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新しい私と、夕暮れのベンチ

第2期・第3章。

これまでの孤独な「女王」の殻を破り、山城先輩がいよいよ学校で新しい一歩を踏み出します。和樹の手によって生まれ変わったヘアスタイル、そして指元に輝く約束の証。過去の誤解が解け、周囲との絆が結ばれていく学園生活と、家に帰ってからの二人だけの愛おしい日常の続きを描きます。

朝食の後、和樹は山城を鏡の前の椅子に座らせた。

「少し髪型を変えてみようぜ」

和樹の器用な手先が、彼女の美しい銀髪を整えていく。彼女の鋭く切れ上がった美しい瞳に合わせつつも、全体の印象を柔らかく、どこか可憐な少女のように仕上げた。

鏡を覗き込んだ山城は、そこに映る見違えるほど瑞々しい自分の姿に目を丸くした。

「……これが、私?」

和樹は背後からそっと彼女の肩を抱き、頬にキスをした。

「そうさ。新しい人生の始まりだ、楽しんでいこう」

登校の準備中、ベッドの片付けをしていた山城は、シーツに残った小さな痕跡を見つけて顔を真っ赤にした。

「ねえ、和樹……これ……」

和樹は少し照れくさそうに笑いながら、手際よくシーツを外して洗濯機に放り込んだ。

「気にするなよ、奥さん」

「……もう、その呼び方は恥ずかしいって言ってるじゃない」

からかう和樹に頬を膨らませつつも、山城の心は温かさで満たされていた。

学校へは少し時間をずらして入った。山城の指には、和樹から贈られた婚約指輪が堂々と輝いている。

新しい髪型に変えた彼女が教室に入ると、一瞬、誰もそれが「山城」だと気づかなかった。いつもの席に座って初めて、クラスメイトたちは驚愕した。

「おい、あの怖い先輩、めちゃくちゃ美人になってないか……?」

これまでは遠巻きに見ているだけだった女子生徒たちが、おずおずと彼女の席に近づいてきた。

「あの……山城先輩。今まで、勝手に怖い人だって勘違いして避けてて、ごめんなさい……」

山城は少し驚いたが、すぐに穏やかな微笑みを浮かべた。

「いいのよ、気にしていないわ」

過去のわだかまりを一切責めず、差し出された友情の手をまっすぐに受け入れる彼女の器の大きさに、クラスメイトたちは彼女の本当の優しさを知るのだった。

女子たちと話していると、一人が彼女の指輪に気づいた。

「先輩、その指輪って……もしかして」

「ええ、彼氏からの大切な贈り物よ」

「ええーっ! 先輩に彼氏!?」

教室が色めき立つ中、ちょうど他クラスから沙羅が飛び込んできて山城に抱きついた。

「先輩! 今度の休み、また先輩の家に遊びに行ってもいいですか?」

山城はクスッと笑って「また今度ね」と優しく頭を撫でた。

放課後、正面玄関で待っていた和樹と合流した。二人は自然に手を繋ぎ、夕暮れの街を歩き出す。

「今日はどうだった?」

「最高の1日だったわ。友達がたくさんできたの」

嬉しそうに語る山城の頭を、和樹は優しく撫でた。

「よかったな。でも、新しい友達ができても、俺のことを忘れるなよ?」

山城は顔を赤らめると、自ら和樹の唇にそっと触れた。

「忘れるわけないじゃない」

アパートに戻り、山城が部屋着に着替えてリビングに向かうと、和樹がキッチンで夕食を作っていた。

和樹は振り返り、彼女の姿を見てふと手を止めた。インダクションの火を消すと、山城をそっとキッチンのカウンターに座らせる。

「……和樹?」

首に腕を回しながら不思議そうにする山城の胸元を、和樹がじっと見つめた。

「なんだか、いつもより少し……その、大きく見えないか?」

山城は一瞬フリーズしたあと、耳まで真っ赤にして彼の胸を軽く叩いた。

「バカ! 何を突然聞いてるのよ!」

「いや、気になってさ」

「……その、今は家だから、補正のある下着をつけていないの。だから……そう見えるだけよ」

恥ずかしさに耐えかねて俯く山城の耳元で、和樹が「奥さん」と囁くと、彼女の緊張は一気に融けていった。

「……あなたを信じてるんだから、ちゃんと守ってね」

「ああ、もちろんさ」

和樹は彼女の首筋に優しくキスを落とし、二人は仲良く並んで夕食の仕上げをした。

食後の散歩がてら、二人は近くの公園へと向かった。

山城はある古びたベンチを指さした。

「和樹、ここ……私たちが初めて出会った場所ね」

彼女は和樹の腰に腕を回し、愛おしそうに胸に顔を埋めた。

「あの時は、世界中で自分が一番不幸だと思ってた。でも、あなたが見つけてくれたから、今の私があるの」

和樹は彼女の身体を少し離し、その顔を覗き込んだ。そこには、嬉し涙を光らせながらも、心から幸せそうに笑う彼女の素顔があった。

「過去の話はもうおしまいだ。これからは前だけ見よう」

夜、部屋に戻った山城が、甘えるように両腕を広げた。

和樹は迷わず彼女を抱き上げ、寝室のベッドへと運んだ。お互いの温もりを感じながら、二人は深く穏やかな眠りへと落ちていく。

翌朝。

和樹が目を覚ますと、いつも隣にいるはずの彼女の姿が消えていた――。

学校での雪解け、そして二人の出会いの場所での誓い。山城先輩の過去の傷は、完全に癒えようとしています。しかし、幸福な朝に突如として消えた彼女の姿。一体、山城先輩の身に何が起きたのでしょうか?

次回、新章突入。和樹の前に現れる、山城の「過去」を知る新たな人物。二人の固い絆が試される、緊密な展開が始まります。次回もお見逃しなく!

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