19.その隣の女性、どなたですか?
そもそも私とクラウス様は幼馴染だ。
ランカスター公爵家が持つ数ある領地の1つがバルディリス領の隣にあり、クラウス様は子供の頃は年に1度、春の季節に遊びに来ていたのだ。すぐ隣の領地に年頃が同じ私と少し年上のお兄様達がいたから、すぐに行き来するようになり仲良くなった。特にクラウス様はお兄様達に懐いていて、私のことは今思えばライバル?子分?ぐらいの位置だったのかもしれないけど。
ランカスター公爵とお父様は仲がよく、仲の良い私達を見て将来は結婚させようと話をしていた。私はそれを真に受けてクラウス様と結婚できるものだと思っていたのだ。
私はクラウス様が大好きだった。大好きで大好きでしょうがなかった。
口は悪いし意地悪だが、何やかんや危険な時に守ってくれたり、鈍くさい私をしれっとフォローしてくれる姿に子供心ながらキュンとしてしまったのだ。
春以外の離れている間も文通をしたり通信器具で連絡したり。なかなか良い関係を築いていたと思っていたのに、年頃になってクラウス様は北の領地にはだんだん寄り付かなくなった。
手紙を送っても返事も返ってこない。通信魔導具を使って連絡しても軽くあしらわれて適当に切られる。クラウス様の親のランカスター公爵夫妻が婚約の話を進めようとしても、クラウス様はサラッとかわすらしく進展しない。
そして痺れを切らした私は王都に乗り込むことにした。王都に住んているユージン兄様のツテで、クラウス様が参加する予定のパーティーの招待状を手に入れたのだ。久々に会う私を見て、大人っぽくなったなとか綺麗になったなとか言ってくれるかしら?と期待して着飾った。ユージン兄様は行かないほうがいい、
しかしパーティーに参加して私が見たものは、妖艶な美女を連れて参加するクラウス様だった。声をかけるつもりでユージン兄様と参加したのに、これじゃあ遠目から見ることしかできない。
「クラウス様はまたヴェルダンディ元男爵夫人とご一緒ね」
「最近のお気に入りはあの方みたいね。未亡人ばかり相手になさって羨ましいわ」
「クラウス様って婚約者がいらっしゃらなかった?」
「あら?私、先日声をかけさせていただいた時はいないとおっしゃってたわ」
「あの美貌と将来が約束された地位でまだ婚約者がいないってかなり良い物件よね。婚約者の座を狙って色んなご令嬢がクラウス様に声をかけてらっしゃるものね」
「でも彼と結婚しても愛人が何人もいることを覚悟しなくちゃね」
「本当よ。私なら自分だけを見てくれる婚約者が良いわ」
近くにいるご令嬢達の会話か耳に入った。ここ最近のクラウス様のことをその会話で知れた気がする。
「えっと…エルレナ…」
「…お兄様知ってたの?」
「ごめん、言えなかった」
「そう…」
所詮親同士の約束。婚約者(内定)ですら彼の中では違ったのだろう。クラウス様は私ではダメだったらしい。確かに頻繁に連絡ばかりしてくる子供っぽい田舎娘では彼に釣り合わない。あんなにカッコイイし魔道士の腕も最高級クラス。そうだよね、美人な女性を選り取り見取りなわけだ。
現実を見て、私の心は完全に折れた。
「私帰る」
「え、ちょっと!」
「あれ珍しいな!ユージンがパーティーに参加するなんて滅多にないのに」
「げ!クラウス」
「げ!って失礼だな。しかも女の子連れてるし」
クラウス様に声をかけられているユージン兄様を置いて会場を出て、私は馬車に飛び乗った。
馬車に乗って1人になると流れ落ちる涙。泣きながらタウンハウスに着くと、お祖父様が心配して飛んできて私の話しを聞くとクラウス様にかなりお怒りだった。
これ以上辛い気持ちで王都にいたくない私は、そのまま次の朝バルディリス領に即旅立った。
私はクラウス様への連絡を完全に絶った。あちらから何度も通信器具で連絡があったけど出なかったし、今さら手紙やプレゼントまで贈ってきたが全部ユージン兄様宛に送った。後はユージン兄様が使うなりクラウス様に返すなりすればいい。ふん。
そしてこっちが避けているにも関わらず、なぜかクラウスが婚約を申し込んできたのだ。こちらから何度伺ってもかわされてた婚約が突然ランカスター公爵家側から舞い込んできたのだ。お父様は舞い上がっていたが、お母様やヴィルヘルム兄様がそれを許さなかった。本来なら身分がかなり上のランカスター公爵家の申し出を断ることはありえないが、公爵夫妻もあれだけ私を待たせた負い目があるのか、無理矢理婚約を結ぶことはしなくて一次保留という形で落ち着いたらしい。でもこのままだとクラウス様と結婚しなくてはならない。愛人を許す生活なんて嫌だし、そもそももうクラウス様に愛層が尽きた。この結婚を回避するためにはどうしたら良いのだろうか。そんな中、お母様から皇太子妃候補の話しを聞いた。来年に婚約者がいない伯爵家上の爵位を持つ家柄の令嬢から候補者を選ぶそう。候補者になるためには教養や作法など皇室に嫁いでも恥ずかしくないレベルを求められる。
ランカスター公爵家より高位の一族はもうこの帝国の中では皇室しかいない。その皇太子の婚約者候補になってしまえば、お父様やランカスター公爵夫妻、クラウス様を納得させることができる!
そう思いついた私はお父様を通じてランカスター公爵に私が皇太子妃候補になって自分の実力を試したいことを話してもらった。実際、公爵にとっても悪い話ではないはず。私が選ばれれば自分の派閥から皇太子妃が出るということだから、ますます影響力が強くなるだろう。クラウス様の婚約者なんて私じゃなくても捨てるほどいるはずだし。
そうして認めてもらい、私は今この場に参加しているのだ。
明けましておめでとうございます。しばらく正月休みをさせていただいてました。更新遅くなりすみません。
今回はほとんどエルレナの独白ですね。




