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いちがん ーBelieveー  作者: とらすけ
九章 神々の黄昏

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四話 神獣・八俣遠呂知


 四話 神獣・八俣遠呂知



 砦に近付くにつれ八俣遠呂知の巨大さが際立って見える。あの巨体ではキューの砦など一溜まりも無いだろう。それでも、砦には人が残って死守する考えのようだ。


「いけないっ、砦なんかまた作ればいい 教授っ、早く全員を避難させてくれ 一番大切なのは人の命だっ 」


「もちろんだとも 」


 教授は車から飛び降り、砦に向かって走っていく。イノたちは砦を抜け、八俣遠呂知に向かって駆け出していた。そして、倒れているコッコとカイを発見する。


「コッコ、大丈夫? 」


 ユーナが声をかけるとコッコは頷いた。


「大丈夫だ あの神獣、斬っても斬っても再生しやがる くそっ、俺にもう少し力があれば…… 」


 コッコが悔しがるが、イノは違うぞとコッコを窘める。


「人一人の力には限界がある いくら、コッコが強くても”個”の力では、それ以上の”個”が現れれば勝てないだろう その為に仲間がいる ”個”では勝てない相手でも、仲間と力を合わせて”いちがん”となって戦えば勝てるだろう 一人で無理する事はないんだ 俺たちを信じろ 」


 イノの言葉にマゴットは腕を組み何か考えているようだった。


「ところで、何であいつらが戦っているの? 」


 ユーナが八俣遠呂知と戦っているギルモアたちを指差す。戦っているのはカイの部下であるマツやガオたちかと思っていたが、よく見るとそれはヘルシャフトだった。


「あいつら、あの時の神将か なぜ、あいつらが 」


 マゴットも声を上げるが、カイが説明する。


「なるほど、あいつらにとっても神獣は邪魔という訳か 」


 ヘルシャフトの神将たちの凄まじい戦闘力を知っているイノたちは、その戦いぶりをある意味期待を込めて見ていた。ギルモアとライトが高速で八俣遠呂知を斬り裂き、メイスンとバレットが衝撃波と音の斬撃でダメージを与えている。しかし、それでも八俣遠呂知は瞬時に再生し、攻撃を仕掛けてきていた。


「あいつらの、あの攻撃でもダメージなしか やはり教授のいう通り何かルールを見つけないと撃退するのは不可能みたいだな 」


 イノは八俣遠呂知と戦うヘルシャフトの神将たちを見ていたが、その攻撃力は人間の力を超えている。それでも、八俣遠呂知の進軍を止める事が精一杯だった。


・・・このままでは埒が明かない 何か手はないのか ・・・


 イノもゴンタもユーナも、うーんと腕を組んで考え込んでいた。そこで、やはり腕を組んで考えていたマゴットが声を上げる。


「さっきイノが言った言葉で思ったのだが、あの八つの頭を持つ竜 その複数の頭に意味があるのではないか 」


「どういうこと 」


 ユーナが意味が分からないとマゴットに尋ねるが、イノとゴンタは成る程という顔をしていた。


「さっき俺が言った”個”の力の事か 仲間と力を合わせればと言った 」


「そうだ、我はそれがルールなのではと思うぞ 」


「確かに試してみる価値はあるな 」


 二人だけで納得している事にユーナは膨れていた。


「ちょっとぉ、何、二人でこそこそ言ってるの みんなに分かるように話しなさいよ 」


 ユーナは膨れて言うが、ゴンタもコッコもカイもユーナの顔を、分からないのかと呆れて見ていた。


「えっ、なによその顔…… 」


 ユーナは周りから見つめられ顔が真っ赤になっていた。


「あんたたち、感じ悪いわね 私はね、もし私の認識が間違っていたら不味いから確認の為に訊いているのよ 」


 ユーナは、ふんという態度で言うが、その顔は早く言いなさいよ急かしているようであった。


「我が思ったのは、あの竜の八つの頭を同時に破壊するという事だ それが出来る心を一つにした攻撃 それが、あの竜を倒す方法なのではと考えた 分かるか、ユーナ 」


「分かるわよ つまりそれが出来る団結した力を見せろという事ね 簡単じゃない 」


「簡単かな、ユーナ ここにはゴンタや倒れているコッコを入れても6人しかいない しかも、あの竜の頭を倒せる程の破壊力のある攻撃を出来る者は少ないだろう 」


「確かに我では無理だろうな 防御には自信があるが 」


「俺も攻撃力という点では自信がないな 」


 マゴットとカイが自信なさげに言う。


「これから来る者たちを待っている時間もない つまり、俺たちとあのヘルシャフトで協力して八俣遠呂知を撃退しなければならないんだ 奴らも、あの八俣遠呂知が邪魔のようだから協力はしてくれるだろうが、心を合わせる事が出来るかどうか ユーナ、あいつらと心を一つにして戦う事が出来るか 」


 イノの問いにユーナは唇を噛んでいたが、きっと顔をあげる。


「やるわよ 私は出来る それがこの砦を、人間を守る為ならなんでもやる 」


 固い決意に溢れたユーナの眼を見たイノは、頷くと八俣遠呂知と戦っているヘルシャフトに目を向ける。ヘルシャフトは、いくら攻撃を加えても再生してしまう八俣遠呂知に手を焼き、撤退しようとしていた。彼らにすれば、ここで無理に八俣遠呂知を止める必要もない。一旦退いて作戦を練れば良い。砦が破壊されようが関係ないのだ。


「ここは一度退くか 」


 ギルモアの提案に他のヘルシャフトも同意した時、イノが声をかける。


「待てっ、ギルモア 提案がある 」


「提案とはなんだ? 人間が我らに提案? 」


 イノの言葉でヘルシャフトが集まって来る。ユーナたちは聖剣やヴァッフェに手をかけ戦闘態勢に入り緊張した顔でいるが、イノがそれを押し止める。


「あんたらも、あの神獣が邪魔なのだろう だったらここで協力して神獣を倒さないか 俺たちが協力すれば奴を倒せる 」


「はははっ、人間ふぜいが何を言う 我らが倒せぬものを協力して倒す 笑わせるな この不死身の化け物をどうやって倒すと言うのだ 」


「まあ、落ち着けメイスン こやつらの方がこの星に住み着いて長い 何か情報を知っているのかもしれん 」


「ふむ、ギルモアがそう言うなら、まあ良かろう 」


「そうだな、人間 提案とやらを言ってみろ それによっては我らも協力するが、そこの倒れている男の戦力を当てにしているなら却下だ 戦ってみて分かったが、奴はいくら凄まじい攻撃力を持っていても倒せぬ 」


「そうだな この星の神獣と言われる怪物にはルールというものがあるらしい そのルールに乗っ取った攻撃でないと倒せない 逆に言えばそのルールの攻撃をすれば倒せるという事だ 」


「そのルールが分かっているのか、人間 」


 ギルモアたちも興味が湧いてきたようだった。神獣は、まだ他にも存在している可能性がある。ここで神獣を倒すルールというものを学ぶ事が出来れば、それは自分たちにとっても有益な情報になるはずだ。


「それは是非訊いてみたいね 僕たちにとってもそれは重要な情報だ 」


「分かった 」


 イノは全員に急いで八俣遠呂知の攻略法を話し始めた。八俣遠呂知はすでに傷が回復し、キューの砦に向かって進み始めていた。




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