第96話 ギークス 〜白衣の下にStreet ジャージの上にSoul MicもToolも 拳もSoulも磨くMy Style〜
「やべえ……マジかよ」
シャクールは、クラブ666から出てくると頭を抱えて膝をついた。
ウィーニーが駆け寄った。
「ど、どうしたの、シャクール?」
シャクールは、ウィーニーを下から見上げると肩を震わせて言った。
「ロベルトが……長期離脱だ。ジャロンにやれたダメージが相当でけえ……」
「な!? そ……そんな」
シャクールは、両手を地面についた。
「そこじゃねえ」
「え?」
「ロベルトは不死身だ。心配してねえ」
「……じゃあ、何が“やべえ”の?」
シャクールは、ウィーニーの肩を掴んで言った。
「その間、オレがフリークスの“代理”キャプテンだってよぉ……」
「え! やったじゃん、シャクール!」
「ばか! ロベルトの代わりのキャプテンなんて、重すぎるだろうが!」
「ま、まあ……」
その時、コンテナの上から甲高い笑い声が響いた。
「キャハハハ! ホンマや! アンタがキャプテンなんてありえへんわ!」
「くっ。シュガー……」
長い銀髪を掻き上げながら、シュガーはシャクールを見下ろした。
「せやけど、ちょうどええわ! アンタみたいなモンがキャプテンなら、もう相手になるキャプテンは、おらへん! チャンピオン昇進にまっしぐらやでぇ!」
「フン! 別にロベルトは、死んだわけじゃねえ! 戻ってくるまでは、てめえには絶対負けねえ!」
「キャハハハ! あのダメージから、まともに復活出来ると思ってるん? 無理やで、ありゃ、元には戻らへん」
ウィーニーは、拳を握った。
「そんなに、酷いのか……」
「まっ、せいぜいキャプテンごっこでもして、気張ってなぁ、落ちこぼれくん! ほな!」
シャクールは、奥歯を噛み締めた。
「まったく、嫌な女だぜ……」
シャクールがため息を吐いて立ち上がったその時。
「Yo、シャクールくんじゃないか?」
ウィーニーは、そのしゃがれ声に振り返った。
「ん? デビルズのジャージ……誰?」
デビルズのジャージ。
その襟元から白い布がはみ出た悪魔が、何やら大きな荷物を抱えて歩いてきた。
その後ろには、“か細い”悪魔の集団。
全員、分厚いレンズの丸眼鏡。
ジャージの下に着込んだ白衣──
荷物が重いのか、全員がフラついていた。
「あんたは……エドウィン!」
「ジャージの下に……白衣?」
エドウィンは、荷物をドサリと置くと、胸を張って言った。
背後の悪魔達も重そうなバッグをふらつきながら置いた。
「デビルズのジャージは常に上に着るもんだ。でも白衣を捨てるほどヤワじゃねえ」
「ねえ、シャクール。この人……何を言ってるの? この人達は一体……?」
「ああ、コイツらは、デビルズの武器の研究・開発集団ギークス。んで、そのリーダー、エドウィンだ」
「武器の研究、開発……デビルズって素手で戦うだけじゃないんだ……。てか、白衣を下に着たら意味なくない?」
「あるに決まってるだろ! 見ろ!」
そう言うと、エドウィンはジャージの襟を掴んで大きく開いて見せた。
白衣のポケットには、見たこともない謎の工具が無数に刺さっていた。
「デビルズの誇り、研究者の魂。両方持ってるのが、このエドウィン! ギークスだぁ!」
シャクールはため息を吐いた。
「相変わらず……変なやつだぜ」
「ところで、お前は、誰だ! 悪魔じゃねえくせに、一丁前にデビルズのジャージなんか着やがって!」
エドウィンは、ウィーニーを指差した。
「あ、すみません。……ウィーニーです」
シャクールは、ウィーニーの肩に手を置いて言った。
「こいつもデビルズだ。驚くなよ、エドウィン。こいつはただの人間じゃねえ。神の力を持つハーフゴッドだ!」
その瞬間。
ギークス達は一斉にバッグの中から何かを取り出しウィーニーに向けた。
「マシンガン!? 銃!?」
ガチャッ!
キュイィィィィンッ!
ガトリングガンのような武器の先端が回転する。
シャクールは慌ててウィーニーを庇うように前に立った。
「ちょちょちょ、ちょっと待った! エドウィン! こいつは敵じゃねえ! いろいろ事情があって……!」
「神は、敵。殺せ」
「だから、違うって!!」
その時、クラブの扉がゆっくり開いた。
「Yo、エドウィン。帰ったか?」
「オスカーくん。なんでデビルズに敵がいる?」
オスカーは首を振って、背を向けた。
「敵じゃねえ。デヴィンが中で待ってる。早く来い」
それだけ言うと、オスカーは再びクラブの中に姿を消した。
しばらく沈黙が続いた。
「そうか」
エドウィンは、ギークスに向かって手を上げた。
「お前ら、それしまえ。行くぞ」
エドウィンは、ウィーニーをジロリと見下ろすと、ギークス達とクラブの中に消えていった。
ウィーニーは、大きく息を吐くと膝をついた。
「シャクール。デビルズには、あんなオタクみたいな悪魔も……?」
「ああ。デビルズは、自由だ。お前がいるみたいにな」




