↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
PR
102/112

番外編② 〜星に願いを〜

 子供達は、我先にと短冊を奪い合った。


「お腹いっぱいごはんが食べたい!」

「新しい靴が欲しい!」

「早く、お母さんとお父さんが見つかりますように!」


 賑やかな声の中、一人だけ、隅で黙って鉛筆を握る少年がいた。


 まだ、名前も呼ばれ慣れていない、小さな体だった。


 少年は、しばらく短冊を見つめたまま、動かなかった。


 やがて、ゆっくりと、拙い字で書き始めた。


〜あたらしい なまえを ください 〜


「なあ、それ何て書いたんだ?」


 隣にいた年上の子供が、少年の短冊を覗き込んだ。


「あたらしい……名前?」


 少年は、短冊を隠すように胸に抱えた。


「なんだよ、それ!変なの!」


 その声に、周りの子供達が集まってきた。


「見せろよ!」


「や、やめて……」


 抵抗も虚しく、短冊は奪われた。


「──あたらしい、なまえを、ください、だって!」


 声を上げて読み上げられた瞬間、笑いが起きた。


「なんだよそれ!自分の名前、嫌いなのか?」


「確かに自分の名前がウィーニーだったら、絶対嫌だ!」


「ウィーニー!Weeny!ちっちゃい、弱虫って意味だろ!ぴったりじゃんか!」


 囃し立てる声が、裏庭に響いた。


 少年は、下を向いたまま、何も言い返せなかった。


「星に願ったって、名前なんか変わるわけねえだろ!バーカ!」


 短冊は、地面に落ちて、踏みつけられた。


 シスターが慌てて駆け寄ってくる頃には、子供達はもう別の遊びに夢中になっていた。


「大丈夫?……あら、これ」


 シスターは、汚れた短冊を拾い上げた。


「これ、あなたが書いたの?」


 少年は、答えなかった。


 シスターは、短冊についた泥を、指でそっと払った。


「願い事はなんでもいいのよ」


 少年は、小さく、首を振った。


「……バカって、言われた」


「そう」


 シスターは、それ以上何も言わず、短冊をそっと少年の手に握らせた。


「でもね。願うことは、恥ずかしいことじゃないわ」


 少年は、握らされた短冊を、しばらく見つめていた。


 泥で汚れた文字は、もう半分、読めなくなっていた。


 その夜、少年は、その短冊を、誰にも見えない場所に隠した。


 ── 星に願ったって、新しい名前なんて降ってこない。


 ──そんなの知ってた。


 ── だったら自分で、勝ち取ってやる。


 そう思ったことすら、その頃はまだ、うまく言葉にできなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。