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第16話 トラッシュ 〜最下層トラッシュ 再加速スタート 揺れる教会 境界越えのコード〜

 ウィーニーは目を覚ました。


 薄暗い部屋。

 冷たい床。


 慌てて飛び起きるウィーニー。


ガンッ!


「痛えっ!」


 低い天井。


「ここは……」


 何もない部屋。

 錆びた鉄の壁。


「おい」


 背後から聞こえた声に飛び跳ねる。


「ひっ! だっ、誰だ!?」


「ちっ……」


 舌打ち。

 薄暗い部屋の中で、ぬうっと影が動いた。

 赤い目。

 折れた角。


「なんでオレがこのガキを」


「あ、あんたは……?」


 細身の悪魔は、めんどくさそうに頭を掻いた。


「シャクール。オレの名だ」


「シャクール……。ここは?」


 シャクールと名乗った悪魔は、壁にもたれたままウィーニーに軽く目をやった。


「オレの持ち場、お前の部屋だ」


「オレの……部屋」


 シャクールは、指を立てた。

 小さな炎が、指先に灯る。


(すげ……)


 シャクールは指先の炎を見つめながら、続けた。


「お前は"トラッシュ(ゴミ)"。本来、部屋はねえ」


「トラッシュ……」


 シャクールは、ウィーニーをじっと見た。


「マイクの指示で、オレがお前のお守り役。仕方ねえ。マイクの顔は汚せねえ」


(仕方ねえ、汚せねえ……韻踏んだ?)


バサッ。


 シャクールは、ウィーニーの前に包みを投げつけた。


「それに着替えろ。お前も一応デビルズだ」


「え」


(認められたのか?……オレ)


「勘違いすんなよ、便所掃除。お前は、見習いみたいなもんだ」


 真っ黒なツナギだった。


「ジャージ……じゃないの?」


 シャクールは鼻で笑った。


「フン。トラッシュが何言ってやがる。ジャージはヒッター以上しか着れねえ」


「ヒッター?」


 シャクールは天井を見上げて、ため息を吐いた。


「デビルズには序列がある。お前は全部の下だ。覚えとけ」


 そう言うとシャクールは、ウィーニーに背を向けた。


「心配すんな。お前みたいなやつはどうせ死ぬまでトラッシュだ」


「……」


「着替えろ。行くぞ」


 コンテナから出たウィーニーとシャクール。


 シャクールは、目を顰めた。


「クソが、眩しい……」


(悪魔は、光が苦手なのか……?)


 見渡す限りの瓦礫の山に朝日が当たる。


 ウィーニーの口元が、自然に緩んだ。


「へへ……オレも、デビルズ」


(一応……)


 シャクールはサングラスをかけると、ウィーニーを見下ろした。


「何笑ってやがる、便所掃除」


「だってさ……憧れた悪魔 目指したデビルズ 陽の下立った ここがスタート 路地裏のウィーニー 今ここだ」


「……」


 シャクールは、ポカンとウィーニーを見つめた。


「お前……クソダサいな」


 ──その頃。

 六番街の教会。


 セラは、ホームレス達にスープを配っていた。


「今日は、帝国軍から配給がありました! 全員に行き渡るから慌てないでー」


 配給を終えたセラは、ホームレス達の横に腰掛けた。


 セラはホームレス達を見渡して、大きくため息を吐いた。


「この配給、止まったら……」


 スープを一口啜った。


「ウィーニー……今日は来なかったなぁ……大丈夫かな」


 その言葉に、向かいに座るホームレスの肩が一瞬揺れた。


「ウィーニー? 知っておるのか、シスター?」


「え。あ、はい。少し前にここに……あなたは?」


 ホームレスの頭に、ウィーニーの声が浮かぶ。


 ──そうだなぁ……ワイザー! どうだ?

 ──名前が無きゃ呼べねえじゃん。


 ホームレスは、少し驚いた様子で答えた。


「……ワイザー。ワシの……名じゃ」


「ワイザー。素敵な名前ね。ウィーニーの友達?」


「ほほ。五番街の──同僚じゃの」


 その時、武装した帝国軍の小隊が教会の敷地を踏み鳴らした。


 足音が、教会の空気を踏み潰す。


 セラとワイザーの横を通り過ぎる。


「物騒じゃの……」


「また、ラプター大佐が……」


 ワイザーがセラを見た。


「また?」


「うん。ウィーニーが現れた日も」


「そうかの」


 セラは小さく呟いた。


「悪魔を呼ぶ子どもがなんとかって……聞いちゃったの」


 ワイザーは、空を見上げた。


「悪魔を呼ぶ子ども……のう」


 一方、13番街の港。


 黒い服を着た悪魔達が、円を描くように立っていた。

 その中心には、シャクール。


 シャクールがウィーニーを指差した。


「"フリークス"に新顔だ! 名前はいらねえ! こいつは、トラッシュだ!」


(フリークス?……チーム名?)


「キャプテンの到着を待つ」


 円陣がざわつく。


 その中の一人が、ウィーニーを指差す。


「おい、シャクール! トラッシュのくせになんでこいつには、コンテナがあるんだ!」


 呼応するように対角にいた悪魔が一歩踏み出す。


「そうだ! 順番なら、オレ達が先だろ!!」


 また一人。


「そもそもそいつは、人間じゃねえか! 悪魔でもねえやつが、なんでここにいるんだ!」


 シャクールは、肩をすくめ、両手を軽く広げた。


「知らねえよ、オレに言われても」


 怒りが収まらない悪魔達。


「チートだ!!」


「そうだ、チートだ!!」


「チート! チート! チート!」


 悪魔の大合唱を、ポカンと見つめるウィーニー。


ヒュン!


 その時、上空で風切り音。


ドォォン!!


 爆発音。

 円陣の中心に、何かが──落ちた。


 衝撃で、悪魔達がその場で倒れる。


「いっ、隕石!?」


 砂煙。

 その中心に人影が浮かぶ。


 赤い肌。黒ジャージ。

 袖にゴールドのラインが一本。


 そして、額に一本角。


 シャクールが呟く。


「キャプテン……」


 一本角の悪魔は、ゆっくりと立ち上がった。


「朝からうるせえなぁ、てめえらぁ──」


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