15.仕事ぶりについて【エルレナ・ジェラルド(基本ジェラルド視点です)】
皇太子妃選抜が始まってから十数日が経ったけど、クロード殿下と全く会えていないのだ。この数日、書類、妃教育、アルシェとお茶会、代わり映えのない毎日になってきた。殿下と交流する場を設けるってピーラポック侯爵が言ってなかったっけ?偶然会うこともないので仲良くなりようもないし、アピールすらできないじゃん。今日も書類を捌きながら考えていた。
そしてその代わり映えのない毎日を、お茶をしに来た(遊びに来た?)ユージン兄様が持ってきた伝言で終止符を打つことがてきた。
「明日から1人ずつクロードとお茶会するってさ」
ジェラルド・ピーラポック侯爵視点─
「クロード、そろそろ妃候補の令嬢達とお茶でもしてくんない?」
「えー、しなきゃダメ?何の話すればいいの?お菓子とか?ドレスとか?俺興味ないわー」
最近、令嬢達のモチベーションが下がっているのが明らかに分かる。そりゃ書類ばっかりじゃテンション下がるって。
クロードの執務室で今日も俺とクラウスとカーライルは書類を捌き、ユージンはストレッチ、クロードに至っては押しても良いと言われた書類にだけ判子を押す係だ。押しても良いと判断するのは基本俺ら3人だけど。もちろん協議が必要な時は5人で話合う。
「お前の嫁さん選ぶ会だろ。会ってみてフィールドが合うかどうか感じたほうが良いんじゃない?」
「ユージン、それフィールドじゃなくてフィーリングだろ」
「ごほっ、ユージン面白い!」
ユージンの天然発言にもう突っ込み慣れているクラウスは、書類から目を離そうとすらしない。吹き出しているカーライルはツボに入ったみたいで爆笑しているのに。
「フィールドが合うって場所が合うってこと?それじゃあ令嬢達の自室に行けば良いってわけ?」
「だからフィールドじゃなくてフィーリングだって!!」
次のクロードの天然発言にイラッとしたらしいクラウスが魔術を使って本棚から厚い本を取り出し、クロードの前にドンと置いた…いや落とした。本の名前は『言葉の大百科辞典』だ。普通は貴重な魔力をこんな日常生活では使わない、帝国の魔術師の最高ランクを持つクラウスしかできない芸当だ。はっきり言って魔術の無駄遣いだわ。
「フィーリングって何?」
「この辞典で調べようぜ。あれ、どう調べればいいんだっけ?」
「ほらこうやって引いて、このページに書いてあるよ。フィーリングが合うとは波長や考え、感覚が合うことだって」
辞書の引き方すら分からないクロードとユージンを見かねて、カーライルが辞書を代わりに引いてあげている。この2人の前では難しい言葉は使ってはいけないんだよな。
「波長や考え、感覚が合うかー。会ってみないとわかんねえな。でも5人とも1人ずつ会うとキツイな。個人的には3人ぐらいに減ってから会おうと思ってたんだけど」
「令嬢達、大分フラストレーション溜まってるわ。ガス抜きしてあげないと」
「ウチの姉さん、剣の話とか詳しいしクロードと話合うかもよ。ちょっと会ってみてよ。フィーリングが合うかもよ」
「ウチの妹だってちょっと変な奴だけど、可愛いし魔術だってクラウスには及ばないけどヤバイぞ」
「うちの姉さんだってめちゃくちゃ美人だよ!」
アイリーン殿下の弟のカーライル・アルタナとエルレナ殿下の兄のユージンが言い合いを始めてしまった。
「エルレナにはそんな時間割かなくてもいいって。他の4人でお茶会すれば?」
「おい!俺の妹だって頑張ってるんだし除外すんなよ」
「えー、エルレナ嬢とゆっくり話してみたかったんだよね。この前お祭りで話したとき面白そうな子だったし」
「はー?エルレナのことは選ぶなって言っただろ。なんならもう書類しないからな」
「怖っ!クラウス煩いしエルレナ嬢は皇太子妃には選ばないけど、ちょっと話すくらいよくない?」
「どうせ皇太子妃に選ばないなら話す時間とか無駄だろ」
クラウスのワガママ坊っちゃんぶりが発揮されだした。クロードにはエルレナ殿下を選ぶならもう書類仕事しないって脅しているし、今更エルレナ殿下が惜しいならもっと早くから大事にしていればいいのに。俺だってこの皇太子妃候補選抜が始まる直前まで、クラウスにそんな特別な存在の女の子がいるなんて知らなかったし、なんならクラウスは後腐れがない未亡人とかと卒なく遊んでいた。
「いやいや、俺はエルレナがクラウスんとこに嫁に行くのは認めない」
「ユージンが認めなくてもそうなるから。お義兄さんよろしくお願いします」
「お義兄さんって言うな!クラウスみたいなチャラチャラした奴には嫁にやらん!エルレナはジェラルドみたいな温厚な奴のところに嫁がせたいんだよ」
いや俺のこと巻き込まないでくれ。クラウスも睨まないで、完璧に今のは流れ弾っしょ。
「はいはい。クラウスも大人気なく圧力かけない。候補者はみんな平等にしようね。5人とも平等にお茶会をすること!分かった、クロード?」
「はい、平等に会わせていただきます」
これ以上は喧嘩になるからね、とカーライルがこの場を鎮めてくれた。俺ならこのメンバーの中で妹を嫁がせるとしたらカーライルだわ。まあ俺ひとりっ子だけど。
今回は彼らの内輪での話です。5人いるのでごちゃごちゃになりそうで怖かった。




