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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第六章 悪魔の代償
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第94話 一本角の隕石 〜地獄が捨てたOne Horn Streetが育てたOne Soul 折れるのはPride 折らねぇMy Road〜

「来い、ジャロン」


 ロベルトは、笑った。


 ジャロンは、小さく呟いた。


「来い、か。オレに向かってそれが言えるようになっただけでも大したものだ」


 ジャロンが一歩前に出る。


 ロベルトは構える。


 消えた。


 その瞬間──


 ロベルトの顔が大きく後ろに跳ねた。


ズドォンッ!!


 音が遅れて届く。


「カハァッ!!」


 仰け反ったロベルトが、血飛沫を上げる。


 拳も、腕も、何も見えなかった。


 ゆっくりと仰向けに倒れるロベルト。


ドゴオオォォッ!!


 今度は上から拳が突き刺さった。


「ゴホオッ!!」


 地面に叩きつけられる。


ドグシャッ!!


 体の形に地面が陥没した。


 一瞬、静寂が落ちた。

ロベルトは、動かなかった。


「どうした、奇形」


 振り上げられたジャロンの拳は、容赦なくロベルトの顔面に落ちる。


ドゴオオッ!!


「どうした、落ちこぼれ」


ドゴオオッ!!


 止まらないジャロンの連打。

最上位魔族のパウンド。


ドォォンッ!


「弱い」


ドォンッ!


「遅い」


ドォンッ!


「二千年経っても、それがお前だ」


ドォンッ!


 拳が振り下ろされる度、大地が揺れ、ロベルトの体が地面に埋まっていく。


 ウィーニーが思わず叫んだ。


「ロベルトッ!!」


 ジャロンは、拳を止め、ロベルトの首を掴んだ。


「おい弱虫」


 ジャロンは、その大きな翼を広げると、ロベルトを掴んだまま飛び上がった。


「落ちこぼれ故、落ちるのが好きだったな」


 ジャロンは、ニヤリと笑うと、ロベルトを地面に向かって投げつけた。


ドゴオオォォンッ!


 既に意識を失っているロベルトは、頭から地面に激突した。


「フン」


 ジャロンは、さらに赤いオーラを身に纏うと、ロベルトに向かって、急降下した。


ズドオオォォンッ!!


 再び、大地が揺れる。


 ウィーニーの拳は震えていた。


「ロベルト……ウソだろ……。あのロベルトが、手も足も出ない……なんて」


 ジャロンは、首を鳴らした。


「二千年か。何も変わらないな、一本角」


 ウィーニーは、デヴィンを振り返った。


 デヴィンは、表情を変えず倒れたロベルトを見ていた。


「立て。貴様の命が尽きるまで、二千年でも三千年でも、続けてやろう」


「……う……くっ……」


 ロベルトは、膝を突き立ち上がろうとした。


 だが、大量の血を吐き、地面に手をついた。


 ジャロンは、哀れむようにロベルトを見下ろした。


「思い出したか、一本角。貴様には、何も出来んことを」


 ロベルトは、口を拭ってフラフラと立ち上がった。


 ジャロンは、腕を組んだまま、それを眺めていた。


「まだ終わるなよ。地獄の粛清はこれからだ」


「ハア……ハア……」


 ロベルトの荒い息遣いだけが響いた。


「思い出したか。泣いて命乞いしたあの日のことを」


 ロベルトは、血を吐きながら笑った。


「カハァッ! ……へへ……へへへ」


「何がおかしい?」


「ああ、思い出したぜ……。てめえの強さを……」


「フン」


 それでも、ロベルトは再び、ゆっくりとジャロンに拳を向けた。


「思い出したぜ、その拳……強え。……強えけど」


 ロベルトは、身を屈めた。


「──空っぽの拳だぁ」


 ロベルトが地面を蹴った。


 ジャロンは避けない。


ドンッ!!


 衝撃音。


 突き刺さったのは、ジャロンの拳。


「ガッカリしたぞ、一本角」


ズドンッ!!


 もう一発。


「貴様が二千年かけて身に付けたもの──」


ズドオオォンッ!!


 もう一発。


「それが、言葉遊び、とはな」


ズドオオォンッ!!


 もう一発。


「下級は、どこまでいっても下級だ」


 ジャロンが、大きくその拳を振りかぶる。


「十分だ、もういい。死ね」


ブンッ!!


 空気を裂いて、拳が振られた。


 ロベルトは動かなかった。


ズボオオォォッ!!


 突き刺さったジャロンの拳。


 瞳が揺れた。


「……へへ」


 ──ジャロンの瞳が。


 ロベルトの手が、その腕を掴んでいた。


 ロベルトは、ジャロンの顔を見上げるとニタリと笑った。


「空っぽの拳じゃ、オレは……ストリートデビルズは、倒せねえんだよぉ」


「何っ!?」


 ロベルトは、腕を掴んだまま懐に飛び込むと、ジャロンを投げつけた。


 一本背負い。


ズドオオォォンッ!!


 今度は、ジャロンの体が地面にめり込んだ。


「ぐぅ……」


 ロベルトは、拳を振り上げ、ジャロンを見下ろした。


「これだ。コレを見たかったんだ」


「貴様……」


「教えてやる。地獄に捨てられて、ストリートに鍛えられた──本物の拳をなああぁぁぁ!!」


 赤い閃光が、ジャロンの顔面を貫く。


ズドオオォォンッ!!


「グハァァァッ!!」


 赤い衝撃波が、戦場を駆け抜けた。


 ジャロンの牙が、宙を舞った。


 たった一撃。


 ジャロンの、視線は、飛んでいた。


 ロベルトは、その拳を手刀に変えた。


「立派なのは、その角だけか、ジャロン」


ブンッ!!


 赤い閃光が、今度は大きく弧を描いた。


バキンッ!!


 ジャロンの曲がった大角が真っ二つに折れた。


「ジャロン、ワンホーンてか」


 ロベルトは、もう一度、腕を振り上げた。


「てめえには、一本角すら……勿体ねえなぁ!!」


バキンッ!!


 ロベルトは、角の無くなったジャロンを無表情で見下ろして言った。


「今では感謝すらしてるぜ、ジャロン。てめえみてえなクズがいたから、オレは強くなれたんだぁ」


 そう言うと、ロベルトは、空高く飛び上がった。


 その頂点で、ロベルトの体が赤く光る。

 炎のように燃え上がる復讐のオーラ。


 戦場の誰もが、ロベルトを見上げていた。


 ロベルトは、静かに目を閉じた。


 そして──


「これで、終いだぁ」


 ──One Horn Impact.


 一本角の隕石が────落ちた。


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