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伝説の武具の出現

       伝説の武具の出現


 俺が再び加わった勇者一行は、ニットと一緒に森の中を進んでいた。

 コート達は素通りさせて貰うだけでいいと言ったのだが、ニットから案内をさせろと言ってきたのだ。

「やるからには、全滅させて貰わないと困るんだ。あたしも手伝うから、最後まで見届けさせろ」

 ハーフエルフ達の事情も判っているので、コートも提案を受け入れた。

 ラベンダーはというと、人間達とハーフエルフ達との関係が良くなる切っ掛けにならないかと期待していた。それは流石に期待しすぎだと思うが。

 スコットなんかは山賊とハーフエルフとの裏取引を警戒するかと思ったが、意外に信用してるみたいだった。まあ、確かに俺たちを騙すなら最初からもっと上手くやるだろうしな。

 それに、スコットにはもうニットも戦力に含めた作戦が頭の中に出来てるみたいだ。

 山賊のアジトがまさにシック山の洞窟だという重要な情報もニットから教えてもらったというのもあるのだろう。

 むしろジャネットの方が、渋々ニットの同行を認めているような態度だった。いや、この世界でのハーフエルフの立場を知らないので、ジャネットの方が普通なのかもしれない。

 ペールとクローラは、とっくにニットに懐いていた。今は、どうやって鳴子を見破ったかをペールに教えてるところだ。

「あたしらは耳がいいから、そよ風でかすかに鳴っても聞こえるんだ。あえて少し鳴りにくくした方がよかったね」

 ペールは、感心したようにうなづいた。

「ニットさんって、森の達人なんだね。それに美人だし」

 クローラの素直な褒め言葉に、ニットはまんざらでもないという表情をした。

 俺はコートに聞きたい事がいくつかあったので、道中聞いてみることにした。

 ようやく元気を取り戻したのか、今のコートは顔を隠していない。

「なあ、コート。どうして俺を助けに来たんだ?」

 最初に出た質問が、これだった。どうしてなのかは、俺にも判らなかった。

「途中から加わった俺とクローラは、別にいなくてもそんなに困らないだろう。どうして危険を冒してまで俺を助けようと思ったんだ?」

 俺に尋ねられて、コートは何の事だか判らないといった感じに首を傾げた。

「そりゃ助けるにきまってるだろう? 仲間なんだから」

 仲間と聞いて、俺は目を丸くした。こいつは、ジャネットの時といい、かなりのお人よしだ。

 ついでにもう一つ聞いてみよう。

「ニットに使った剣術、あれはいつ身につけたんだ?」

 その質問には、コートは微笑みながら首を横に振った。

「俺にも判らないんだ。剣術ってやつは本からの知識で知ってはいたが、実際に刀を振るったのはここ数日だけだし。多分、生まれ変わった時から身に付いたんだと思う」

 本といっても、どうせ時代物の漫画だろうな。やはりコートが光都の転生だと俺は思うが、どうにも判らない事ばかりだ。そもそもコート自身も判ってないようだし。

 それに、余計な気がかりがもう一つ増えている。たまに振り返ると、あいつが茂みや木陰で隠れているのだ。そう、こっちの世界の死神のノリリンだ。やっぱり諦めていなかったか。

 俺やラベンダーを警戒しているのだろうが、隠れるのに慣れていないのだろう。気を付けて見れば、動きが判る。

 あいつから聞きたい事がないわけではないが、今は無視している。クローラにも、放っておくように言ってある。


      †


 作戦会議を兼ねた昼食をとった他は特に何事もなく、山道を更に進み続けた。。

 特に目印はないが辺りの景色から察するに、俺たちは峠の近くにまで来たようだ。

 ニットが俺たちを追い越してこれ以上進まないように広げた両手を突き出して制した。

「さあ、クローラの出番だぞ」

 すでに作戦を俺たちに伝えていたスコットに促され、クローラが羽を広げた。


 それから先は、スコットの計画通りだった。

 先ずクローラが空からアジトの入り口を探り、周辺の見張りや小道の場所を俺たちに身振り手振りで教えてくれた。

 アジトの入り口周辺は隠れられる場所の少ない荒地だったが、空から誘導してもらった俺たちは楽々と見張りの隙を突くことが出来た。

 入り口近くの見張りをニットが不意打ちで次々に倒し、遠くの見張りはペールの陽動で一か所に集まった所をスコットの魔法でまとめて葬られた。

 見張りの異常を悟られる前に、俺たちはニットと合流して入り口に突入した。ノリリンの奴は、入り口にとどまるつもりのようだ。俺も、余計なことに気を回さなくていいから有り難かった。

 ペールの村では巧妙な罠を仕掛けた山賊たちも自分のアジトにはそこまで手の込んだ仕掛けはしてないようだった。ニットがたまにある罠を解体したり踏まないように教えてくれたりしたので、早歩き程度のペースでアジトの奥を目指した。後から追いつくはずのスコット達のために、小石を並べた信号まで残してるのだから大したものだ。

 元々この洞窟は別の目的で掘られた遺跡のようで、ラベンダーがおおよその広さを知っていた。

 アジトの半分程度まで進んだが侵入された事にはまだ気づかれていないようで、たまたま遭遇した山賊を何人か倒して問題なく突き進む。

 戦士として槍の腕を磨いていたジャネットと特殊な剣術を身に着けたコートは、山賊たちが声を上げる暇も与えずに刺し貫いたり切り払ったりしている。

 俺はといえば、思ったより広い洞窟とはいえ鎌を振るうのは仲間を巻き込みかねないという事で。ラベンダーの後ろで背後からの不意打ちに備えていた。実の所、ニットの目を逃れて隠れている賊がいるとは思えないが。

「この先に大広間があります。山賊のほとんどはそこにいるのでしょう」

 広間の入り口は四五人は横並びに通れる横幅だった。これなら俺も前に出て戦える。

「俺にまかせろっ!」

 ニットが罠のないことを確認した観音開きのドアを、俺は鎌を振り回して軽々と弾き飛ばした。コート達も俺に続く。

 数十人の山賊がたむろする大広間だったが、即座に武器を構えられたのはそんなにいなかった。俺達が暴れまわると、あっという間に十人足らずに数を減らした。

「奥の台座に探してた武器があります」

 大広間の奥に一段高くなっている場所をラベンダーが指した。台座には何もないように見えたが、きっと何か秘密があるのだらおう。

「さあ、行きましょう」

 ジャネットが右手だけで槍を構えたまま後退して、ラベンダーの腕を掴んだ。

「お前が行くのか?」

 コートの武器なんだから、コートが付き添うべきじゃないかと思ったが、俺は目の前の山賊に集中することにした。ジャネットが急に下がったから、ニットの前にまで山賊達が迫ったのだ。彼女も腕の立つ傭兵とはいえ、現在生き残ってる山賊も結構手強かったのだ。

「えいっ!」

 ジャネットは立ちはだかる山賊を槍で貫くと、山賊に刺さったままの槍を置いて台座の脇にある階段をラベンダーと駆け上がった。

「このっこのっ!」

 俺を囲んでいる三人に向かって鎌を振り回すと、三人揃って後ろに跳んでかわした。

「きえぃっ!」

 すかさず前方に踏み込んで、間一髪でかわしたつもりの三人を俺は返す刃でまとめて薙ぎ払った。

 コートとニットの方を振り返ると、二人がかりで親分と思われる最後の山賊を倒した所だった。表向きの任務だった山賊退治は、完了したのだ。

「おい、ジャネット!」

 持ち場を離れた件で文句を言おうと台座を見上げると、手を合わせて祈っているラベンダーの足元が黄色く輝いている事に驚いた。

「どうやら、始まったようだな」

 ようやく到着したスコットが、広間の入り口から満足げにその様子を見守っていた。その後ろにはペールとクローラも続いていた。

 事情を聞かされていないニットはもちろん、武器の事しか知らないコートも何が起きるのか知らずに凝視していた。

 台座の輝いてる床がひび割れ、何か長い棒のようなものがゆっくりと持ち上がってきた。どうやら武器は、台座の中に隠されていたようだ。

 金色の装飾のある棒が武器の一部だとすると、槍かハルバードの柄だろうか。そんな事を考えていたら、いきなりジャネットがラベンダーを突き飛ばした。

「危ないっ!」

 コートが剣を投げ捨て、台座から落ちたラベンダーに向かって走り出して抱き留めた。

「何をするんだ、ジャネットっ?」

 スコットがジャネットを睨み付けた。

「この時をずっと待ってたんだ! 私が勇者となってラベンダーより認められるんだ!」

 コートの腕の中のラベンダーが、ジャネットの本音を聞いてびっくりした顔になった。

「どうしてなんですか、ジャネット姉さん?」

 ジャネットが、ラベンダーをにらみながら武器の柄を掴んだ。

「そうか、腹違いの姉妹だと知っていたか。だがそれも、どうでもいい事。私は誰よりも修行にはげみ、魔族との戦いに備えていた。なのに、与えられた任務はいつもラベンダーの警備ばかりだ。神様の加護のお陰で勝利するってな。祭壇で拝んでるだけじじゃないか」

 ずっと本心を隠していたのだろう。俺達より付き合いの長いラベンダーやスコットまでも、ジャネットの本心を聞いてショックを受けていた。

 ジャネットは、コートを見下ろした。

「コートには助けてもらって感謝しているし、怪我をさせたのはすまないと思っている。だが、これだけは絶対に譲れないのよっ!」

 ジャネットは武器を引き抜いた。

「どんな武器でも使いこなせるように、今まで私は特訓してきたんだ。槍でなく斧やハンマーでも、問題ない」

 そう言ってジャネットが掲げた伝説の武器に、俺は驚いた。何しろそれは、俺のよく知っているものだったからだ。

「いや、それって鎌じゃねえか」

 勿論、鎌を掲げてるジャネット本人にも、すぐに判った。流石に鎌の練習はしたことがなかったのか、鎌を見上げて唖然としていた。

「ここは、鎌には鎌だな。俺に任せろ!」

 俺は、鎌を振りかざしてジャネットに向かって走り出した。ジャンプに見せかけた飛行能力で、一気に台座に跳び上がると。ジャネットの鎌に向けて振り下ろした。

「ひいい!」

 慌てて構えた鎌で、ジャネットは俺の鎌を受け止めた。あんなにバランスの悪い武器でもとっさに使おうとした、ジャネットの戦闘センスは本物だ。しかし、後が続かなかった。

「えい! えい! えいっ!」

 俺が何度も鎌で小突くと、上手く衝撃を緩和できないジャネットは攻撃を受け止める度に腕を痺れさせた。動きもキレが無くなってきていた。

「いまだっ!」

 俺は自分の鎌の刃先をジャネットの鎌の刃先に引っかけて、思い切り振り上げた。握力の無くなっていたジャネットの手から、あっけなく鎌はすっぽ抜けて床に落ちた。

「今だ!」

 既に台座に上がっていたコートとニットが、同時にジャネットに背後から飛び掛かった。

「これを使いなさい」

 スコットに渡されたロープを持って、クローラも台座に飛んで来た。

 しばらく抵抗していたジャネットだったが、既に勝負は決していた。更にペールも加わって、ジャネットはロープでグルグル巻きにされたのだった。


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