえらが先にあんだよクソ雑魚が


Yo

管理だ監視だ 笑わせんなよ おっさん

全部見てるつもりで 一番見えてねえのが"自分"だ


その椅子 似合ってるぜ 処刑台みてえでよ

いつひっくり返るか 楽しみにしとけよ


オレは一度も この世界に文句言ってねえ

それなのに縛るのか まだ奪うのか これ以上何をくれってんだ


Yo

答えろよ

これは誰の罪だ


オレが何者かって? 教えてやるよクソ野郎


オレはウィーニー 路地裏のウィーニー

人間でもねえ 悪魔でもねえ

誰でもねえ 世界のゴミだ


てめえらが捨てた そのゴミだ


てめえが捨てたもんのケツも持てねえクソ野郎が いつまでもごちゃごちゃ能書き垂れてんじゃねーぞ ゴミ野郎が!

これがゴミからの──

────────────────────


トン。……トン。


「……"返し"だ。くそったれ」


 ──その瞬間。


ズン。


 地面が、揺れた。


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