第41話 ダイモーン族の村
「みるる様、良いセンスですね」
「この姿じゃ似合わないでござるな。それなら、百花繚乱でござる」
大人の姿になったあんこには赤、わさびに緑の指輪を渡した。
しゅるるるとしぼんでいつもの姿に戻るあんこ、体に合わせて指輪も収縮する。えっと……これって普段に指輪を受け取っても変わらなかったんじゃ。なんてことが頭に過ったが胸の中に収めておくことにした。
「それではみるる様参りましょう」
わさびの角から光が放出されると前方に光の扉が形作られていく。紛れもなくアーチ状の扉、ギィーという音を響かせながら開かれた。
「わさびこれは?」
「昨日つないでおきました。場所はハージュク迷宮地下25階、ダイモーンの村です」
「わさび殿は凄いでござるな」
「今回はどれには秘密で村へ向かおうと思いましたが、みるる様が仲間と認めているようなので一緒に連れていくことにしました」
あんこの視線がどれみの左手薬指に向けられる。
「付けたままという事はどれみ殿も指輪を気に入っているでござるな」
「ち、違うわよ。妹を……い、いやふぁそらを助けたい一心で……」
「(*゜ー゜)ニヤニヤ」
「と、とりあえず話しは後にして扉に入ろう」
扉の先には青く抜けるような空、微かに香る緑の香りが心地よい。
(あれ? 地下25階って言ってたよな)
草原が砂丘のようにゆるやかに起伏しながら続いている。その先には連なる山や深い森林が迷宮内であることを忘れさせるほどに存在感を醸し出している。
その中にぽつぽつと集まっている建物。 ……集落か?
「あそこがダイモーン族の村です」
遠くに見える草原が吹き抜ける風によってウェーブのように揺れる。村の入り口には何人かが集まっていた。
村人と対峙する鎧を纏った集団。
「あら、あのオーラはダイモーン族長のひとり、アトラク=ナクアじゃないですか」
腰にシミターを2本差した女性が先頭に立っている。鎧を纏った集団は花道を作ってひとりの男を送り出した。
「剣聖……先輩」
凛とした美しい鎧、流線形の湾曲が美しい。自信に満ちた表情と出で立ち。とても剣道部で見てきた先輩とは思えないほど大人びている。
「わさびさん、ここは地下25階って言ってましたよね。今まで人がこんな最深部に辿り着いたなんて話を聞いたことがないわ……凄いわ剣聖先輩」
「スカイブにとって剣聖先輩は英雄的存在なんだね」
「そうよ、私たちがこの世界に飛ばされて、ふぁそらや聖一君の問題を抱えていた時にひとりでどんどん出世していったわ。人形で彼に勝てる者はいないんじゃないかしら」
「ほら、動きがありましたよ」
アトラク=ナクアの前に剣聖が立つと「俺たちには戦う意思はない。ここに聖一とふぁそらという人族が匿われていないか改めさせてもらいたい」と訴えた。
ニヤリとするアトラク=ナクア、「私はダイモーン族のアトラク=ナクア、スカイブのお坊ちゃんだか騎士だか知らないけど、いてもいなくてもお前たちに教えてやる義理はないよ。今なら無事に返してやるからとっとと失せな」と大声をあげる。
「人族だからって甘く見てもらっては困る。私たちはスカイブの精鋭部隊。戦うというならば魔人だろうと容赦はしないぞ」
「それじゃあ試してみるかい。蜘蛛使いのアトラク=ナクアが相手になってやるよ」
「アトラク=ナクアよ、ひとりも殺してはいけません」
後ろにいるのは……ダイモーン族の王女ユング、魔人と戦った時にわさびと一緒に座っていた女性である。
「みるる様、わたくしはユングと仲良しなの。昨日、今日のことを頼んでおいたのよ」
「え、あれが魔人の王女様……、みるるくんはそんな人とも知り合いだったの?」
「い、いや……見ただけで話したことはないよ」
「みるる様はユングに見初められておったではないですか」
「お主たち、始まるでござるよ」
「人形ども、まとめてかかってきな」
剣聖を中心に陣形をとる「負ける要素はない、正々堂々となんて考えるな。言うなれば人と魔人の戦争である。戦争は勝った者が正義、陣を組め」兵士たちは掛け声とともにV字型の陣形をとった。
「いいね、いいねぇ。そうこなくっちゃ。少しは楽しませてくれよな」とアトラク=ナクア、続けて「先ずは小手調べよ」と2本の三日月刀を抜いて高くに挙げた。
兵士たちは攻撃を警戒して身構える。アトラク=ナクアのシミターは周りの風を巻き込みながら回転を始め上空に2本の竜巻を作った。
「何か来る!」思わず口をつく。竜巻の挙動が変わった。「みるる様、流石ですね、わたしの見通す力よりも先に異変に気付くなんて」
竜巻から生み出されたのはかまいたち、真っ白な三日月形の刃が兵士に向かって不規則に飛んでいく。兵士たちは反応も出来ないまま脇や肩、腿を切り裂かれていく。
流れ出る血液、身に着けている鎧までもが切り裂かれていた。
「みんな、いったん下がれ。ここは俺が食い止める」
辛うじて剣ではじき返す剣聖。他の兵士たちは出血を抑えながらなんとか後方へと下がっていく。剣聖はあまりも多くの刃に徐々に押され始めた。
「一粒倍加!」、剣聖の言葉が空に響く。ここからでも分かる、明らかに剣聖の力が大きくなった。
「これが……剣聖くんのスキル。ふぁそらの彼が手も足も出なかったと言う……」
高らかに笑い声をあげる剣聖。剣を片手に持ち、竜巻から生み出されるかまいたちを軽々とはじき返していく。
「ハハハ、やるねぇ。人族にもこんなやつがいたなんてな」
「ふん、今度はこっちの番だ」
剣聖は姿勢を低くして一気にアトラク=ナクアに間合いを詰めた。剣先が地面すれすれに弧を描く――
カッキーン! 大きな金属音が辺りに響き渡った。受け止めていたのはアトラク=ナクアの爪……腕が蜘蛛の脚へと変化している。
次の瞬間!
脇腹からもう一本の蜘蛛の脚、そのまま脚先の爪が鈍い音をたてて剣聖の鎧を貫いた。鎧の隙間からトロトロと血が滴り出した。
膝をついて崩れ落ちる剣聖。そのまま力なくうつぶせに倒れた。わき腹から漏れる真っ赤な血液が地面に広がる。そんな剣聖にアトラク=ナクアがシミターを携えゆっくりと近づいていく。
苦痛に歪む表情と苦しむ声が剣聖の敗北を明示していた。
「アトラク=ナクア、止めなさい。殺すなと命じたはずですよ」
「ユング様、こんな弱っちい相手じゃ不完全燃焼ですよ。もっと強いやつを相手にさせて下さいよ~」
「分かりました。それではあの人族の傷を癒して迷宮の入り口に運んであげなさい」
数名の魔人がスカイブ兵たちを取り囲み魔法をかける。「睡眠の魔法ですね」とわさび、剣聖たちをユングが生み出したミリオンを通じて消えていった。
「みるる様、お呼びですよ」
指差す方向にはユングがこちらを見つめ手招きをしていた。
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《登場人物紹介》
・三流 LV35(??):衝撃波(絶対パリィ)
所持金:金2,260:銅1
・日向夏LV35(38):猫耳髪作成(言霊詠唱)
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子 LV35(32):武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・山葵 LV35(25):精密射撃
ユニコーン族王女、オッドアイだが目が見えない。
※カッコ内は本来の値
IN スカイブ首都
・美空どれみ 中学生の頃好きだった女性
・美空ふぁそら どれみと双子、聖一の彼女
・緋村聖一 ふぁそらの彼氏
・緋村剣聖 スカイプ1の剣豪となる。




