第97話 森の鼓動 〜GodのRule ForestのSoul 交わる鼓動がNew World〜
「地獄の門が閉じた。粛清は、終わった、か」
ソルセリオンは、壱番街の司令塔から13番街を見つめていた。
その時。
「だが、セントラから魔族は消えてない」
ソルセリオンの背後で声がした。
ソルセリオンは、静かに目を閉じた。
「バルドリオン、か」
バルドリオンと呼ばれた男。
短い金髪に無精髭。
白いマントに重厚な金の鎧。
その肩に巨大な白銀のハンマーを担いでいた。
「何を手こずっているんだ、ソルセリオン。お前らしくない」
そう言うとバルドリオンは、担いでいたハンマーをゆっくりと下ろし、その上に腰掛けた。
ソルセリオンは、無表情のまま振り返った。
「このセントラには、ハーフゴッドが二人いる。南の森に一人、そして、悪魔どもの中に一人」
「ほう」
「神が犠牲を払って生み出した存在だ。見極める必要があった」
「それで? 使えそうなのか?」
ソルセリオンは、首を振った。
「娘は、森の女王に感化され、もう一人の子どもは悪魔どもの……妙な思想に取り憑かれている」
「つまり? 使えないと」
「セントラの秩序と神への信仰は、我々の手で取り戻す」
ソルセリオンは、翼を広げると屋上から地上に飛んだ。
バルドリオンは、ニヤリと笑った。
「下界は……面白いな」
一方、南の森で、ワイザーは、東の空を見上げながら呟いた。
「……バルドリオン、か」
その名を、迷いなく口にした。
切り株に腰掛けたファントムが、ワイザーを見上げた。
「ワイザー、今、なんと?」
ワイザーは、答えなかった。
ただ、その目の奥が一瞬だけ金色に光った。
その横で、セラは、何も言わず焚き火を見つめていた。
その時。
「セラ。来るんだ」
いつのまにか背後に立っていたシルヴァーナは、セラを森の奥へ誘った。
大木の前に立ったシルヴァーナは、セラを振り返った。
「覚えているか?」
「はい。シルヴァーナさんに……怒られた場所」
シルヴァーナは、笑った。
「フフッ。こっちへ来るんだ、セラ」
セラはシルヴァーナに言われるまま、大木の前に立った。
「手を」
そう言うと、セラに木に触れるように促した。
セラは、大木の幹にゆっくりと手を当てた。
「聞こえるか?」
「……」
セラは、首を振った。
「何も……」
シルヴァーナは、セラの顔を見ると、手の上にそっと自分の手を重ねた。
「目を閉じろ」
「はい……」
「どうだ?」
セラは、ゆっくりと息を吐いた。
「……いえ。何も聞こえ……あ!」
ドクンッ!
「え!? 何、この音!?」
「静かに。もう一度ゆっくり呼吸をするんだ」
「はい……」
森に沈黙が落ちる。
ドクンッ!
「聞こえます……。心臓のような、脈打つような音が……」
シルヴァーナは、言った。
「森の鼓動だ」
「森の……鼓動」
「ワイルドブラッドにしか聞こえぬ森の声。この鼓動が聞こえるなら、お前にもその声が聞こえるかも知れぬ」
「私にも、森の声が?」
シルヴァーナが、その手を離すと森の鼓動は聞こえなくなった。
「森が、お前を必要とすれば、な」
そう言うと、シルヴァーナは、森の奥へ消えて行った。
「シルヴァーナさん……。どうしてそれを、私に……?」
暗闇の中、シルヴァーナは足を止めた。
「どうした?」
シルヴァーナは、暗闇に話しかけた。
目の前には、ウッドエルフが膝をついていた。
「シルヴァーナ。ブラックゲートで、おかしな動きがある」
「ブラックゲート? 神か?」
「いえ。アンデッド」
シルヴァーナは、鼻で笑った。
「フン。あれ以来奴らは地下に篭っている。神にも増援が来たようだ。ますます動けんだろう」
「それが……」
「なんだ?」
ウッドエルフの女は、シルヴァーナに何かを差し出した。
「これは……機械の?」
「ええ。メカの目よ」
「それが、どうした?」
「森を彷徨く奴らを倒した時に……その顔からこぼれ落ちたの」
シルヴァーナは、眉間に皺を寄せた。
「なんだと? ……アンデッドからメカの部品が?」
ウッドエルフは、静かに頷いた。
「コアを失って動かなくなったメカ。それでも動力そのものを失ったわけじゃない」
「何が言いたい?」
「分からない。もしかしたら……なんらかの形でアンデッドとメカが共鳴してる……とか」
シルヴァーナは、静かに息を吐いた。
「そんなことが……」
「もう少し追ってみるわ」
シルヴァーナは、頷いた。
「気をつけろ」
「うん」
ウッドエルフは、森の奥へ消えた。
シルヴァーナは、ブラックゲートの方角を見つめた。




