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路地裏のウィーニー  作者: みゃーじま
第五章 アウトローのアウトロー
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第90話 ストリートの王 〜地獄が下した極刑 それでも曲げねぇ俺らの旗 王は生まれじゃねぇ 自分で奪うその頂〜

 暗闇を、赤黒い炎が照らしていた。


 その玉座の足元は、光すら避け、底の見えない闇が広がっていた。


「神が、動いたか」


 玉座の男が、ゆっくりと目を開ける。

それだけで、地獄が、揺れる。


 無数の影が、一斉にひれ伏した。


「それよりも問題は、あの外れ者どもだ」


 ジャロンが、静かに顔を上げた。


「ダマト様。神は、休戦協定が破られた、と」


 ダマトは、表情を変えず、天を突き刺すような牙を、指で撫でた。


「それはよい。だが、戦争の可否は王である我が決定する」


「その通り、かと」


「再三に渡る地獄からの警告を無視し、挙句、許可なく神と交戦とは──目に余る小悪魔どもの所業」


 ジャロンは、下を向いて言った。


「して──ストリートデビルズ、奴らへの処分は?」


「極刑だ」


 ひれ伏した無数の影は、少しも動かない。


 炎の音すら消え、地獄が、静まり返った。


「我が名を背負い、我が命に背いた。もはや魔族にあらず」


 ダマトは、玉座の肘掛けに指を置いた。


「ストリートデビルズを、根絶やしにせよ」


 ジャロンは、魔王ダマトに問い返した。


「根絶やし……。ご子息も、ということで?」


 ダマトは、ゆっくりとジャロンを見下ろした。


 一瞬の沈黙──


「それ以外なかろう」


「……御意」


 ジャロンは、満足げに目を細めると、黒い霧となり、その場から姿を消した。


 一方、13番街に戻ったウィーニーは、クラブの前で話すロベルトとオスカーを見つけた。


 ロベルトの報告を聞いたオスカーは何も言わずにクラブの中に消えて行った。


 ウィーニーは、ロベルトに駆け寄った。


「ロベルト! ……ごめんなさい。オレ、また勝手に……」


 ロベルトは、表情を変えずにウィーニーを見下ろした。


「勝手、だとぉ?」


「はい。すみませ──」


「いいじゃねえかぁ」


「え」


「勝手なのがオレ達、デビルズだぁ」


「ロベルト……ありが──」


「だが、やった事には結果が返ってくる。そのケツ持つまでが、自由ってやつだぁ。忘れんな、ガキィ」


 ロベルトは、それだけ言うと背を向けた。


「ケツ持つまでが……自由……」


 ロベルトの姿が消えると、クラブの中から漏れる重低音が、止まった。


 クラブ666の最深部。

玉座に座るキング・デヴィンは、いつものように肘掛けに手を置き、目を瞑っていた。


 テレンスが、長いドレッドヘアを摘みながら口を開いた。


「やりやがったなぁ、フリークスの奴らぁ」


 フロイドは、手にしたバイクのキーの先でジェシーを差して言った。


「ジェシー。お前がラップかまして突っ込んだんだろう。今回は、お前の責任だぞ」


 ジェシーは、ケタケタと笑った。


「ハハハッ! うるせえよ、フロイド。あのガキは、オレ達の仲間だろうが。助けてやっただけだぁ、ハハハッ!」


 オスカーは、頭を抱えて言った。


「こんな時だけ仲間なんて言葉使うな、ジェシー。お前は暴れたかっただけだろうが」


「あん? なんだオスカー。てめえも、そのつもりでコソコソ動いてたんだろうが、ハハハッ!」


「オレは、常に動いている。お前のように考えも無しに動くことはないからな」


「うるせえよ、インテリめ。殺すぞ、ハハハッ!」


 マニーは、何も言わずトントンと指でビートを刻んでいた。


 テレンスは、大きく息を吐いてマイクの方を見た。


「マイク。どうするよ?」


 マイクは、一瞬間をおくと、デヴィンの方を見ながら言った。


「オレじゃねえ。ここは、キングの声を聞くべきだ」


 クラブに沈黙が落ちた。


 マイクは、トップ6の面々を見渡しながら言った。


「言うまでもねえが……デビルズは地獄からの警告を二度無視して戦争に首を突っ込んだ。ガラクタども、そして今回の神と森」


 マイクは、下を指差しながら言った。


「底の奴らは、もうオレ達を同族だと思ってねえ」


 デヴィンの眉が、わずかに動いた。


「オレ達を、潰しに来る。一人残らず──それが、ダマトだ」


 マニーは、ゆっくりと指でテーブルを叩きながら、オスカーの顔を覗き込んだ。


「オスカー。予想通り、か?」


 オスカーは、天井を見上げ静かに言った。


「フン。結成した日から、その未来は見えていた」


 マニーは、ニヤリと笑った。


「だよな」


 再びクラブに沈黙が落ちた。

ジェシーの爪を噛む音だけが響く。


「デヴィン」


 マイクは、たまらずデヴィンに声をかけた。


「デビルズは、どうす──」


 マイクが、話し始めるのを遮るように、デヴィンは立ち上がった。


 ゆっくりと円卓の周りを歩き始めたデヴィン。

マニーはテーブルを叩くのをやめ、ジェシーは、爪を噛むのをやめた。


カツン。

カツン。


 ブーツの音だけが、響いていた。


 ジェシーの後ろに立ったデヴィン。


「MCナンバー6、ジェシー。オレ達は、誰だ?」


 ジェシーは、即答した。


「ストリートデビルズだぁ、ハハッ」


 デヴィンは無造作にダイスをテーブルの上に投げた。


カラン、カラン。


 乾いた音が響く。

ダイスが示した数字は──“6”だった。


「MCナンバー5、マニー。オレ達は、誰だ?」


「ストリートデビルズ」


 デヴィンは、もう一つダイスを転がす。


カランッ。


 示した数字は、“5”


「MCナンバー4、フロイド。オレ達は──」


「ストリートデビルズだ!」


 ダイスは、“4”を示した。


 テレンスは、眉を顰めた。


「まさか……」


「テレンス。MCナンバー3。オレ達は、誰だ?」


「ストリート……デビルズ」


カラン。


 ダイスは、“3”を示す。


「デヴィン、これって……狙った数字を……」


「MCナンバー2。オスカー、オレ達は誰だ?」


 オスカーは目を閉じたまま言った。


「ストリートデビルズ、だ」


カラン、カラン。


 フロイドが呟く。


「2だ……」


 デヴィンが、マイクの椅子の後ろで足を止めた。


「マイキー。お前は、あのガキを可能性と言った」


 マイクは、前を見据えたまま言った。


「そうだ。そう言った」


 デヴィンは、マイクの肩に片手を乗せた。


「マイキー。お前がここに座る可能性を創ったのは誰だ?」


 マイクは、静かに答えた。


「デヴィン。あんただ」


 デヴィンは続けた。


「マイキー。ストリートデビルズが存在する可能性。創ったのは、誰だ?」


 マイクは、トップ6の顔を見渡して言った。


「キング・デヴィン。あんただ」


 デヴィンは、ニヤリと笑った。


「可能性を創るのは、いつもこのキング・デヴィンだ」


コトッ。


 デヴィンは、マイクの前にダイスを置いた。


“1”


 デヴィンは、マイクの顔を覗き込んだ。


「マイキー。覚悟は出来てんだろうなぁ?」


 デヴィンの目の奥で、赤い光が浮かび上がった。


「てめえの“親父”──殺すぞ」


 マイクは、デヴィンの目を見据えた。


 誰もが、息を止めていた。


 マイクは、小さく息を吐いて言った。


「ああ。やろうぜ、キング・デヴィン。王は、──あんた一人でいい」


 デヴィンは、トップ6に背を向けた。


「ストリートデビルズ。オレ達は、何にも縛られねえ。オレ達より悪い奴は、許さねえ──」


 自室のドアを開け、わずかに振り返ってデヴィンは言った。


「ストリートの王は、オレだ」


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