第17話 フリークス 〜初任務 地獄のルールと現実の壁 奪う前に奪われる街の戦場〜
「朝からうるせえなぁ、てめえらぁ──」
一本角の悪魔の登場に静まり返る。
シャクールは、小声でウィーニーに教える。
「オレ達のリーダー、ロベルト"ワンホーン"だ」
「ロベルト……ワンホーン……」
「YO、シャクール。不満が聞こえたぞ」
シャクールは一歩踏み出した。
「新顔の待遇に不満があるやつが──」
「誰だあぁぁぁぁ! 不満がある奴あぁぁぁ!」
ロベルトは、シャクールを遮って叫んだ。
その覇気。
痺れたように動かない悪魔達。
「いねえようだぞ、シャクール」
「あ……ああ」
「よぉし、今日の指示だ──」
「……」
沈黙。
「シャクール。今日はなんだぁ?」
「……ああ。トラッシュ、ヒッターは街で物資の強奪! ランナーは、下水道を調査!」
ロベルトが、ニタリと笑った。
「そういうことだぁ……行ってこいやぁ」
シャクールが、ロベルトを見た。
「交戦は?」
「あん。ああ……ええっと、ルール通りだ」
「おおおぉぉぉ!!」
悪魔達の雄叫びが、早朝の港に響き渡った。
ウィーニーは、シャクールの後に続いた。
その時。
「おい、ガキ」
背後からロベルトの声。
ウィーニーは振り返った。
目の前に、赤い目が光る。
「!?」
「納得させてみろやぁ、オレを」
悪魔達の声が遠ざかる。
ウィーニーも悪魔達の後を追った。
その時、ロベルトの背後に大きな影が立った。
「……マイク」
「ロベルト」
ロベルトがマイクを振り返る。
「なんでオレのところに入れたぁ、あのガキを」
「背負えるのは、お前のとこだけだ」
ロベルトの目が鋭くなる。
「随分入れ込んでるじゃねえかぁ。死ぬぞ、あのガキ」
「ああ。それでもいい。オレの責任だ」
そう言うとマイクは背を向けた。
ロベルトの目が、わずかに細くなった。
「何がしたいんだぁ、あんた」
パチン。
マイクは、指を鳴らした。
「可能性、だ」
シャクールの後ろを歩くウィーニー。
ボソボソと独り言を呟く。
「えっと……オレは一番下のトラッシュ。上には、ルーキー、ランナー……あと……」
シャクールが僅かに振り返る。
「ヒッター、キャプテン、チャンピオンだ」
「なるほど! でオレは、ロベルト率いる《フリークス》ってチームに配属されたってことか」
シャクールは鼻で笑った。
「ハッ。フリークス……"出来損ない"って意味だ。喜べよ、お前にピッタリだ」
「うん! ピッタリだ! ここから上がる頂上、気分は上々──」
シャクールは、目を丸くした。
「──何者でもないから、出来損ないに昇格! ここから増やす、ウィーニーフリーク!」
シャクールは足を止めた。
「……お前……」
「何?」
「とんでもなくダセェ……」
ウィーニーは笑った。
「へへ。ここからだから、オレ」
「……」
「ところでシャクール、オレ達は、どこへ向かってるんだ?」
「隣の12番街。人間の軍事物資を奪う」
「え!?……奪うって……」
シャクールは、ウィーニーを見下ろした。
「忘れたか? オレ達が悪魔ってことを」
「……」
その頃、クラブ666のカウンターバー。
マイクは一人、酒を傾けていた。
誰もいないクラブ。
グラスの氷の音だけが響いた。
マイクの頭に、昨夜のウィーニーのパンチラインが響く。
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オレはここにもらいにきてねえ
与えに来た このゴミみたいな経験
可能性 オレのじゃねえ
お前らデビルズの可能性 この話
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「フン。下手くそなラップだぜ」
マイクはニヤリと笑った。
「Yo ブラザー」
背後に声。
「ワッツアップ!」
もう一人。
マイクが振り返る。
「テレンス、フロイド」
「朝から一人で酒か?」
ドレッドヘアを振るテレンス。
「本心、聞かせろよ。お前の内心」
フロイドはオールバックをかきあげた。
「あのガキ、マジで何なんだ?」
マイクは大きな肩をすくめた。
「答えはねえ。だが、頭で考えてもねえ。動くんだ、直感が。いや、本能か」
テレンスは大きなため息を吐いた。
「ふう。受け入れたってことは、あいつが背負ってるもんも、デビルズが引き受けるってことだぞ。わかってるな?」
「……」
マイクが答える前にフロイドが、口を開く。
「悪魔じゃねえ奴のために犠牲が出るってこと。全員がいい顔はしねえぞ」
マイクはグラスを置いて頷いた。
「ああ。そうだな」
沈黙が落ちる。
テレンスは酒を一気に飲み干し席を立った。
「ふっ。お前が覚悟してんなら、これ以上言うことはねえ」
フロイドも席を立ち、マイクの肩を叩いた。
「オレもお前と行くぜ、ブラザー」
12番街。
大通りを武装した帝国軍の小隊が歩く。
その真ん中を、物資を乗せたトレーラーが進む。
ビルの影に隠れるフリークスの悪魔達。
シャクールが、後ろで隠れるウィーニーを見た。
「覚えとけ、便所掃除。オレ達下っ端は、悪魔がやった証拠を現場に残せねえ。それがルールだ」
「証拠を?」
「ああ。戦争の引き金。そんなもん下っ端が引いていいわけがねえ」
ウィーニーは首を傾げた。
「じゃあ……どうやって?」
シャクールは呆れたように天を仰いだ。
「決まってるだろ。見られないか、皆殺しにするか。二つに一つだ」
「皆殺し……。今日は、どうするの?」
「ロベルトがいねえ……リスクが高ぇ……」
その時──
大通りを挟んで反対側の廃墟の中に人影が蠢いた。
シャクールが慌てた。
「クソ! あいつらもこの物資狙いか!?」
「あいつら?」
「仕方ねえ、行くぞ、野郎ども!」
シャクールが飛び出した。
フリークスの悪魔達が一斉に後に続く。
ウィーニーは、後ろから押されて倒れた。
「うがっ」
次々と悪魔達に踏み台にされる。
その瞬間──
「悪魔だ!」
兵士達は反対側のビルに向かって叫んだ。
飛びかかる謎の悪魔達。
──断末魔。
兵士達は、一瞬で制圧された。
駆けつけたシャクールとフリークスの悪魔達を、トレーラーの上から見下ろす悪魔の集団がいた。
「はあ、はあ……待って」
遅れてウィーニーが駆けつけた。
トレーラーの上で、一人が笑った。
「アハハハハ! シャクール! 残念やねえ! こいつは、アタシ達のモンや!」
「……女?」




