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第4話 勇者の役割

 下郎の村、領地であるタマサイで身分を剥奪されたり逃げ出したりした者が集まる村であり、年に1度の武道大会で優勝者がアルファとなって村長を務める。その村長の座を何年も守り抜いている男が目の前にいる『ウルフリッド』ということらしい。


 そのアルファによって勇者様と呼ばれていた。


「それでは勇者様のステータスを見せてもらいたいので、首のプレートをお貸し下さい」


 手を伸ばすウルフリッド、差し出そうと首に手をかけた瞬間に頭の中で声が響いた。


『だめよ。プレートを渡したらだめだからね』


 シンオウ……他者のプレートを奪えば死より厳しいペナルティを負うという。……ということは、奪わなければペナルティーはないということか。


 チェーンを掴んだ指をプレートまで滑らせて手の平に乗せる。誤魔化すように「プレートは渡さないよう聞いていますので」と答える。


 手の平に乗せたプレートから拡張現実(AR)のように光の文字が浮かび上がった。


   ランク:3流 ギルド:無所属

   レベル:1  スキル:絶対パリィ

   

  ──スキル『絶対パリィ』、タイミングが非常にシビアだがうまく捌けばどんな攻撃でもパリィすることができる──


 不思議な文字に気分が高揚する。が、ウルフリッドは大きく笑い出した。


「やっぱりお前はここに来たばかりか。人にステータスを晒すなんて自殺行為だぞ」

「どういうことだ」

「まあいい、冥途(メイド)の土産に教えてやる。この世界は全員がプレートを与えられ世界に管理されているんだ」


 胸からプレートを取り出すウルフレット。胸元がキラリと輝く。


「色が。違う」


 首にかかるプレートは銅色(ブロンズ)、彼のプレートは銀色(シルバー)


「そうだ、この世界での活躍度だと思ってもらえればいい。身分とは別だから街じゃぁ関係ないけどな。でも、俺たちのような下郎にとっちゃぁプレートさえ奪わなきゃぁやりたい放題出来るってもんだ」


「え、じゃあ僕は何のために、勇者と言ってたのはなんだったんだ!」

「ああ、それはな、お前にはこの村を救う勇者様になってもらう訳だよ。おい、ベータ。こいつを例の場所に連れていけ」


 奥の扉から出てきたのは、(ほうき)のようなグレーの髪型をした武骨な男。腕を掴まれると屋敷を連れ出された。

 


 無言で手を引かれ歩みを進める箒頭(ほうき)の男。


 程なくして「ハイエルンだ」と一言。小さく「周りに笑顔を振りまいておけ」とだけ命令される。良く分からないステータス表示で『LV1』と出た現実が何を相手にしても勝てないという恐怖となっていた。


 溺れかけた池と反対側、西方向へ引かれるまま付いていく。優しい土の香り、農作物を抜けた心地よい薫風が鼻を抜ける。


 揺れる葉に合わせるように村人が手を振って笑顔を向けてくれる。聞こえる言葉は応援。ウルフリッドが言っていた勇者と関係があるのだろうか。


「ハイエルン、いったい僕はどこに連れていかれてるんだ。それに村人たちの笑顔は……」


「いいか、これからお前はウルフリッドが呼び寄せた勇者としてオロチ洞に入ってオロチ討伐に行ってもらう。まぁオロチなんていないしウルフリッドの人気取りだな。そうすれば税を高くしても反乱は起きないしプレートを奪って鍵が集められるって訳だ」


「僕はプレートを渡さなかったけど」


「ああ、どちらにしてもオロチ洞のオロチを倒す勇者として連れて行くんだよ。プレートを渡さなかったやつは死んだ後に俺がプレートを回収するってわけだ」


「なんで僕にそんなことを教えてくれるんだ」


「この村を変えたいってのが本音だ。俺じゃあウルフリッド(アルファ)に勝てないからな。本当のことを伝えておけば、もしオロチ洞から生きて出られたら味方になってくれるかもしれないだろ」


 勇者……どうやら、ウルフリッドの人気をとるためだけに勇者として(まつ)り上げられたピエロのようだ。


「生きて……出られるのか?」

「どうかな。俺は見たことはないが、ひとりだけプレート回収のとき見当たらなかった者がいるという話しを聞いたことがある」


 その後は黙って前を歩くハイエルン。足に触れる葉がくすぐったい。枝を避け腕に切り傷を作りながら道なき道を進んでいく。


 多くの木、鬱蒼と茂る植物が方向感覚を狂わせる。お構いなしに先を急ぐハイエルンを必死で追う。こんなところで迷子いなったら生きて脱出できる自信がない。


 

 しばらく歩くと小さく開かれた場所に出た。学校に良くありそうな小高い山サイズ、山肌は岩で覆われ中央にはふたりが並んで入れる位の穴が口を開けている。


 穴の先は真っ暗。全く奥が見えない。恐る恐る覗き込むがゴーゴーと魔物の泣き声のような強い風の音が響いてくるだけ。


「最後に教えておいてやる。お前のプレートはこの地に来た時に水没して壊れたようだな。体のエネルギーを感知する機能が()()()()いるようだ。まあ、メモリ機能は生きているようだがら支障はないだろう。さっきウルフリッド(アルファ)の所で出たステータスしか出ないからやたらにステータスは表示するなよ」


「そんなことが分かるのか」

「まあな、もし次に会うことがあったら修理してやるよ。それに壊れていることとステータスが低いことを人に言うなよ。面倒なことになるからな」


「どうい──うぅぅぅ」


 ハイエルンに背中を押されてオロチ洞へ……。横に伸びる洞窟ではなく下! 重力に引かれるまま落ちていった。

 お読みいただきましてありがとうございます。投稿は週に2回(校正が間に合えば3回)の曜日は月水金を予定しています。またファンタジー小説に挑戦する中で至らぬ部分も多々あるかと思いますが、よろしくお願いします。


《登場人物紹介》

  速水はやみ 三流みるる 三流 ─ LV.1 絶対パリィ

   勇者かもしれない。

・下郎の村の住人

  ウルフリッド 二流 - LV.? ※下郎の(ウルフ)のアルファ(NO.1)

   村を統括する。勇者を使って村人から搾取している。

  ハイエルン 三流 - LV.? ※下郎の(ウルフ)のベータ(NO.2)

    アルファをとりたい。技師能力があるらしい。

・不明

  透明感のある瑠璃色の髪をした女の子


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