第93話 一本角のプライド 〜泥水すすってStreet Life 二千年越しのOne Fight 笑ったツケは今日払え 返すぜStreet Style〜
「てめえの相手は、このオレだぁ。ジャロン」
ジャロンは、前に立ったロベルトを見下ろして笑った。
「聞こえねえなぁ。オレの相手が、誰、だって?」
ロベルトは、ジャロンの目を真っ直ぐに見つめた。
「あれから、二千年、待たせたなぁ。“返し”に来たぜぇ」
ジャロンは、両手を広げて笑った。
「二千年経っても奇形の一本角は変わらないか。落ちこぼれのチンピラどもに拾われて、少しは夢を見られるようになったか」
ロベルトは、何も言わなかった。
「いいぞ。ま、あの頃のように貴様をぐちゃぐちゃに踏み潰してやろう。思い出すがいい。貴様がどこに逃げようと、脆弱な奇形のゴミだということを! ハハハハッ!」
ロベルトは、拳を握って笑った。
「ジャロン。安心したぜぇ」
「なんだと?」
「てめえがクソ野郎のままで安心したって言ってんだぁ。コレで、心置きなくてめえをぶっ飛ばせるぜぇ」
ウィーニーは、首を傾げた。
「ロベルトと、あの悪魔って、過去に何かあったのか……」
玉座に座ったまま、ロベルトの背中を見つめていたデヴィンは、ニヤリと笑ってウィーニーに言った。
「ガキ」
「は、はいっ!」
「よく見とけよ。あれが、お前らフリークスのリーダー、ロベルト・ワンホーンだ」
「はい!……」
「誰よりも弱く生まれ、誰よりも強くなった悪魔だ。死んでも折れねえその根性。底辺から頂上。駆け上がる下剋上、それでも曲げねえその信条──」
デヴィンは、まるでラップを刻むように口ずさむと、自分の長いコーンローをゆっくり撫でた。
「地獄から蹴り出され、ストリートで生きてきた。あいつこそが、ストリートデビルズ。アウトローの結晶だ」
「アウトローの結晶……」
ジャロンは、漆黒の翼を広げた。
それだけで、黒い衝撃波が戦場を駆け抜ける。
一瞬、戦場の誰もが動きを止めた。
「一本角。今日は、泣いても、叫んでも許さん。来い」
ウィーニーは、その覇気に息を止めた。
「ロベルト……」
ロベルトは、一歩踏み出した。
そして──
ドンッ!
胸を叩いた。
ジャロンは、眉を歪めた。
「何の真似だ、貴様?」
ロベルトは、構わず胸を叩いてビートを刻んだ。
ウィーニーは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
ドンッ……
ドンッ……
胸を叩く音だけが、戦場に響く。
ロベルトは一本角を撫で、ゆっくりと口を開いた。
戦場は、完全に静止していた。
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YO……
一本角ぉ 一本角ぉ
そう呼ばれて二千年だぁ
奇形 欠陥 出来損ない
全部まとめて今日返す番だぁ
逃げた? 違え
生き延びた
折れた? 違え
立ち上がった
泥水飲んで 最底辺で黙ってた
それでも歩いた 二千年
家族も仲間もねぇ
地獄が捨てたこの一本
拾ったのはStreetの野郎ども
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ウィーニーの体が震えた。
「オレと……同じだ。オレは……ロベルトと同じだったんだ」
感情の分からない涙がジワリと込み上げた。
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笑え 笑え
もっと笑え
その笑い声が、オレの燃料だぁ
角は一本 拳は二本
十分だろぉ てめえ殺すにゃ
強さじゃねぇ
階級じゃねぇ
何度踏まれても立つ奴の勝機
最後に笑うStreetの定義
だから見とけよ ジャロン
二千年前の泣き虫じゃねぇ
もう一本角じゃねぇ
見えねえか、デビルズがくれた
この背中に通った 一本筋が
最高位魔族? 魔王の右腕?
だからどうしたぁ
最高の見せ物だぁ
てめえが笑った奇形に
ぶっ飛ばされるんだからなぁ
地獄が捨てた、この一本
Streetが拾った、この命
笑え
最後まで笑ってろ
行くぞ、オラァ
オレが、ロベルト・ワンホーンだぁ!!
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「来い、ジャロン」
ロベルトは、笑った。
風が、止まった。
ジャロンの笑みが、初めて、消えていた。
ウィーニーは、涙を拭って、震える拳を握った。
この戦いを見届ける。
そう決めた。




