第44話 種族の立場
『鍵の譲渡が行われました。あなたは現在4本の鍵を所持しています』
鍵? どれみが鍵を?
「そのカギはふぁそらのよ。ありがとうねみるるくん。わたしの中に感じるの彼女の鼓動、彼女の記憶、彼女の想いが」
胸に手を当てて目線を落とす。どれみに愛情のようなものを感じる。恋や愛ではない何かを……。
「(。・ε・。)」
「みるる様は浮気者ですね。どれに向けられたオーラに愛情を感じますよ」
「え、ええ……わたしは……そんな……みるるくんがわたしのことを……」
「冗談ですよ。それは同族になったことによる家族の愛情みたいなものでしょう」
なんだ、ビックリした。兄妹か……そういえば両親のことすっかり忘れてたなぁ。両親は亡くなってるし引き取ってくれた継父とも一度しか会ったことないからなんだか嬉しいや。
どれみはいくら自分の中にふぁそらがいると言っても本当に良かったのだろうか。
「大丈夫ですよ、そんな顔をしなくても……どれみもわたしも最高の結末だったと思います。聖一さんへの想いは本体の方が持っていったみたいですね……、そんなことよりもわたしは兄が出来て嬉しいです」
「え……と、ふぁそら……ちゃん?」
「はい」
にこやかに笑顔を返すふぁそら。すかさずどれみが「ちょっと勝手に出てこないでよ。ややこしくなるじゃない」……「どれみ姉さん、少し性格が荒っぽくなってるわよ……」
不思議な光景にポカーン。ユングとわさびだけはにこやかだった……いや、あんこは聞こえていないせいか見つめているだけだった。
「決めたわ!」
どれみ?ふぁそら?が拳を振り上げた。一同の視線が拳に集まる……「わたし、今から『みそら』を名乗るわ。ふたりの名前をくっつけたのよ。可愛いでしょう」と宣言すると、「あら……みそらって私たちの苗字じゃない」と、被せるように「いいじゃない。ふたりがひとつになったんだし、この方が直ぐに慣れるでしょ」
みそらのプレートがうっすらと光る。
「あら、みその名前が書き変わったようね」
みそ……味噌。わさびは頭2文字で名前を呼ぶのが友好の証、みそか……良いのか悪いのか。ニコニコしているみそらを見るとそれ以上は何も言えなかった。
魔人の村は平和だった。田畑を耕し家畜を飼い必要な分の食料を収穫し必要な分だけを消費する。
「みるる様、妾たちダイモーン族は今でこそひとつの種族ですが、本来はそれぞれが別の種族なのです」
原住民と言われていた魔人、実は先住民と呼ばれる存在であり日本で空想上の生き物とされてきた妖怪や悪魔といった負のイメージを持つ存在がこの世界に飛ばされてきたようだ。
「幻族もそうなのですよ、ダイモーン族と逆に善のイメージを持つ存在がこの世界に飛ばされてきたのです」
難しい説明だった。ダイモーン族と幻族は総称でありいくつもの種族に細分化される。わさびは幻族に含まれるユニコーン族、ユングはダイモーン族に含まれる鬼族でアトラク=ナクアはアラクネ族といった具合である。
「人形が、人族、獣族、亜人、半亜人に分かれている感じかな?」
「みるる様、それは少し違います。その分け方は、わたくしたちに当てはめるとユニコーン族を更に細分化しているようなものなのです」
「妾たちダイモーン族……幻族もそうだ、なんでわざわざ大きなくくりを作ったかというと人形のせいが大きい」
ダイモーン族や幻族がこの世界に飛ばされるようになり、種族間で手を取り合って平和に暮らしていた。この時はまだ、ユニコーンやペガサス、鬼などの名称を種族名としてつけていた。
やがて人形がこの世界に来るようになると、同種族の中で徒党を組んで世界を勝手に区切り、領地の奪い合いをするようになっていった。
幻族は元々この地上ではなく、人が辿り着けない土地に居を構えていたので影響は少なかったが、ダイモーン族は違った。
領地を追われ、住むところを減らし絶滅寸前まで追い込まれたが、鬼族が指揮をとって『ダイモーン族』と名付けて各種族間の仲間意識を持たせた。種族の証として『W』を刻印する魔法を施して抵抗を始めた。
「幻族はダイモーン族に協力するために同様に総称を付けたのです」
そんな戦いが何年も続き、今のような世界に移り変わった結果、人族は魔人に唯一抵抗できる武器である『数』を減らし、ダイモーン族は人族を嫌うようになった。
幻族はダイモーン族とだけ交流を持ち、人族が来れない場所から滅多に出なくなったとのことだった。
「それだけではないのですよ、みるる様」
「わさび殿、拙者から離すでござる」
「あんこ……」
「拙者たち座敷童子の先祖はダイモーン族に加わらなかったのでござる。元々、人の姿に近い種族でござったのでどちらにも加担しなかったのでござるな。しかし……」
あんこの話しは、デイモーン族・幻族と人族の戦いが終わったあとのことであった。
魔人を『数』の力で退けた人族は、戦いの矛先を身内に向けるようになっていった……。
「その矛先が半亜人なのでござる」
当時の王たちが結託して忌み嫌うモノに仕立て上げた。共通の敵を作れば人族の間で仲間意識が強くなり協力体制が作りやすい。その力で様々な強力な『武器』を作り出して魔人を滅ぼそうと考えた。
「昔の話でござるからな、今は風化しているので半亜人を忌み嫌っているのは、新しいことを嫌う古い国か、当時の人心掌握を続けているタマサイ位でござるがな」
何が正しくて何が正しくないのか分からない。体中の力が抜ける。
「今まで生きていたこと、僕がやってきたことは正しいと信じてきたのに」
「ふふふ、みるる様。わたくしはそれでよいと思いますよ。ダイモーン族だって幻族だって人族だってそう、みんな自分たちが正しいと思って生きているのです。これからは一方の話しを鵜呑みにせず、自分なりの正しさを見つけていけばいいのではないでしょうか」
「|o(´^`)o ウーン…《良く分からない表情》……|ヾ(๑❛ ▿ ◠๑ )《そうだ》……|( ^o^)/*∞C<( -_-)《笑顔で袖をひっぱる》……σ(o^_^o)」
「ありがとう、わたしたち仲間がいるじゃないって言ってくれるんだね」
「|(゜ω゜)(。_。)ウンウン《大きく頷く》」
「みるる殿、良くひなつ殿の言いたいことが分かったでござるな」
わさびがあんこの腕を掴んでひなつと僕に抱き着いた。
「そうですわ、わたくしたちがみるる様についているのです。一緒にわたくしたちにとって良いことを探していきましょう」
『鍵の譲渡が行われました。あなたは5本の鍵を集めました』
どこからともなく瑠璃色の靄が集まってくる。
『そういうわけにもいかないのよー。やっと鍵も集め終わったからね』
靄から放たれた一本の光、気づいた時には僕の心臓が貫かれていた。




