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いちがん ーBelieveー  作者: とらすけ
九章 神々の黄昏

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三話 砦の攻防


 三話 砦の攻防



 近付いてくる八俣遠呂知(ヤマタノオロチ)の姿がだんだんとはっきり見えてきた。


「真っ直ぐにこっちに来るな 」


「あの大きさはなんだ あり得ない大きさだ あの巨体をどうやって防ぐ 」


 コッコとカイは砦の上から八俣遠呂知を見つめているが、遠目にもその巨大さは際立っていた。巨獣ダムが赤ん坊のように感じる。


「とにかく、奴がここにくる前に方向を変えないとひとたまりもないぞ 」


「そうだな、あんな奴がいるとは想定外だからな 俺が砦から出て奴の注意を引く 教授に連絡して奴が興味を示す物を調べてくれ 」


「いや、待て 一人では無理だ 俺も行く 教授への連絡は砦の者に頼もう 」


「分かった 」


 コッコとカイは急いで準備を整え、教授への連絡を頼み、砦から出撃した。もう既に八俣遠呂知が近づいてくる地響きが伝わってくる。真っ直ぐにこちらに来られては、砦などひとたまりもなかった。コッコとカイは砦から出撃すると一直線に八俣遠呂知に向かって駆け出した。八俣遠呂知に近付くにつれ、その巨大さが際立ってみえる。


「こいつは、何とか足止めしないと砦が一撃で破壊されそうだな 」


「とにかく、こいつの足に集中して攻撃を叩き込んで動きを止めよう 」


 コッコとカイは頷きあい、剣を抜いて八俣遠呂知に斬りかかる。が、八俣遠呂知は何事もないように進んでくる。逆に、コッコとカイは八俣遠呂知の巨大な脚に踏み潰されないように避けながら攻撃を繰り返していた。しかし、何度斬撃を打ち込んでも、即座に再生されてしまう。不死身の怪物といわれる通りの化物だった。


・・・くそ、これでは駄目だ ・・・


 カイはヴァッフェを取り出し八俣遠呂知に向かって投げる。


「ドッペル 」


 雷電を装着した事により電撃を纏ったカイの分身が八俣遠呂知に斬りかかった。


ズバァッ!


 カイの分身が八俣遠呂知の脚を斬り裂く。そして、電撃のダメージが追撃される。すると、先程まで瞬時に再生していた八俣遠呂知の脚に傷が残ったままになっていた。


「いけるぞっ 斬撃プラス電撃で奴の再生スピードが鈍っている 」


 カイが小躍りするが、それまでコッコたちの攻撃など気にもせず前方を見ていた八俣遠呂知の8本の頭の一つが、一瞬にしてカイの分身を食い千切っていた。


「くそっ、奴のスピードも相当なものだぞ 」


「俺に任せろ スピードなら自信がある 」


 コッコは聖剣の力を解放する。


「ヴァンダーファルケ 阿修羅 」


 コッコのスピードが爆発的に加速され、6本にも見える腕が八俣遠呂知に斬撃を与えていく。それは凄まじい戦闘力だった。相手が不死身の怪物八俣遠呂知でなければ、このコッコの第二段階を解放した力には到底及ばず肉片と化していただろう。しかし、相手はその八俣遠呂知である。コッコに激しく斬り刻まれながらも進行を止めようとしない。が、それでも八俣遠呂知の進行速度は少し弱まっていた。カイも単発でありながら、スピードの落ちた八俣遠呂知に重い一撃を与えている。そして、ついに二人の攻撃の甲斐があったのか八俣遠呂知の脚が止まった。


「よし、このまま奴の注意を他に向けて砦から遠ざけるぞ 」


 カイが叫ぶがコッコからの返事がない。第二段階を解放したコッコは狂戦士(バーサーカー)状態になり、戦う事のみに特化してしまうのだ。


「おいおい、肝心な時に使えないじゃないか 」


 カイが嘆くが、コッコは一心不乱に八俣遠呂知を攻撃している。もう、いっそこのまま八俣遠呂知を倒してくれないかとカイは思ったが、コッコのスピードが目に見えて遅くなってきた。


・・・いけない、体力が限界か ・・・


 カイは、コッコに向かって飛び出していた。だが八俣遠呂知の頭の一つがコッコを一呑みにしようと高速で迫ってきていた。


・・・駄目だっ、間に合わない ・・・


 カイの目前で八俣遠呂知が巨大な口を開ける。そして、コッコが呑み込まれたと思った瞬間、八俣遠呂知の頭が見えない壁に当たったように弾かれていた。さらに続けて襲ってきた二つ目の頭も、同じ様に弾かれる。そして、いつの間にかコッコの体がカイの下に横たわっていた。カイは何が起こったのか理解できずにいたが、突然カイの背後で声がする。


「グロースリヒト 」


 そして、光球が周囲の景色を歪めながら八俣遠呂知に向かって飛んでいく。


・・・まさか、これはあの時の…… ・・・


 カイは振り向いた。そして、見た。そこにいたのはライディーンへの街道の戦闘で遭遇したヘルシャフトの5神将の一人ギルモアだった。ギルモアの放った光球は八俣遠呂知にヒットするが、ギルモアのグロースリヒトをもってしても八俣遠呂知に深いダメージを与える事が出来ない。


「ぬう、これがこの星の神獣という怪物か 」


 ギルモアは剣を抜くと上段に構えた。ギルモアの剣、ザ・エンドレスリバーは防御不能の剣である。ギルモアは剣を構え八俣遠呂知に向かって攻撃を仕掛けようとした。


「待ってギルモア いくらギルモアでも、あの怪物は一人では無理だよ そうだろう、ライト 」


 いつの間にかカイの前に二人の人影があった。


「そうだな、バレット おそらく、あの遺跡にいた”ノヅチ”よりも強力な怪物だろう メイスン、しばらく衝撃波で奴を近付けないようにしてくれ 」


「ふふん、任せろライト 」


「人間、この倒れている人間にこれを飲ませろ 体力が回復する それまで我らが奴の動きを止める この人間の戦闘力は有効な武器になる こいつの体力が回復したら一斉に攻撃だ 」


「ちょ、ちょっと待ってくれ なぜ敵の俺たちに協力するんだ? このまま俺たちが滅んだ方が楽なのでは…… 」


「協力? 違うな、一時的な共闘だ それに我らは人間を滅ぼそうとしているのではない 支配しようとしているのだ このような怪物はいらない むしろ邪魔になる 人間は労働力になるからな 労働力がいなくなっては困るだろう もっとも、支配下に入らない人間は滅ぼすがな 」


「なるほど…… そういう事か…… 了解した…… 」


 カイはとにかくこの場は、このヘルシャフトの力を借りるべきだと判断した。敵ではあるが、その力は認めている。砦を守るためにカイは、ライトの提案を受け入れ、コッコにポーションを飲ませていた。



 * * *



「ちょっとぉ、あれ見て 」


 ユーナの叫び声で、運転しているマゴット以外のイノたちが一斉にユーナが指差す方向に顔を向ける。


「なんだ、あれ 」


 イノが驚愕の声を上げる。ユーナの指差した先には森の上に動き回る8つの蛇のような頭がぐねぐね動く様が見えていた。


「八俣遠呂知 神話に登場する不死の竜のようだな 」


「不死の竜ぅっ…… 」


 教授が冷静に答えるが、ユーナもイノも、そして、マゴットも驚いて声を揃えていた。


「そんな怪物、どうやって倒すの、教授 」


「いや、もちろん倒すのは不可能だろうな だが、神のルールがあるはずだ 前に行った遺跡にいた神獣”ノヅチ”(注)を覚えておるか あの神獣も神のルールに縛られていた 神獣である以上、何らかのルールがある 」


「じゃあ、そのルールを見つければ良いのね 」


 ユーナが、それならルールさえ分かれば簡単じゃないと軽く言うが、そのルールをどこで探すのだとマゴットが突っ込んでいた。


「ちょとぉ、マゴットはネガティブに考えすぎ もっとポジティブに考えないと疲れるわよ とにかく、あんたと教授で神のルールとやらを探して 私とイノとゴンタちゃんで、アイツを止めとくから 」


 みんなを仕切ってどや顔をしているユーナを、イノは苦笑して見ていたが、マゴットは我に任せろと瞳を輝かせて張り切っていた。


・・・マゴットの奴、前から思っていたけどユーナに命令されるのが嬉しいらしいな 尻に敷かれるタイプなんだな ・・・


 イノは内心微笑ましく笑っていたが、その時ゴンタと目が合った。ゴンタの目は、お前も同じだろう、姫の尻に敷かれて喜んでいるだろうと言っていた。 





(注)四章「ノヅチという神獣」参照


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