一話・再会
一話 再会
早朝、テクノポリス中央広場に、朝もやの中、三人の人影が見える。三人のうち一人は背中に剣を背負い、残りの二人は腰に剣を差していた。そして、誰かを待っているのか付近の様子をきょろきょろと見回していたが、広場に向かってくる一人の男に目を留める。
「おーいっ 隊長 」
三人の中の一番大柄な男が、こちらに向かってくる人影に手を振った。向かってくる男の方も三人に気付いたようで笑顔になる。
「早いな もう着いてたのか 」
向かってきた男、ミナミが笑顔で言う。
「遅れるといけないから、昨日の内にユーナ先生に送ってもらったの 」
三人の中で背中に剣を背負ったノッコがミナミに説明する。そして、ドーバとハーシも笑顔でミナミを迎え、みんなはがっしりと握手した。
そうしている内に他の隊員も集まって来た。
「久しぶり、ノッコ 元気だった? 」
「キャスー うん、元気だったよ 」
「紹介するよ こちらがドーバ、ノッコ、ハーシ キャスタリア村の三人だ そして…… 」
「……キャスー 」
「…ラン と言います 」
「ミキディー です 」
ミナミが紹介する前にそれぞれが名前を名乗った。ミナミは苦笑すると後を続ける。
「シンフォニー家の三姉妹だ 」
「よろしくお願いします 」
お互いに挨拶を交わし握手する。ミナミは今の内に気になることを訊いておこうと思ったのか、ドーバに話し掛ける。
「ドーバ 君の持っているその剣 もしや…… 」
「ああ この剣はイノ先生から貰った聖剣シュバルツハンマーだよ 」
「やっぱり、聖剣か 去年、イノさんがカシギ様に、聖剣を三本、ぜひ譲ってくれと教授と一緒に熱心に頼んでいたのは、君たちの為だったのか それで、その聖剣はもう使いこなせるのかい? 」
「俺たちの為…… 」
ドーバ、ノッコ、ハーシは顔を見合わせ、自分の聖剣を握り締める。そして、力強く頷く。
「この一年、ユーナ先生に鍛えてもらったから大丈夫さ でも、聖剣にはさらに上の力があると言われたけど、そこまではまだ引き出すことが出来ないんだ 」
ドーバは残念そうに言うが、ミナミは、いやいやそれでも十分戦力になると言う。
「まず、聖剣を使いこなすには相当の鍛錬が必要になる それに聖剣との相性もあるからね 」
「相性なんてあるんですか 」
ハーシが驚いた顔で言う。
「そうらしいよ 相性が合わないと本来の力が発揮できないどころか、何かペナルティも発生するらしい 」
そう言いながらミナミは、三人と聖剣を見比べる。
「まあ、君たちの剣はイノさんが選んだものだから、その点は間違いないだろうけどね それにしても羨ましいかぎりだ 」
「隊長でも、聖剣が欲しいと思うんですか 」
ドーバの質問にミナミは頭をかく。
「前に言ったろ、ドーバ 戦場に立つ時には出来るだけ良い装備を整えていくのがベストだ 少しの装備の違いで生死を別けるからね 」
ミナミの言葉で、三人に緊張がはしる。これから、本当に生死をかけた戦いが始まるのだ。その時、ノッコの背負っている白い羽のような剣を珍しそうに見ていたキャスーが言う。
「ノッコの背負っている剣も聖剣なんだよね? 」
「うん ノッコのもそう 聖剣ヴァイスフェーダーってゆうの 」
「ちなみに僕の剣は、ブラウシャッテンという聖剣です 」
ミナミたちは三人の持つ聖剣を改めて興味深そうに見つめる。そして、ミナミはうんうんと一人頷きながら三人に言った。
「聖剣を持つ者が三人もいるとなると、僕の部隊は、このテクノポリスでも戦力的に相当上位の部隊になるな 」
ミナミが、キャスーたちにも、そうだろうという顔で同意を求める。
「えっ そうなの? 」
ノッコたちが驚いて訊き帰す。
「そうさ カイ隊長のヒーロー隊が一番大きいんだけど聖剣を持っている隊員はいないしね もっとも、カイ隊長のところは全員ノイメンだから別の面で凄いんだけど 」
そんな事を、みんながわいわいと話している内に残りの二人、ショウとパンダがやって来た。改めてお互い自己紹介する。
「ショウとパンダは、僕の古くからの仲間で一緒に修行した同志だ 腕もたつし、頼りにしてくれていいよ 」
ミナミの言葉に、二人は照れながら、よろしくと頭を下げた。
「それじゃあ、みんな 円陣を組んでくれ 」
ミナミが皆を見回して言う。そして、ぐるりと円陣を組んだ一同は、中央で手を重ね合わせる。
「これから僕が誓いの言葉を言う みんな、僕の後に続いて言ってくれ 」
ミナミはみんなの顔を見回した後、大きく息を吸う。
「僕たちは、いちがんとなって明るい未来を取り戻す事を誓う 」
ミナミに続き、ノッコたち一同が誓いの言葉を大きな声で唱和する。
「僕たちは、いちがんとなって明るい未来を取り戻す事を誓う 」
それを遠くからイノやユーナたち、カイ隊長たちも見つめていた。ゴンタもイノの足元で耳を立て目を大きくして見つめている。そして、早朝の広場に響き渡る彼らの声に、それを見つめる彼らの胸も熱くなっていた。