18.もう手遅れです
「エルレナ」
温室でのクロードとのお茶会が終わり私は自分の部屋に向かっていると、聞き覚えがある声に呼ばれた気がするけど気づかなかったことにした。
「エルレナ!無視するなって!」
後ろからか肩を掴まれ止められた。振り返るとやはりクラウス様だった。
「今はエルレナ殿下って呼んでいただいてよろしいですか?」
「エルレナ」
「私、クロード殿下の婚約者候補なんですけども。呼び捨てはお辞めくださいませ、ランカスター公子様。そして何か御用でしょうか?」
今最も会いたくない奴ランキングナンバーワンに会ってしまった。クロードとの話しの後だから今は顔も見たくないぐらい腹立たしい。この怨念ぶつけてやる!
「あのさ、こないだ両親に確認した。あいつら勝手にお前の皇太子妃選抜の参加許可したんだって?」
「ランカスター公爵夫妻には許可はいただいてます。皇太子妃に選ばれた場合にも認めると言っていただいてますが、何か問題でも?」
「問題しかないだろ!ずっと幼い頃からお前と結婚するって決められてきたこっちの身にもなれよ。今さら違う人と結婚しろって言われても無理だって」
結局クラウス様にとっては私は『昔から親に決められてきた結婚相手』の他ないのだろう。今さら焦られてもこっちだって願い下げだ。
「クラウス様なら他にもっと素晴らしいご令嬢がいっぱいいるではありませんか。私に構わなくても大丈夫かと思います」
「『他にもっと素晴らしいご令嬢』はこの歳だとみんな婚約者がいるだろ」
今のはさすがにムカっときた。そうだよね、この王都には私より『他にもっと素晴らしいご令嬢』はいっぱいいる、たとえ私でなくても。
「クロード殿下の婚約者に選ばれるのはたった1人です。私がクロード殿下の婚約者に選ばれた場合、同じ派閥のアイリーン様がいますわ。中立派でも良いのならマクロン侯爵令息も。私より『他にもっと素晴らしいご令嬢』がいるではありませんか!良かったわですわね」
ニッコリと微笑んで言ったら、さすがのクラウス様も失言に気づいたのかヤバイという顔をし出した。どうしても私と結婚したいのなら、「お前じゃなきゃダメだ!俺と結婚してくれ」とまで言うならまだ納得できたけど。もう手遅れだけど。
「そういうことじゃなくて…」
「あとクロード殿下に圧力かけましたよね!?私の邪魔しないでいただきたいのですが!」
「それは無理。邪魔はする」
「本当に止めて下さい。やり口が汚いです。せめて正々堂々戦わせて下さい。私はどうしてもクロード殿下と結婚したいんです」
いい加減にしないとランカスター邸ぶっ飛ばすぞ。
「逆に何でクロードがいい?俺と結婚のどこが嫌?」
「誠実そうなところとか、優しいところとかです。クラウス様と正反対なところとか」
「アイツもさほど誠実じゃないって。しかも結婚しても側妃だって公認になるし、書類地獄の始まりだぞ」
「それでもいいですわ。書類仕事は嫌いではありませんもの」
今さらそんな苦しそうな顔しないでよ。私はもうあなたに同情すらする気持ちも残ってないってば。
私がどうしてもクロード殿下と結婚したい理由、それはクラウス様と結婚しないですむようにするためだ。
「でも皇太子妃に選ばれなかったら、俺の所に嫁に来てくれるって約束なんだろ?」
「それはまあ。でも選ばれないって選択肢はないですので」
「何その自信。何がなんでも阻止するけど。俺はお前が皇太子妃になるのを邪魔する」
「あら、クラウス様も『昔から親に決められてきた結婚相手』との結婚を阻止するチャンスなのに。それよりも私のことは協力をすることの方が有意義だと思いますわ」
「待って、それ誰から聞いた?」
「あらー?クラウス様がそうおっしゃってたの私聞いたのですが」
「それは違うって。友人達とのノリというか…てかあの場にいた?」
「たまたま王都に来て、たまたまパーティーに参加しただけですわ。そしてたまたま聞いてしまっただけです。とにかく邪魔はしていただいて結構ですが、クロード様に圧力をかけたり、何かを言い含めたりは止めて下さいませ。それはさすがに卑怯だと思います」
「分かった、それはもうしない。でも俺のこともうちょっと考えてみてくれない?」
「もういっぱい考えたので、お腹がいっぱいですわ」
クラウス様も苦しめばいい。私が苦しんだ歳月に比べれば大したことないでしょう。どうせすぐに私に興味だって無くなるだろうし。
「ではユージンお兄様と侍女が心配しているかもしれないので、失礼しますね」
「お前は絶対に俺のところに戻ってくると思う。絶対にそうさせる」
「ありえないです。他の方をお探しください」
今さらそんな言葉いらない。もうすべてが手遅れなのだから。
ギリギリ投稿。皆さん良いお年を!




