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いちがん ーBelieveー  作者: とらすけ
六章 誰かが落とした悲しみ

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 二話・聖剣の力


 二話 聖剣の力



 ノッコたちが、ミナミと合流する半年前、キャスタリア村。


「どうだ ユーナ 順調に進んでいるか? 」


 イノがノッコたちの指導をしているユーナに尋ねる。


「うん 到って順調よ ノッコたち、真剣だから覚えるのも早いわ それにしても、改めて三本とも凄い聖剣と感じるわね 」


 ユーナはノッコたちの持つ三本の聖剣の力に圧倒されていた。


「あんた、本当、欲が無いね 一本でも欲しいと思わなかったの? 」


「俺が? いや全然、思わないけどな 」


「賞金にも賞品にも興味なし あんた、欲しいものとかあるの? 」


 イノは呆れたようにユーナをじっと見つめる。イノに見つめられユーナはハッとする。


「まさか あんた、私のこと…… それはダメ 絶対ダメ ダメダメダメッ! 」


 ユーナは顔を赤くすると慌てて体の前で手を振る。イノはさらに呆れた顔で、


「ユーナ お前、本当に馬鹿だろう…… 」


 ゴンタも可笑しくて堪らないというように、イノの足元で転げ回っていた。そこへ、マゴットとコッコがやって来る。


「どうしたんだ、ゴンタ殿 」


 転げ回るゴンタを見てマゴットとコッコも不思議そうな顔をする。


「ユーナがおかしなことを言って、それがゴンタのつぼにはまったらしい 」


「ユーナがおかしなことを言うのは何時ものことだ 」


 マゴットが、しれっと凄いことを平気で言う。その時、殺気に気付いたコッコはそろそろと後退りする。イノもユーナの引きつった顔を見て、そっとゴンタを抱き上げると気付かれないように距離をおく。ゴンタもイノに抱かれながら、耳をペタッと折りたたみぷるぷる震えていた。


「マゴット 」


 ユーナの声で顔を上げたマゴットは息を呑む。


「ローゼパイチェ 」


「フェストゥンク」


 剣の力を解放したユーナの斬激を、剣の力を解放してマゴットが受ける。しかし、ユーナはさらに……


「ローゼパイチェ 大切断っ 」


「フェストゥンク 磐石っ 」


 お互いに剣の力を解放し合い、ある意味息のあった掛け合いをする二人を、イノとゴンタ、それにコッコは遠巻きに呆れながら見ていた。ノッコたちも何が起こったのか手を止めて唖然と二人を見ている。


「よーし 夫婦漫才はそこまでっ 」


 イノの大声で二人はハッと我に変える。そして、辺りを見回しばつが悪そうに下を向いた。


「まったく いい大人が何やってんだ 」


「ごめんなさい 」


 ユーナは素直に謝ったが、マゴットは不服があるのか口を開き、我が悪いんじないと訴えようとする。そこをコッコが、もう余計なことを言うんじゃないと咄嗟にマゴットの口を塞ぐ。


「マゴット先生が来てくれたので、お前たちの力をチェックするぞ 」


 イノはポカンとしているノッコたち三人に声をかけ、マゴットに彼らの剣を受けてくれと伝える。そして、ユーナに彼らが合格点に達しているかきちんとチェックしてくれと頼んだ。


 マゴットが広場の中程まで進み、ユーナも近くまで歩いていく。


「なあ、コッコ あの二人、大丈夫なのか 」


 心配になったイノがコッコに尋ねる。


「イノは見るの初めてか あいつら、たまにやるんだよ でも、心配することはないさ お互いに信頼し合っているから出来るんだ 」


「そうなのか 」


 イノは、それなら良かったと胸を撫で下ろす。そうしているうちに、一番手のドーバがマゴットに向かって踏み込んでいた。


「シュバルツハンマー 」


 そして、聖剣の力を解放し、マゴットに斬撃を浴びせる。


「フェストゥンク 磐石 」


 マゴットが、ドーバの剣を受ける。ドーバの一撃で、広場の地面が地震かと思うほど激しく揺れる。凄まじい威力だが一撃打っただけで力が消えていた。


「威力は凄いけど一発だけじゃ苦しいわね せめて、一度の解放で三回は使えるように頑張って 」


 ユーナは、ドーバにアドバイスする。


 次にノッコがマゴットに向かう。


「ヴァイスフェーダー 」


 ノッコが剣の力を解放する。すると、剣がノッコの手を離れ空中を飛びマゴットに襲い掛かる。ノッコが離れた場所で両手をまるで踊るように動かし剣を操作する。しかし、10秒ほどたつと、ノッコの手に自動的に戻ってきてしまった。


「ノッコの剣も凄いけど、操作できる時間が30秒くらいは欲しいわよね 」


 ノッコは、この短時間でもかなり消耗したようで肩で息をしながら、うん頑張るとユーナに答え、ハーシに場所を譲った。

 そして、ハーシが剣の力を解放しようとした時、マゴットが手を挙げる。


「我も少し休憩させてくれ 」


 立て続けに二段階目まで力を解放した為、マゴットもかなり消耗していた。


「破壊力ではドーバの剣が一番だな でも、ノッコの剣が一番使い勝手が良さそうだ 」

「俺はハーシの剣が一番汎用性が高い気がする 」


 イノとコッコは地面に腰を下ろし、あれこれと話しているうちマゴットが再開オーケーと合図する。


「ブラウシャッテン 」


 ハーシは集中し剣を振ると、鍵のような剣の剣先から風船のような膨らみが現れ、それはどんどん大きくなり女性の人型のようなシルエットになる。


「モーント、出撃っ 」


 ハーシの指示でモーントと呼ばれた人型は前傾姿勢をとると地面を蹴る。そして、瞬間移動のように、あっという間にマゴットとの間合いに入るとパンチを繰り出す。


「カイ隊長のドッペルと似ているけど違うんだよな 」


「そうだな カイ隊長はカイ隊長の精神と連動しているけど、ハーシは指示を出せば後はあのモーントという人型が自分で攻撃してくれる 」


「どちらも一長一短がありそうだけどな 」


「俺やコッコのヴァッフェや聖剣も長所短所があるからな あとはそれをいかにうまく使いこなせるかだな 」


「ハーシの成長に期待か 」


 二人が話している間に、パンチを繰り出していたモーントがまるで霧のように消えてしまった。


「はいっ ハーシも課題は持続力ね もっと長時間解放していられるように頑張りなさい 」


 ユーナは三人を集めると続けた。


「聖剣の力を解放出来るようにはなったけど、まだまだみんな実際に戦えるレベルにはなってないわ 厳しいようだけどあと半年で実戦レベルまで到達しないといけないから、びしびしいくわよ 」


「はーいっ 」


 体力の消耗で力ない返事だったが、ノッコたちの瞳は輝いていた。


「マゴット あなたからも何かある 」


 ユーナに話を振られたマゴットは、そうだなと考えながら言う。


「我とユーナとコッコは、ノッコたちと同じように三人一緒に聖剣を手に入れた でもやはりなかなか使いこなせなくてな そんな中、ユーナが一人どんどん使いこなせるようになっていったんだ 」


 三人はマゴットの話を身を乗り出すようにして真剣に聞いている。


「何かコツがあるのか、ユーナに訊いてみたが本人も分からないようだった それでも考えているうちに気が付いたんだ ユーナはノイメン 普段からロケット砲を使うときにそのイメージをしてる 聖剣を使う時にもそうなんじゃないか 」


 ハーシがごくりと唾を飲み込み、ノッコとドーバも息をするのを忘れるくらい話に聞き入っていた。


「それから我も、聖剣を使う時に意識してイメージするようにした するとだんだん、それまで短時間で切れていた効果が持続するようになったんだ つまり、聖剣を使う際にもそれを使うイメージが大切だと思うぞ ノッコたちも自分の使う聖剣の強固なイメージを持つことが重要だと認識することだ 」


 マゴットが話し終わると、ユーナが見直したというようにぱちぱちと拍手した。


「みんな マゴットの言ったことわかった? 」


「はい わかりました 」


 三人は先程と変わり元気に答えると、三人でわいわいと話しだした。


「つまり 僕たちがもっと強いイメージを持てばいいわけですよね 」


「ノッコの場合 もっと早く、もっと強く、もっと長く、剣を操作するイメージを持てばいいんだよね 」


「俺は もっと強く敵を叩き潰すイメージか 」


 三人は手を合わせると、おーっと掛け声を上げる。


「マゴット先生 ありがとう 試してみます 」


 三人はマゴットにお辞儀すると、走り出していった。それを見送りながらユーナとマゴットは嬉しそうに微笑んでいた。


 ミナミとの約束の日まで、あと残り半年。三人もそれまでに一人前になろうと頑張っていた。


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