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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第六章 悪魔の代償
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第93話 一本角のプライド 〜泥水すすってStreet Life 二千年越しのOne Fight 笑ったツケは今日払え 返すぜStreet Style〜

「てめえの相手は、このオレだぁ。ジャロン」


 ジャロンは、前に立ったロベルトを見下ろして笑った。


「聞こえねえなぁ。オレの相手が、誰、だって?」


 ロベルトは、ジャロンの目を真っ直ぐに見つめた。


「あれから、二千年、待たせたなぁ。“返し”に来たぜぇ」


 ジャロンは、両手を広げて笑った。


「二千年経っても奇形の一本角は変わらないか。落ちこぼれのチンピラどもに拾われて、少しは夢を見られるようになったか」


 ロベルトは、何も言わなかった。


「いいぞ。ま、あの頃のように貴様をぐちゃぐちゃに踏み潰してやろう。思い出すがいい。貴様がどこに逃げようと、脆弱な奇形のゴミだということを! ハハハハッ!」


 ロベルトは、拳を握って笑った。


「ジャロン。安心したぜぇ」


「なんだと?」


「てめえがクソ野郎のままで安心したって言ってんだぁ。コレで、心置きなくてめえをぶっ飛ばせるぜぇ」


 ウィーニーは、首を傾げた。


「ロベルトと、あの悪魔って、過去に何かあったのか……」


 玉座に座ったまま、ロベルトの背中を見つめていたデヴィンは、ニヤリと笑ってウィーニーに言った。


「ガキ」


「は、はいっ!」


「よく見とけよ。あれが、お前らフリークスのリーダー、ロベルト・ワンホーンだ」


「はい!……」


「誰よりも弱く生まれ、誰よりも強くなった悪魔だ。死んでも折れねえその根性。底辺から頂上。駆け上がる下剋上、それでも曲げねえその信条──」


 デヴィンは、まるでラップを刻むように口ずさむと、自分の長いコーンローをゆっくり撫でた。


「地獄から蹴り出され、ストリートで生きてきた。あいつこそが、ストリートデビルズ。アウトローの結晶だ」


「アウトローの結晶……」


 ジャロンは、漆黒の翼を広げた。

それだけで、黒い衝撃波が戦場を駆け抜ける。


 一瞬、戦場の誰もが動きを止めた。


「一本角。今日は、泣いても、叫んでも許さん。来い」


 ウィーニーは、その覇気に息を止めた。


「ロベルト……」


 ロベルトは、一歩踏み出した。

そして──


ドンッ!


 胸を叩いた。


 ジャロンは、眉を歪めた。


「何の真似だ、貴様?」


 ロベルトは、構わず胸を叩いてビートを刻んだ。


 ウィーニーは、ゴクリと唾を飲み込んだ。


ドンッ……


ドンッ……


 胸を叩く音だけが、戦場に響く。


 ロベルトは一本角を撫で、ゆっくりと口を開いた。


 戦場は、完全に静止していた。


────────────────────

YO……


一本角ぉ 一本角ぉ

そう呼ばれて二千年だぁ


奇形 欠陥 出来損ない

全部まとめて今日返す番だぁ


逃げた? 違え

生き延びた


折れた? 違え

立ち上がった


泥水飲んで 最底辺で黙ってた

それでも歩いた 二千年


家族も仲間もねぇ

地獄が捨てたこの一本

拾ったのはStreetの野郎ども

────────────────────


 ウィーニーの体が震えた。


「オレと……同じだ。オレは……ロベルトと同じだったんだ」


 感情の分からない涙がジワリと込み上げた。


────────────────────

笑え 笑え

もっと笑え


その笑い声が、オレの燃料だぁ


角は一本 拳は二本

十分だろぉ てめえ殺すにゃ


強さじゃねぇ

階級じゃねぇ


何度踏まれても立つ奴の勝機

最後に笑うStreetの定義


だから見とけよ ジャロン


二千年前の泣き虫じゃねぇ


もう一本角じゃねぇ


見えねえか、デビルズがくれた

この背中に通った 一本筋が


最高位魔族? 魔王の右腕?

だからどうしたぁ


最高の見せ物だぁ

てめえが笑った奇形に

ぶっ飛ばされるんだからなぁ


地獄が捨てた、この一本

Streetが拾った、この命


笑え

最後まで笑ってろ

行くぞ、オラァ


オレが、ロベルト・ワンホーンだぁ!!

────────────────────


「来い、ジャロン」


 ロベルトは、笑った。


 風が、止まった。

 ジャロンの笑みが、初めて、消えていた。


 ウィーニーは、涙を拭って、震える拳を握った。


 この戦いを見届ける。


 そう決めた。


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