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第19話 成果と爪痕 〜勝ちの鼓動 奪った成果ごと落とす音〜

「緊張か?……」


(さっきから、顔が熱い……)


「おい、便所掃除! どこ行くんだよ!?」


「こっち!」


 ウィーニーは振り返らず、細い路地を曲がった。


 目の前に、地下へ続く階段。


「ここから大通りの反対側に抜けれる!」


「だから……はあ、はあ……どこへ向かってる!?」


カン! カン! カン!


 鉄製の床を踏む足音が、地下に響く。


 光が差し込む出口。


 ウィーニーは突然、足を止めた。


「この先」


 シャクールが思わずウィーニーの肩を掴んだ。


「はあ、はあ……この先に、何がある? 先に説明しろ!」


 ウィーニーは、シャクールを振り返ってニヤリと笑った。


「帝国軍が物資を保管してる場所さ」


「何?」


「五番街の人間ならみんな知ってる。警備もほとんどいないんだ」


「本当か?」


 ウィーニーは頷いた。


「帝国軍の物資を奪おうなんて人間はいないからね」


 フリークス達は、気配を消すように、ゆっくりと出口に立った。


「あれか?」


 目の前には、赤い屋根の巨大な倉庫。


 ウィーニーは頷いた。


「うん。いつもなら、コンテナを引いたトラックが必ず3台はある。中の物資が何かはわからないけど……」


「3台か。おいしいねえ」


 ウィーニーは目を見開き、シャクールを見た。


「まさか全部奪うつもり!?」


 シャクールはニヤリと笑った。


「当たり前じゃねえか。ドールズには負けれねえ」


 フリークス達は、倉庫の壁に張り付いた。


 割れた窓から、シャクールはゆっくりと中を覗いた。


「!?」


 シャクールの肩がビクリと動いた。


 ウィーニーが聞く。


「あった?」


 シャクールは、ゆっくりとウィーニーを振り返った。


「……あったなんてもんじゃねえ。10台はあるぞ!」


 フリークス達がざわつく。


 シャクールは、もう一度中を覗きながら指示を飛ばした。


「1、2、3……11台。警備兵2人と……監視カメラか」


 シャクールは、壁に背をつけた。


「トラッシュどもはカメラを壊せ。ヒッター10人はオレと来い。あの車両、全部奪う」


「ぜ……全部」


「便所掃除。お前は、あの警備兵二人を外に誘き出せ。行くぞ!」


 トラッシュ達は倉庫の壁を伝い、屋根に登る。

 シャクールは、ヒッターを引き連れて倉庫の裏側に回った。


 静まりかえる倉庫。


 ウィーニーは、ゆっくりと窓から中を覗いた。


 監視カメラに向かって天井を伝うトラッシュ。

 裏口の窓からこちらを見るシャクールと目が合う。


 シャクールがコクンと頷いた。


(よし。やってやる!)


 ウィーニーは、正面のドアをノックした。


「靴磨き〜! 靴磨きは要りませんかぁ!」


コツ。コツ。コツ。


 二人の兵士の足音が近づく。


ガチャ。……ギィ。


 ドアが開いた。


「なんだ、ガキ。敷地から出ろ」


「物乞いなら教会にでも行け」


 トラッシュ達が監視カメラを捻り潰す。


 シャクールとヒッター達は、それを確認して裏口から倉庫に入った。


「靴磨きはどうですか?」


「そんなもんはいらん!」


「ガキに付き合ってる暇はない!」


「……そうですか」


 ウィーニーは、車に乗り込んだ悪魔達を確認すると、兵士達に背を向けた。


「靴磨き〜、靴磨きは要りませんかぁ〜」


 その場を離れようと一歩踏み出した。


 その時──


「おい、待て」


 呼び止められた。


 ウィーニーはゆっくりと振り返った。


「ガキ、怪しいな。IDを見せろ」


(……やべえ)


「え。ID?」


「お前、靴磨きだと? 道具はどこにある?」


(シャクール、早く!)


「あ、道具は……」


 兵士は、ウィーニーに銃口を向けた。


「貴様! ちょっとこっちに──」


 兵士が手を伸ばした、その時。


キキキキキッ、ブォン!

ブォン! ブォン! ブォン!


 倉庫の中のトラックが一斉に唸りを上げる。


「なんだ!?」

「トラックが勝手に!?」


ドォオン!


 動き出したトラックは、倉庫の壁を突き破った。


「なっ!? まっ、まさか、盗賊!?」

「まっ、待て!!」


 倉庫を出ていくトラックを追う兵士。

 トラッシュ達は、その隙に倉庫から逃げ出した。


 立ち尽くすウィーニーを、トラッシュ達が通り過ぎていく。


 トラッシュの一人が、ウィーニーの肩を叩いた。


「おい、ガキ! 逃げろ!!」


 それでも動かないウィーニー。


「いや……体が……」


 走り去っていくトラッシュ達に、震える手を伸ばすウィーニー。


「待っ……て。体が……言うこと、きかねえ……」


バタン。


 その場に倒れたウィーニーは、意識を失った。


 シャクールは、後ろに続くトラックの列を振り返り、小躍りした。


「ヒャッハー! こりゃ伝説に残る成果だ! やるじゃねーか、あの便所掃除!」


 空っぽになった倉庫を前に、兵士二人は立ち尽くしていた。


「ど……どうする?」


「どうするって、報告するしか……」


「オレ達がいたのに、誰がやったかわからないなんて報告出来るかよ……。しかも11台だぞ! それともトラックが勝手に逃げたとでもいうのかよ!?」


「……そうだ、監視カメラは!?」


「全部壊されてる……。一体いつの間に……」


 その時。


「おい……あいつ」


 兵士の一人が、倒れているウィーニーを指差した。


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