番外編① シャクール君のラップレッスン
「よし、ウィーニー。じゃあ、一章を振り返るラップ、刻んでみろ」
「う、うん。行くよ」
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Yo
路地裏で生まれた 名前も知れねえ
便所磨いて 灰色の水 一緒に消えかけてた
その夜 悪魔に会った
リズムを知った
胸の奥で 何かが鳴った
猫にディスられ 黙るしかなかった
ネズミだけが 尻尾でビートを返してた
下水道 アンデッド 光って消した
何が起きたか わからなかった
デビルズに入りたいと 泣きながら追いかけた
笑われた でも止まらなかった
拾ったジャージ もらったブーツ
納屋で震えて スープこぼした夜
オレには何もなかった
でも
まだ消えてなかった
それだけで 十分だった
路地裏のウィーニー
──ここから始まった
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「どう?」
「うーん、悪くねえ。悪くねえが......」
シャクールは少し黙った。
「点数で言うぞ」
「点数!?」
韻:40点
フロウ:20点
パンチライン:60点
言葉:80点
「だな」
「ばらつきがすごい!!」
「説明するぞ」
「わ、わかった」
【韻:40点】
「まずは、韻だ。“知れねえ”“消えかけてた”、母音が揃ってねえ。“鳴った”“返してた”“消した”、ここは踏めてる。でも全体的にまだ甘い。意識して踏んでる箇所と、偶然踏めてる箇所が混在してる。自分でどこで踏んでるかわかってるか?」
「……半分くらい」
「それが40点だ」
【フロウ:20点】
「はっきり言って、クソダサい」
「ひどい!」
「感情で押し切ってる。“泣きながら追いかけた”あたりだ。ビートを追い越してる。ただ」
シャクールは少し間を置いた。
「“それだけで 十分だった”のとこだけ乗ってた。あそこだけ20点分ある」
「なんで?」
「感情じゃなくて確信から出てる言葉だからだ。自分で信じてる時だけフロウが出る。覚えてるか」
「覚えてる」
【パンチライン:60点】
「次はパンチライン。お前のラップで一行だけ選ぶとしたらどこだ」
ウィーニーは少し考えた。
「……“消えなかった”?」
「そこじゃねえ」
「え、じゃあどこ?」
「“それだけで 十分だった”だ」
「フロウと同じとこ?」
「当たり前だ。フロウが乗る瞬間とパンチラインは一致する。お前が一番信じきれてる言葉が、一番刺さる。それがパンチラインだ」
「……なるほど」
「でも60点だ。なぜかわかるか?」
「……一行しかない?」
「そうだ。パンチラインは一曲に複数あっていい。今のお前には一行しかない。それが60点だ」
【言葉:80点】
シャクールは、ウィーニーをまっすぐ見た。
「言葉は悪くねえ。間違いなくお前の言葉だからだ」
「……」
「マイクの言葉じゃねえ。テレンスの言葉でもねえ。全部お前の経験から出てる」
ウィーニーは、自分の手を見た。
「オレの……言葉」
「ああ。なんで80点かわかるか?」
「……20点足りない?」
「そうだ。まだ信じきれてねえ。言葉は本物だ。でもお前自身がまだ半信半疑だ。それが20点分だ」
シャクールは立ち上がった。
「韻40、フロウ20、パンチライン60、言葉80。平均50点だ」
「低い!!」
シャクールは背を向けた。
「でもな」
「でも?」
「1話目のお前に点数つけたら、韻5、フロウ0、パンチライン0、言葉10だ」
ウィーニーは黙った。
「……そっか」
「ああ。別人だ」
シャクールは歩き出した。
「次はフロウだ。走るぞ」
「え、なんで走るの!?」




