第三話 6体の竜《ドラゴン》の姿 ~中編~
「……皆は……どんな竜の夢を見たの……?」
ヘレナはこの不思議な出来事に驚きながらも皆にそう問いかける。その問いに一番最初に答えたのはフローナだった。
「……──私は、紅い竜の夢を見た……。翼も鱗が炎みたいな紅色で、眼が緋色ってやつかしら……確か……名前は──
──火竜〖ardent dragon〗──」
その時フローナのすぐ後ろで、突如炎が燃え上がる。
そして次の瞬間──
「──え……?……どうして──」
「……信じられない……」
「──うそ、でしょ……」
「──まさか……うそだろ……?」
「……おいおい……マジかよ……」
「……あ……あ……あぁ……」
紅き竜が……その姿を現した……。
そして……聞こえた──
竜の声が──……
『──呼んだ……?』
するとフローナが困惑しながら声の主に答える。
「……よ、呼んだわけじゃないわ……。ただ、名前を言っただけよ……?」
『あら、そうなの?』
「えぇ……」
『あ、そうだわ。フルネームで呼ぶの大変でしょ? だから、私のことは〖アーデント〗って呼んでいいわ』
「……アーデントね? わ、わかったわ……」
──…………
紅き竜とフローナとの会話が終わると、場が静まり返った。
「……どうしたの?皆、黙りこくっちゃって……」
フローナが皆にそう問いかけた。皆はフローナを見て唖然としている。
最初に言葉を発したのはスティーブだった。
「──お前、誰と話してんの……?」
その言葉にフローナは思わず、「え?」と口にする。
「……この、竜と、だけど……?」
フローナがスティーブの問いに答えると、ウィリーが声をあげフローナに尊敬の眼差しを向けた。
「わぁぁあああ!! すごいよ、フローナちゃんっ!!! 竜と話せるなんて……!! ぼ……ぼ、僕にもできるかな?! 自分の竜とだったら、話せるかな?!」
すると、ウィリーは夢で見た竜を思い浮かべながら少しずつ話し出す。
「確かね、僕が夢で見た竜は──翼と鱗が葉っぱみたいに綺麗な黄緑で……眼が綺麗な翡翠の色で……名前が──
──風竜〖aeolian dragon〗──!!」
その時ウィリーの背後で、突如竜巻が起こる。
そして──
『呼んだぁ?』
無邪気な声が、竜巻から現れた黄緑色の竜から聞こえた。
「呼んだ呼んだ!! ねぇねぇ! 君が僕の竜?!」
『そうだよ。僕のことは〖イオ〗って呼んでよ! フルネームで呼ぶのは大変でしょう?』
「うん、わかった! じゃあ僕のことはウィリーって呼んで!」
『リョウカーイっ!』
──…………
ウィリー以外は竜の姿に驚いているだけで会話には入ってこない。
「皆、僕の竜の声、聞こえる?」
ウィリーがそう聞いてみるが、皆は首を振っるだった。さっき火竜の声が聞こえたフローナにも風竜の声は聞こえなかったようだ。
「……どうしてかなぁ?」
ウィリーは何気につぶやく。すると風竜が答えてくれた。
『僕たち竜同士では普通に話すことができるんだけど、人間と竜の場合、人間は契約した竜とし話せないんだ。
でも、竜にはどの人間の言葉でもわかるんだけどねぇ」
「……ふぅん……そうなんだ」
ヘレナは何気にそう呟いた。
「「「「「──え?」」」」」
ヘレナの発した言葉に、ウィリー達5人はヘレナを見つめ、きょとんとしている。それに比べ2体の竜はヘレナをまるで訝しむような目で見ていた。
「──今、僕の竜が言ったこと、わかったの……?」
ウィリーはヘレナに問いかけた。
するとヘレナは頷いて
「……え? ……うん、わかったよ?」
そう答える。
どうやら彼女はまだ気づいていないらしい。
契約をしていないはずの、
風竜の言葉がわかったということに──……




