第38話 首都スカイブ
「みんな、これ持っててもらっていいかな」
黙々と作っておいた木の実、そしてお金。
木の実には『癒付与』スキルを使い、お金は必要な時に使えるように金貨を10枚。なんとかこの金額で折り合いをつけた。
スカイブ首都への入国は大変になるかと覚悟していたが、アーチ状の扉を潜るだけで通ることができた。
年に1度の闘技大会の開催を控え、商人や出場者、観戦者などを広く受け入れているようである。
「あの集団はなんだろう……」
ミリオンを抜けた先にある小さな広間、衛視に囲まれている数人の人形たちが集められている。表情から困っているのが分かる。
「みるる様、あの兵士たちはスキルランクA以上の者にスカイブ民になるよう勧誘をしているようですね」
「そういえば、防衛都市の入り口でも同じことを衛視が言ってたな」
「スカイブは軍事国家ですからね。高スキルランク持ちはノドから手が出るほど欲しいのでしょう」
「確かにスキルって凄いね」
わさびと対峙してスキルの重要性が身に染みていたからこそ出た言葉だろう。
闘技大会を控えているとはいえ人の出入りがあまりにも多い、とてもスカイブ民だけとは思えないほど密度が濃い。
「みるる殿、人の出入りが多いのは様々な国から集まってきているのでござる」
「そうなの? 国境は通れなかったし国家間の移動は大変って聞いたけど」
「それはですね、国家間での盟約が働いているのです」
「盟約?」
「(o゜-゜o)?」
「そうです。スカイブは闘技大会、バチはオークション、タマサイは工業展。その期間中の入国は緩くなります。ただ出国は厳しくなる上に罪を犯すと格段に重い罰が与えられます」
「じゃあ、ちょうどスカイブの闘技大会期間に入ったんだ……ん? てことは、バチでオークションが開催されるときに行けば簡単に入国できるってことだよね」
「p(*^-^*)q」
「みるる様の言う通りです。ただオークションは半年後、それまでマタシバであまーい生活をして待っているのもいいですね」
「うーん、最悪その方法でもいいけど……今は出来ることをやっていこう。そうすれば世界のことを知ることができるからね」
「みるる様……最悪って」
悲しい顔をするわさび、言葉の綾ということを伝えて謝り倒した。
「みるる殿、バチに入って半亜人の町に行くでござるよな」
「うん、アンソレイトで村長候補のスカウトを頼まれたからね」
「変ではござらぬか?」
「(o゜-゜o)?」
「へん?」
「考えても見るでござる。拙者たちで半亜人の町に住む住民との交渉が出来るとも思えないでござる。人族や獣族とは敵対関係にあるでござるからな」
うーん、確かに言われてみればそうかもしれない。でもトカラ村長と約束したし行ってみるしかないだろう。
「みるる様、もしかしてわたくしたちは記憶の干渉を受けたかもしれません」
「(o゜-゜o)?」
「記憶の干渉?」
「ええ、スカイブに来る前にみるる様の希望で新婚生活の予行練習をしたじゃないですか」
「(///△///)」
「い、いや新婚って、練習って……ひなつもそこで赤くならないの! 何もやましいことはしてないでしょうが」
「冗談はさておき、もしかしたらわたくしたちの他にアンソレイトの住民がいたのかもしれません。不確かですが、あそこで記憶の乱れみたいなものを感じました」
「そっか……。あったかもしれないしなかったかもしれない。それしか言えないってことだね」
「そうです」
利幸の言葉が思い返される……『この世界に飛ばされてきたという事は、逆もあるんじゃないかって』
「みるる殿、前、前でござる」
目の前に迫る壁、おもいっきり手綱を一気に引くと馬は鳴き声と共に前足を大きく上げて制止した。
「キャッ」
突然聞こえた小さな悲鳴。どうやら馬の泣き声で驚かせてしまったようだ。
馬車を飛び降り彼女に頭を下げた。
「ごめんなさい。ついボーとしちゃって……、驚かせてしまったみたいで──」
見知った女性だった。
「みるるくん? みるるくんでしょ」
ポニーテールの髪が上下に揺れる。なんと彼女は僕が中学校時代から密かに想いを寄せていた『美空どれみ』だった。
一気に頭の中が陰キャ時代に逆戻り。顔が熱くなって言葉が出てこない。
「みるる殿、どうしたでござるか」とあんこが荷車から顔を出す。その上に「<●><●>」とひなつ、更にわさびが見透かすような目でこちらを見ていた。
「あら、みるるくんは仲間と旅をしているのね。まさか彼女たちの御者してたりして」
うふふと笑うどれみ。その可愛い笑顔に顔が更に熱くなってしまう。
「みるる様はわたくしたちの主人ですよ。みんな彼のおかげで救われている者たちですから」
「わさび殿は違うでござろう……勝手についてきているだけではござらぬか」
「p(*^-^*)q」
「あん、良いんですよ隠さなくても。本当はわたくしがいて嬉しいのでしょ」
あっちはあっちで盛り上がりを見せている。「ごめんね、騒がしくて」とどれみに目線を移すと、ひなつたちの方を指さしてワナワナと震えている。
「つ、角があの人に……」
角ってひなつのことかわさびのことか……。交互に見比べる、どれみの視線はわさびの額に向けられていた。
「どれみさん、あの……」僕の言葉を遮り、「みるるくん、今すぐ家に来て。そこの緑の人は早く隠れて」とどれみ。
「わたくしに隠れろと……」わさびの言葉は、飛び乗ったどれみによって打ち消され、ぎゅうぎゅう押し込まれて荷台の中へと消えていった。
「この道を北に向かって」――彼女の家は貴族区画の1つにあった。
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《登場人物紹介》
・三流 LV15:衝撃波
所持金:金2,362:銀1大銅1銅1
・日向夏LV18:猫耳髪作成
猫耳ヘアーの女の子。喋れない。
・餡子 LV32:武器長短
巫女のような服を着た女の子。聞こえない。
・山葵 LV25:精密射撃
ユニコーン族王女、オッドアイだが目が見えない。
IN スカイブ首都
・美空どれみ 中学生の頃好きだった女性




